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シークレット・ペイン ―夜去医療刑務所・南病舎― の商品レビュー

3.8

19件のお客様レビュー

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2021/03/09

前作に続き、あまり知ることの無い仕事をベースにした重い作品。特に前半は読むペースもあがらなかったけど、最後まで読んでよかった。

Posted byブクログ

2020/11/28

罪人に医療を提供することは是が非か。 その葛藤の狭間で揺れ続けながらも、医師という職業柄、受刑者に対しても治療を続ける主人公。彼が抱え続ける過去の傷が、受刑者である患者との関わり合いの中で鮮明になる過程、そしてその想いが少しずつ変化していく様子が読んでいてじっくりと心に沁み渡って...

罪人に医療を提供することは是が非か。 その葛藤の狭間で揺れ続けながらも、医師という職業柄、受刑者に対しても治療を続ける主人公。彼が抱え続ける過去の傷が、受刑者である患者との関わり合いの中で鮮明になる過程、そしてその想いが少しずつ変化していく様子が読んでいてじっくりと心に沁み渡ってくる。 罪を犯し、他人を傷つけた者は、本当に医療を受ける価値のない、死すべき存在なのだろうか。被害者側の立場に寄り添えば言語道断だろうが、その間違いを犯した人間が更生する場を与えないことは、あまりに非情ではないだろうか。 どちらの考え方も誤ってはいないと思うし、だからこそ答えは見えてこない。それでも今、目の前に苦しむ患者がいれば手を差し伸べざるを得ない。きっと永遠に囚われ続けるこの葛藤に、真正面から向き合い、自分の答えを見つけ出す主人公の姿に胸を打たれる。

Posted byブクログ

2020/09/14

正直、前半は読み進めるのに時間がかかりました。 工藤の顕にする真っ直ぐすぎる嫌悪感のような感情がしんどいなぁっていう印象で。 でもそれぞれの先生が抱える背景や、そこからうまれている診療スタイル、また、工藤自身の抱える過去、そういうものが見えてきてからは、気づけば止まらなくなって...

正直、前半は読み進めるのに時間がかかりました。 工藤の顕にする真っ直ぐすぎる嫌悪感のような感情がしんどいなぁっていう印象で。 でもそれぞれの先生が抱える背景や、そこからうまれている診療スタイル、また、工藤自身の抱える過去、そういうものが見えてきてからは、気づけば止まらなくなってしまい、一気に読み終えていました。 医療刑務所という、極限の選択をしてきた人たちだからこそ、見えにくいけれど、根本に抱えるものを見つけてあげる、それぞれの従事者のそれぞれの経験からの考え方や視点が散りばめられていて、とてもおもしろかったです。

Posted byブクログ

2019/12/17

医局人事で仕方なく半年の期限を切って医療刑務所に登庁することになった精神科医・工藤守。そこには、税金で医療を施される受刑者たちの姿があった。 自らの過去のトラウマから、受刑者たちに複雑な思いを抱く彼は診療する受刑者に必ず聞くことば「今、被害者に対して何を思いますか」。 彼らの答え...

医局人事で仕方なく半年の期限を切って医療刑務所に登庁することになった精神科医・工藤守。そこには、税金で医療を施される受刑者たちの姿があった。 自らの過去のトラウマから、受刑者たちに複雑な思いを抱く彼は診療する受刑者に必ず聞くことば「今、被害者に対して何を思いますか」。 彼らの答えに絶望する工藤は、塀のそとでも貧困で満足な医療が受けられない人たちがいるなかで、受刑者に税金で医療を施すことへの疑問を隠さない。 彼らをあくまで「受刑者」として扱おうとする工藤と、「患者」として扱おうとする同僚医師たちとの違い。 そんななか、少年時代を共に過ごした男が移送され、20年ぶりに鉄格子越しの再開を果たす。最初は彼を避けていた工藤だが、いつしか彼を気に掛けるようになり、彼とのやり取りを通じて自らのトラウマと正面から向き合うこことになる。 刑務官・西川、同僚精神科医・神崎、内科医・愛内、それぞれの事情を抱えたものたちとの関わり、そして受刑者たちとのやり取りのなかで工藤が最後に至った境地とは・・・ 受刑者への医療についての感情は、正直私も工藤と同じだった。矯正医官の不足、ただで医療を受けたいために罪を犯して塀のなかに入ってくる受刑者、犯した罪への反省もなくのうのうと医療を施される受刑者・・・矯正医療の抱えるさまざまな問題が浮き彫りにされるなか、それでも揺るがない理念。「矯正」の観点から施される医療の目的。 自分自身と深く向き合い、被害者の痛みに思いを馳せる時間が、病で塗りつぶされないようにするために、受刑者は健康でなければならないということ。 最後はちょっとウルっと来て、色んな意味で考えさせられる作品でした。

Posted byブクログ

2019/11/14

医療刑務所に勤務することになった精神科医を中心に物語がすすむ。犯罪者でありながら、無料で受けられる医療。もちろんそこには贖罪の意識が低いものもいる。それでもきちんとした医療を施さなければならない葛藤。 登場人物たちの人生が伏線となって様々な想いが絡んでゆく。 考えさせられる作品。

Posted byブクログ

2019/11/05

看護師なんですね、とても詳しく書いてあるので、ドクターかと思った。 医療刑務所、税金で医療を受けられる、年間いくらかかるのか。 受刑者に医療が必要なのか。 ここで働く人は、日々これに葛藤するのだろう。 難病持ちで医療費が負担な私にとっては、考えさせられるテーマだった。

Posted byブクログ

2019/10/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

シークレット・ペイン夜去医療刑務所・南病舎 著作者:前川ほまれ 登場人物達の物語りに興味を引かれながら、受刑者に医療が必要かというテーマを考えられさせる本である。 タイムライン https://booklog.jp/timeline/users/collabo39698

Posted byブクログ

2019/10/09

医療刑務所というのは知らなかった。そこでは罪を犯していても無料で医療が受けられるのだ。そこにやってきた新人精神科医の視点で、入院する精神を病んだ患者、背景のある病気の囚人たち、彼自身の過去などが複雑に絡み合い、色んなことを考えさせられる作品となっている。贖罪の意識を求める工藤医師...

医療刑務所というのは知らなかった。そこでは罪を犯していても無料で医療が受けられるのだ。そこにやってきた新人精神科医の視点で、入院する精神を病んだ患者、背景のある病気の囚人たち、彼自身の過去などが複雑に絡み合い、色んなことを考えさせられる作品となっている。贖罪の意識を求める工藤医師は、そういう意識の希薄な囚人たちに落胆するが、かつての友人が入所しており、その男と深く関わっていくうちに、彼もまた成長していくという話しだった。

Posted byブクログ

2019/10/07

「サスペンスドラマや映画じゃ、犯人が逮捕されて終わりだ。それから彼らがどんな風に生きていくかなんて描かれていない。」ましてや、病気になった受刑者がどのような処遇を受けるかなんて情報が入ってくることもない。 主人公、精神科医の工藤守は医局人事により半年間の期限付で夜来医療刑務所に派...

「サスペンスドラマや映画じゃ、犯人が逮捕されて終わりだ。それから彼らがどんな風に生きていくかなんて描かれていない。」ましてや、病気になった受刑者がどのような処遇を受けるかなんて情報が入ってくることもない。 主人公、精神科医の工藤守は医局人事により半年間の期限付で夜来医療刑務所に派遣される。そこで、幼なじみの滝沢真也と再会する事で物語は回り始める。滝沢は殺人罪で服役していたが自殺企図を繰り返し医療刑務所に収監されていた。 物語の興味は、医療刑務所に収監されている受刑者のプロフィールや医療刑務所が抱えるジレンマ。多大な公費=税金を使って受刑者に医療を提供する事の是非であるが、そんなテーマを背景にしつつ、工藤自身や滝沢、先輩医師の神崎、内科医で医療刑務所内にて緩和ケアを試みる愛内、処遇部の西川刑務官、登場人物達の過去が物語られていく。 登場人物達の物語りに興味を引かれながら、受刑者に医療が必要かというテーマを考えられさせる本である。本書の中では、受刑者の治療にかかる費用がひとり四百万円だとしている。手術などするとさらに経費は跳ね上がる。医療費の高額化、高齢者問題等の社会問題は塀の内側でも同じである。 「自分自身の身体の苦痛が酷ければ、本当の意味で被害者の痛みを考える余裕なんてないはずだ。だから・・・受刑者は健康じゃなければいけない。犯した罪のために、傷つけた被害者のために、そして長い時間を掛けてでも自分自身の人権を回復するために」と主人公は結論づけるが、自分もそのような結論になるのか、本書を読みつつ考えさせられるのである。

Posted byブクログ