迷走する両立支援 の商品レビュー
「結婚して、子どもを持って、仕事を続ける」男の人たちが当たり前に手にしていることが、どうして女性はこんなにも大変なんだろう、というのは、実は社会人になって割とすぐから漠然と抱えていた疑問で、実際出産してワーキングマザーとなってからは身にしみて感じている難題だったりするのだけれど、...
「結婚して、子どもを持って、仕事を続ける」男の人たちが当たり前に手にしていることが、どうして女性はこんなにも大変なんだろう、というのは、実は社会人になって割とすぐから漠然と抱えていた疑問で、実際出産してワーキングマザーとなってからは身にしみて感じている難題だったりするのだけれど、この問題に真っ向から切りかかっている一冊。 普段、本にラインを引くのが嫌いで、あまりしないのですが、この本だけはたくさんたくさんチェックしたい文章があって、かなりピンクのラインがひかれる結果となりました。 子育てと仕事を両立しようとして、迷い続ける女性たちへの取材から、その状況を描いていくわけですが、もうそれぞれのエピソードが涙なしでは読めません。感動系小説ではないのに、何度電車で涙ぐんだことか。 彼女たちの抱える悔しさや諦めが、それはもう自分の実感もともないつつ、分かりすぎる。 アメリカの事情や状況も詳しく取材していて、一見日本よりよさそうにも見えるアメリカの保育事情が、決して万能ではなく、「それはちょっとどうなのよ…」と思うような根本的かつ大きな問題を抱えていることも丁寧に書かれています。企業による保育サービスが発展するのはいいけど、「明日で解雇だから子どもも保育園やめてね」って、やっぱりどうかと思うよね。 この本が書かれたのが2006年。「この本が十年後、「昔はたいへんだったんだね」とふりかえられるような時代が来ることを心から願う」と締められているにも関わらず、2015年のいまでも両立支援は迷走を続けているように見えます。 制度が整った分、次の手が本当に見えなくなって、全員で立ち往生しているようにも見えたりします。 個人的にはおそらく次は、男性たちの意識改革、社会全体の長時間労働撤廃あたりじゃないかと思うのだけれど、これは…なんというか…道が険しそうだよねとしか思えないわけで。 とはいえ、子どもたちに、もう少しでも前進して働きやすい世の中を託すためにも、ここが踏ん張りどころなんでしょう。この本に出てきた女性たちが、10年前に頑張ってくれたおかげで、きっと今の私たちがある。彼女たちの悔しさを、ある種のエールだと思って、私もまた頑張れたらいいなと思うのでした。
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