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2019/09/19

スマナサーラ長老の著書。人工知能(AI)の技術発展により、善悪の判断ができる道徳ロボットの開発が急がれる中で、それに対抗しうる人間の脳はどう成長するものかが語られます。 道徳教育を通じて育成される道徳性は、人格の基盤となるだけでなく、豊かな心、そして幸せに生きる道を教え、生きる...

スマナサーラ長老の著書。人工知能(AI)の技術発展により、善悪の判断ができる道徳ロボットの開発が急がれる中で、それに対抗しうる人間の脳はどう成長するものかが語られます。 道徳教育を通じて育成される道徳性は、人格の基盤となるだけでなく、豊かな心、そして幸せに生きる道を教え、生きる力を育くみます。 道徳観念を持たない動物、例えばペンギンは一生懸命子育てをしますが、隣のヒナが飢えて死にそうでも、何のアクションも起こさないといいます。人間の場合には「助けなくては」という気持ちから手を差し伸べますが、それは道徳の観念を持っているからなのです。 よく冷酷な人のことを「人非人」とか「人でなし」と呼びますが、それは道徳性を持たない人を指しているわけですね。 道徳とはどんな人間も歩むべき普遍的な道で、自身が周りに迷惑をかけず、トラブルを起こさず、調和しながら楽しく生きる方法の教えです。 時代によって社会のルールはころころと変更しますが、道徳の教えが変わることはありません。 本書では、道徳の授業を担当する学校の先生が長老に道徳について尋ねるコーナーが設けられています。 また、道徳と宗教は別ものですが、仏教の道徳も「十善十悪」に見られるように、時代や国に関係なく、普遍的なものです。 ただ、宗教によって道徳の内容は変わります。「アッラーは偉大なり」といって凄惨な爆撃を行うテロリストたちも、宗教の道徳を持っているのです。異なる道徳を持つ宗教同士が衝突する場合には、互いに自分が正しいと思っているため、とてつもなく大きな争いとなり、宗教戦争へと発展します。 さらに本書には、AIロボットの研究者、鄭雄一教授との対談も収められています。AIやロボットに搭載する「道徳エンジン」の開発を進める、 医工学者であり道徳哲学者の教授に、長老はいくつもの問いを投げかけます。 科学としての道徳と、仏教の道徳観は共通するのか?脳のプログラムを道徳で変えることはできるのか?科学と宗教の観点から語られる、興味深い内容です。

Posted byブクログ