シェーンベルク音楽論選 の商品レビュー
原書名:STYLE AND IDEA 音楽の様式と思想 革新主義者ブラームス グスタフ・マーラー 十二音による作曲 音楽における心と理性 音楽教育の方法と目的 音楽評価の基準 音楽と詩の関連性 民族的音楽について 芸術の創造と大衆性 著者:アルノルト・シェーンベルク(Schö...
原書名:STYLE AND IDEA 音楽の様式と思想 革新主義者ブラームス グスタフ・マーラー 十二音による作曲 音楽における心と理性 音楽教育の方法と目的 音楽評価の基準 音楽と詩の関連性 民族的音楽について 芸術の創造と大衆性 著者:アルノルト・シェーンベルク(Schönberg, Arnold, 1874-1951、オーストリア、作曲家) 訳者:上田昭(1932-2012、作曲家)
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クラシック音楽と現代音楽の橋渡しをしたシェーンベルクの音楽的信念が垣間見える。本当はよく分かるんだろうけど、こっちの準備が足りないのか、訳が一般向けでないのか、そも難解な文章なのか一読しただけでは、どうにも頭に入ってこない。それでも芸術としての音楽とはどうあるべきかは伝わってくる...
クラシック音楽と現代音楽の橋渡しをしたシェーンベルクの音楽的信念が垣間見える。本当はよく分かるんだろうけど、こっちの準備が足りないのか、訳が一般向けでないのか、そも難解な文章なのか一読しただけでは、どうにも頭に入ってこない。それでも芸術としての音楽とはどうあるべきかは伝わってくる。すごいよね。作者が生み出したいものだけが真の音楽であり、誰かのために書かれた音楽は芸術ではないって言い切っちゃうんだからさ。
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※このレビューにはネタバレを含みます
いつも言っていることだが、一般論として音楽科は文章が下手で、論理も筋がちゃんと通っていないことが多い。恐らく本を読む習性がないからだろうと考えている。武満徹あたりは素晴らしい文学性をも備えていて、際だった例外である。 さて本書だが、シェーンベルクは思ったよりも文章は下手ではないと思う。すごく上手いわけでもないが、論理が成立していて、真面目に考えて生きてきた人なのだなとわかる。 それに比べて、翻訳が良くない。訳者も作曲家らしいのだが、とても読みにくい訳文だ。文章のセンスがない。たとえば、1ページ内の十以上のセンテンスの文末が全部「・・・である。」になっていることに気づいたときは失笑してしまった。こんな初歩的な文章作法がなってないなんて、高校生以下だ。編集者は何をやっていたのか。 私はストラヴィンスキーの音楽の個性が大好きなのだが、シェーンベルクはストラヴィンスキーをやたら揶揄したり、「おまえの旋律も、リズムも、和声も、何もかもが嫌いだ!!」などと放言する辺り、心の狭いヤツだなあ、と思っていた。この「心の狭さ・固さ」のイメージは本書を読み通してもまったく払拭されなかった。 シェーンベルクは「(音楽の)歴史、歴史」と盛んに言うのだが、この歴史観なるものは、バッハ、ベートーヴェンからヴァーグナーにいたるドイツ近代音楽の狭い一部分のみに限定された一側面というに過ぎず、まったくもって主観なのだ。そうした「偏り」を普遍だと信じていたところにシェーンベルクの知性の限界がある。 彼が音楽的に重要だと思っているようなのは、楽譜上の諸音楽素の構成法であるようで、たとえばドビュッシーの「響き」の革命については、音楽の中心的要素ではない、と切り捨ててしまっている。後代の音楽家・聴衆は全然そうは考えなかったのだから、シェーンベルクが「信じたもの」はたちまちにして古びてしまった、前時代の遺物でしかなかった。 そして、十二音技法という、数学的構築にもつながるような書法を編み出しておきながら、自身は近代的な芸術家スノビズムに留まった保守主義者であった。後代の作曲家たちは、むしろウェーベルンに触発される流れが多かったようだ。 そうは言っても、シェーンベルクは非常に優れた作曲家の一人であり、もちろん聴いておくべき・欠かせない20世紀音楽のメルクマールである。 本書の中では自作をなぞりつつ十二音技法について書いた文章もあり、これはかなり貴重と言わなければならない。私も十二音技法を学ぶときに、この文章に出会っていたら良かったのになあ、と思った。 言うまでもなく、日本の若い音楽家は必読の書物である。
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