トウガラシ大全 の商品レビュー
"トウガラシは媚薬であり、兵器であり、エンターテイメントでもある。 -------- 私の戦闘力は、530000です。というのは、かの有名なフリーザ様のお言葉だ。 なんでそんなことを書くかって? トウガラシの世界にも、戦闘力とそのインフレが訪れているからだよ。 トウ...
"トウガラシは媚薬であり、兵器であり、エンターテイメントでもある。 -------- 私の戦闘力は、530000です。というのは、かの有名なフリーザ様のお言葉だ。 なんでそんなことを書くかって? トウガラシの世界にも、戦闘力とそのインフレが訪れているからだよ。 トウガラシの戦闘力は、スコビル値(SHU)というヤツで比べるそうだ。スコビル値はスカウターでは測れない。 三人以上の被験者が、トウガラシから抽出されたカプサイシノイドを砂糖水で薄め、辛さを感じなくなるまで希釈を繰り返すという、ええと、あれ? 激辛マニアとおこちゃまが被験者だったらバラつくよね。何回もテストしてたら慣れちゃうし。 というわけで正確さには問題があるのに、このテストはずっと使われてきた。今は液体クロマトグラフィーで、より正確な評価がくだせるようになった、とされているが、しかし本書に書かれているトウガラシ名鑑に記載されているのは、スコビル値の方だ。 タバスコペパーソースのスコビル値は5000ぐらいだそうだ。いちばん有名であろうトウガラシ・ハラペーニョが2000~10000。獅子唐はたまに辛いやつがいるけど、たいていは辛くないので100~1000。鷹の爪が20000~30000。ちなみにソースになる前のタバスコは、30000~50000。 そして、いま一番辛いであろう「キャロライナ・リーパー」のスコビル値は156万9300。 まさに辛さのインフレ、ドラゴンボール状態である。キャロライナ・リーパーのそれは平均値であり、中には220万というやつもあったそうだ。しかし、これを非公式ながら破った品種も出現しているらしい。 何故、そんなに辛いのが必要なのだろうか。 男どもがトウガラシの早食いや大食いを競い合うのは、年齢やウエストサイズに比例して衰えていく闘争本能に訴えるものがあるからだ。 ここで気になるのが「男性馬鹿理論(mail idiot theory)」である。避けようとすれば避けられた悲惨な死亡事故の少なくとも90%が、男性による無謀な行為によるものだった、というやつだ。列車にタダノリしようとしてショッピンクカートを列車の後ろにつないで死亡、エレベーターのワイヤーを盗もうとして、ワイヤーを切断して墜落して死亡、など。激辛トウガラシを食べる男は、男性馬鹿理論によるのか? という具合に、アホっぽい話ばかり取り上げてみたが、トウガラシが辛くなる生物学的な理由にもきちんと触れられている。 食害・病虫害を防ぎながら、カプサイシンの受容体がない鳥に食べられて遠くに行きたい、とか。 ある種のトウガラシは、昆虫の死骸を食べたミミズが排出するキチンを検出、(おそらく昆虫のキチンを感じて)、身の危険を感じて辛味強度を強める、とか。 もっとも、やはりいちばんの見所は、人類が(男性馬鹿を除いても)どうトウガラシと関わってきたか、だろう。媚薬だったり精力剤だったり兵器だったり、そういえば食い物でもあった。 トウガラシがペッパーと呼ばれるのは、コロンブスが間違えちゃったのかもしれないが、潜在的な金銭価値を授けたのかもしれない。そういう話も満載だ。 トウガラシそのものがエンターテイメントであり、本書もまたトウガラシをモチーフにしたエンターテイメント的書物である。"
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「世界中で愛されている香辛料」トウガラシについて、その種類、なぜ辛くなったのか、どのように世界に広がり、かつその地で根付いているのかや、食用だけでなく武器としての使用、激辛というムーブメントまで、ありとあらゆるトウガラシネタを満載! 激辛好きの私は、これを読んでいるときはいつも、...
「世界中で愛されている香辛料」トウガラシについて、その種類、なぜ辛くなったのか、どのように世界に広がり、かつその地で根付いているのかや、食用だけでなく武器としての使用、激辛というムーブメントまで、ありとあらゆるトウガラシネタを満載! 激辛好きの私は、これを読んでいるときはいつも、トウガラシ料理のレシピが乗っているわけでもないのに、口の中に唾液がわいてくるのを抑えられませんでした。 そして、口絵掲載のピータペッパーの形状には爆笑! ご興味ある方はぜひ、「ピータペッパー 写真」で検索してみてください。ただし、下ネタ系ですので閲覧には十分ご注意ください。
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アメリカ大陸原産だということをほとんど忘れるほど、中国で、インドで、ブータンで、アフリカで、ヨーロッパで、そして日本でも愛されているトウガラシ。なぜ辛いのか、そしてなぜ食べたくなるのかといった生理的な話から、トウガラシの種類、伝播の歴史、各地での受容といった人文学的な話まで。「大...
アメリカ大陸原産だということをほとんど忘れるほど、中国で、インドで、ブータンで、アフリカで、ヨーロッパで、そして日本でも愛されているトウガラシ。なぜ辛いのか、そしてなぜ食べたくなるのかといった生理的な話から、トウガラシの種類、伝播の歴史、各地での受容といった人文学的な話まで。「大全」というにふさわしい。辛い物好きなひとなら、楽しめる雑学集といったところだが、それにはとどまらない文化史的な射程もある1冊。
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