水が消えた大河で の商品レビュー
「フェンスとバリケード」で三浦英之を知り、「南三陸日記」「帰れない村」と読み進め本書に至った。 熱くて賢いジャーナリストだ。若いころ本多勝一に影響されたが、いまは三浦英之ファンである。 活躍を祈る。 次は「五色の虹」を用意した。
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日本有数の大河「信濃川」が、10年ほど前にその中流域で川が干上がるほどの状況になっていました。その原因は中流域に建設された東京電力とJR東日本の水力発電所による大量取水でした。水力発電所と聞くと、黒部ダムのように山深い渓谷に堤高100m以上のダムという印象を持つ方が多いと思います...
日本有数の大河「信濃川」が、10年ほど前にその中流域で川が干上がるほどの状況になっていました。その原因は中流域に建設された東京電力とJR東日本の水力発電所による大量取水でした。水力発電所と聞くと、黒部ダムのように山深い渓谷に堤高100m以上のダムという印象を持つ方が多いと思いますが、信濃川中流域に建設されたこれらのダムは堤高は20mそこそこ。そこで取水した川の水を水圧鉄管で下流へ送り、落差を確保して発電するという「水路式」という形式です。このため、川の水は本来の河道ではなく、水圧鉄管をバイパスするので、川が干上がってしまうという現象が起こります。 干上がった川は、もはや川魚も住めませんし、河川環境は完全に破壊されてしまいました。 JR東日本のダムでは、地元自治体と結んだ水利権を超える量の川の水を取水しながら、取水量のデータは水利権ギリギリとなるようにデータの捏造までなされていました。本書はこのJR東日本の違法取水を認めさせ、干上がった川を元の状態に戻すまでの取り組みを追ったノンフィクションです。 JR東日本の発電所で発電された電気は、首都圏の山手線などの運行に供されていました。地方の自然環境を破壊して、首都圏のエネルギー供給に充てるという、福島原発と同じ構図です。 なぜ、このようなダムの建設が進められ、日本有数の大河が干上がるほどの取水を地元自治体が認め、さらにはデータの捏造がなされるほどの状況に至ったのかを地元関係者や、自治体首長経験者などへの取材で明らかにしています。著者はカヌー愛好者との事で、川との親しみを感じるが故に、河川環境を回復する過程に興味を抱き、丹念に取材している様子がよく伝わってきました。
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