♯失恋したて の商品レビュー
なるほど、そう来たか 今時の展開?? 一番嫌な奴にしたのは彼女だけど それでも余りあるオマケをたくさん手にできたよね ハッピーエンドって事で!
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※このレビューにはネタバレを含みます
この著者の作品はほぼ初読(随分昔に『僕の好きな人がよく眠れますように』を読んだ程度)だったからか、構成が独特に思えた。ハッシュタグで紡がれる文章で作られた章題。小学生とその父親と、失恋したての大学生。そして見知らぬ北の大地。思い人の失恋話を聞く異性の気持ちやなつきの彼氏への気持ちを汲み取りつつ、一緒に旅行しているような気分になれた。ただ私自身島本理生さんや柚木麻子さんの作品を好んでいるからか、旅先での食事シーンの描写には物足りなさを感じた。ゆえに星は4つ。 遥希くんの純粋かつ有識な点が好きだ。他人の盗撮かもしれないが、叫ぶなつきを綺麗だと感じる彼の柔軟な発想がなければ、幸福駅で叫ぶなつきは救われなかった。大好きだけど幼少期に亡くなってしまった彼の母親を撮った映画や、彼へ宛てたビデオメッセージの賜物だろう。彼の言葉を記載しておく。 「自分を満たそうとするのが恋。自分より相手の方が大切だと思えるのが愛」 「人を強くするこの世でたった一つの方法は、待つことさ」 「涙に効くのは愛でも言葉でもない。人肌なんだ。」 私自身一人で泣くことが多いし、待てないし、とても自己中心的で相手を思いやれない恋愛をすることが多い。とても学びになった。私も自己中心的ゆえに想いが強いため、いつかタンチョウのように一人で「失恋卵」を産みやしないかと心配している。 恋愛相談に乗ってくれるSNSのアカウントが多く存在するが、彼らが最もシンプルで、気分が晴れるアカウントだと思えた。知り合いに相談していたら軽いと思われそうだが、全くの他者という距離感だからこそ為せる技なのだと思った。 なつきは男友達がいないからこそ、男性サイドの意見、特に槙田さんの推測には気づかされることが多かったのではないか。なつきの彼氏はなつきの個性を殺しているようにしか私にも見えなかったし、彼らによってなつきが気づいてくれて本当に良かった。同時に私も、今まで好きだと思っていた人には合わせてばかりだったなと少し悲しくなった。失恋のタイミングは、私も分からなかったので参考になった。 最後に、最も共感した部分の抜き出しを。 円から半円へ。日輪は留まることはなく、ゆっくりと水平線に溶けていった。最後の残光は煌めきながら、やがて光量を落としていく。消えないで、と願った。やがて世界は闇に落ちることはわかっている。だけどなつきはその光に、消えないで、と願っている。それでもそれは終わる。消えた太陽の朱の名残りを、三人は見つめた。ゆっくりと変化していく。朱は闇に呑まれていく。 「それは、失恋の終わりに、相応しい光景だった」 と、遥希くんが言った。その言葉が、夕陽の残響のように、なつきの胸に染みる。 これはまさしく、失恋を表したものだ。当初その傷や相手への想いを消えないでと願うけれど、表面的には消えてしまう。目視できないだけで太陽が消えることはないから、実際は残っている。人は失恋を通じて、傷つきつつ心の中に温かい太陽を秘めるのではなかろうか。そう考えると、失恋も大切な経験である。それが今作一番の学びである。
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