ブヴァールとペキュシェ の商品レビュー
1881年、フローベール死後刊行の、未完成の遺作。 この邦訳書の帯には蓮實重彦さんの絶賛の言葉が載っているが、私は蓮實さんの言うことに興味は無い。巻末に載っている訳者の解説も、なんとなく蓮實さんの言うことに近いような言述なので、割とそっち派の人なのかもしれない。 しかし、こ...
1881年、フローベール死後刊行の、未完成の遺作。 この邦訳書の帯には蓮實重彦さんの絶賛の言葉が載っているが、私は蓮實さんの言うことに興味は無い。巻末に載っている訳者の解説も、なんとなく蓮實さんの言うことに近いような言述なので、割とそっち派の人なのかもしれない。 しかし、これがとても変わった小説で、「これが『ボヴァリー夫人』と同じ作者?」と疑いたくなるほどに、方法論がリアリズムから飛躍している。ブヴァールとペキュシェという中年男性2人が喜劇的な主人公で、大金を手に入れ大きな邸宅に住むようになって以来、園芸術から始まって科学、文学、宗教など、あらゆるタイプの文化領域の言説の海をつぎつぎに渡ってゆく。結局はへまをしてばかりいる2人は、むしろマンガ的な笑いを誘う。フローベールは、こうした学問的な言説を百科全書的に並べ立て、哄笑の渦で吹き飛ばそうと目論んだらしい。 そうなると、主人公2人は言説の受け皿のような存在となり、もはや歳もとらないし何度失敗しようが懲りはしない。 さてこれは、19世紀にはありえなかったような「アンチロマン」と言えるだろうか? 確かに20世紀の小説に似た面もあるけれども、ラブレーの笑いに近いものも感じる。フローベールの作品の中ではかなり異質なもの、という気はする。 分厚いが意外と面白くて、どんどん読み進めることができた。
Posted by
二人の男が様々な学問に中途半端に手を出しては失敗する。滑稽というか、ユーモラスというか。19世紀半ばの学術的知識が全て詰め込まれているのだと思う。たまたま図書館で「ジャケ借り」した一冊だったのだけど、出会えてよかった。
Posted by
- 1