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奇妙な死刑囚 の商品レビュー

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8件のお客様レビュー

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2022/12/26

「読書会という幸福」(向井和美/岩波新書)で紹介されている本。米国アラバマ州の司法制度の杜撰さと黒人被告に対する悪意、死刑囚監房の悲惨な日常、人種差別の激しさを詳述。それよりも無実の罪で30年間、死に怯えながらも希望を捨てず、自由を勝ち取った著者の生き方や闘いの物語は目を離すこと...

「読書会という幸福」(向井和美/岩波新書)で紹介されている本。米国アラバマ州の司法制度の杜撰さと黒人被告に対する悪意、死刑囚監房の悲惨な日常、人種差別の激しさを詳述。それよりも無実の罪で30年間、死に怯えながらも希望を捨てず、自由を勝ち取った著者の生き方や闘いの物語は目を離すことができず一気読みでした。 原題は”THE SUN DOES SHINE”。これは希望を捨ててはならないことを表現するもので、本書の内容にぴったりの題名。邦題も「太陽はきっと輝く」でいいと思いますが、これを「奇妙な死刑囚」という邦題にしたのは疑問。おそらく、死刑囚監房の中で読書会を開催したり、ジョークを言ったり、ハリウッド女優と結婚するなどの妄想を抱いたりする著者の行為を「奇妙」としたのかもしれません。ただ、著者が暮らすのは「仲間」となった死刑囚が次々と処刑され、しかも電気椅子で人肉の焼ける匂いがするという発狂するような環境。著者の行為は人間として生きるために、希望を捨てないために必要な行為なのに、「奇妙な」とするのには違和感を覚えました。。 しかし、邦題の違和感を差し引いても極限状態の中で人間がどうやって希望を捨てないでいられるのかが著者自身の言葉で表現されている本書は貴重。読むべき本の1冊と思います。

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2022/04/06

新文化 本を手渡す人で紹介。歴史的な冤罪事件として30年死刑囚官房に監禁された人物の著書。死刑囚官房で友人となったヘンリーはKKKの父の影響で黒人をリンチして殺害。読書クラブに誘い、悔い改め、黒人の囚人たちは彼を赦したが処刑される。後悔しながら死刑執行に向かう。

Posted byブクログ

2021/12/27

人生観を養える本です。 人種差別も絡み、無実の罪で長い期間収監された著者が、希望を捨てないことで多くの人に支えられるようになり、その人たちの力もあり、ついに釈放されます。 将来を前向きに考える力があれば、どんな困難でも乗り越える可能性があることを学べる1冊だと感じました。 【特...

人生観を養える本です。 人種差別も絡み、無実の罪で長い期間収監された著者が、希望を捨てないことで多くの人に支えられるようになり、その人たちの力もあり、ついに釈放されます。 将来を前向きに考える力があれば、どんな困難でも乗り越える可能性があることを学べる1冊だと感じました。 【特に覚えておきたいと感じた内容の覚え書き】 ・違う選択をしていたらどうなっていただろうと、過去に思いをめぐらすことは誰にでもある。災難や悲劇や不幸は誰の身にも起こる。そういうときには、肝心なのはそんな体験をしたあと自分が何を選ぶかで、何を選ぶかによってその後の人生は永遠に変わると信じたい。 ・自由を失うまでは、自由の真の意味は決してわからない。自由の喪失とは、毎日、朝から晩まで、拘束服を着せられているようなもの。 ・自分が幸福なら、相手にも同じか、もっと幸福になってほしいと思うもの。 ・あやまちを犯したとしても、その時わからなかったことがわかるようになったら、だれもがやり直せるのではないか。 ・怒りや憎悪がこみ上げてきても、許すことができなかったら、もうよろこびを感じられなくなる。そうなれば、残りの人生も奪われてしまう。 ・悪いことが起こったら、そこから立ち直るすべを見つけなければならない。すべての終わりをハッピーエンドにしなければならない。誰もが、自分を尊重したいと思っている。自分の人生を生き、自分の物語を紡ぎ、自分で選択したいと思っている。それができなければ、自分を尊重することなどできない。 ・大切なのはどう生きるか。愛することを選ぶのか、憎むことを選ぶのか、助けるのか、傷つけるのか。自分の人生が永遠に変わってしまった瞬間を、正確に知るすべはない。気配を察するしかない。目に見えることはない。

Posted byブクログ

2021/12/08

人種差別の惨さを感じた。無実の罪で死刑を言い渡された状況で、この主人公の考え方はとても私には真似できない。この主人公の人柄にまず感銘を受けた。

Posted byブクログ

2021/03/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

奇妙な死刑囚 著者:アンソニー・レイ・ヒントン 発行:2019年8月5日 海と月社 1985年、29歳だった著者は、身に覚えのない強盗銃撃事件で突然逮捕・起訴され、2件の殺人事件でも追起訴されて、翌年に死刑判決。30年間のほとんどを1.5メートル×2メートルの死刑囚監房で過ごした。 彼は黒人差別のひどいアラバマ州に生まれ育った。炭坑で働いていた父は大けがしたのか、いない。10人きょうだいの末っ子として、母と2人。上はみんな故郷を離れている。母親からは厳しく育てられた(白人と喧嘩をしてはいけないなど)ものの、母親思いの息子だった。 最初に逮捕された強盗銃撃事件が起きた時、彼は24キロ離れたところで、タイムカードで管理され、監視が見張っている中で清掃の仕事をしていた。アリバイは完璧にある。しかし、被害者(白人)が彼こそ犯人だと言った。一体、どうやって現場に行ったというのだ?すぐに無罪放免されると思っていたが、結局、30年間、死の恐怖と闘った。 アッカー警部補に言われた。 「正直なところ、おれはな、おまえの仕業じゃないと思っている・・・おまえが有罪判決を受ける理由を五つ説明できるぞ。その一、おまえが黒人だから。その二、ある白人がおまえに撃たれたと証言するはずだから。その三、この事件の担当が白人の地区検事だから。その四、裁判官も白人だから。その五、陪審員も全員、白人になるだろから」 彼は貧しく、州が出してくれるわずかなお金で雇える弁護士は無能そのもの。彼の母親所有のピストルが犯行のものではないと鑑定する専門家もポンコツ。しかも、ピストルを押収した時に警官が銃口の内側を布で拭くと埃がついていて、長年使っていないことが分かっていたのに、なぜかそれが凶器だとされてしまう。 アラバマ州は、全米一の死刑の多さ。終身刑の判決が出ても、裁判長の判断一つで死刑に変更できる州。なにもかもが絶望的だったが、彼は決して諦めず、毎日祈り続けた。しかも、同じ死刑囚監房に入っている死刑囚たちを励まし続けた。黒人が多いが、中には白人もいて、その一人は14歳の黒人を殺し、父親はKKKのメンバー。だが、彼はその白人死刑囚と友達になる。みんな、死の恐怖に怯えながら毎日暮らしているのに変わりはないからだ。 電気椅子が使われると、人が焼ける臭いが監房中に立ちこめ、なかなか抜けなかった。誰かが死刑執行される時、全員が独房の扉を叩く。そして、執行される死刑囚に「一人じゃないぞ」という意思を伝える。この本は、30年かけてどんな方法で無罪を勝ち取ったかという詳しい情報ではなく、そんな死刑囚たちの拘留や励まし合いなどを中心に描いている。そこには、強気と弱気を行ったり来たりしながらも、著者が豊かな人柄と自分への信頼で希望をつないでいる様子が見てとれる。 15年たった。お金がなく、弁護士も雇えず、絶望しかけた彼に救世主が現れる。人権派弁護士が、無料で彼の弁護を買って出てくれた。そして、15年もの歳月をかけて彼を檻から出し、死の入り口から生還させてくれた。 その瞬間は、YouTubeでも公開されている。 岸政彦の小説に出会わなければ、今年読んだベスト本になったかもしれない一冊だった。 30年ぶりに自由の身になったときのニュース映像動画 https://youtu.be/HbMjJX_az3I

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2020/07/01

レイは、アリバイがあるのに無実の罪で30年もの間、死刑囚監房で過ごしました。 最初の数年は、過酷な環境の中での憎悪や怒り絶望の日々に苦しみます。 しかしレイは、このような状態でも ほかにも選択肢があると思いはじめます。 希望や信仰、愛や思いやりなど 自分で物事を選択し、尊厳...

レイは、アリバイがあるのに無実の罪で30年もの間、死刑囚監房で過ごしました。 最初の数年は、過酷な環境の中での憎悪や怒り絶望の日々に苦しみます。 しかしレイは、このような状態でも ほかにも選択肢があると思いはじめます。 希望や信仰、愛や思いやりなど 自分で物事を選択し、尊厳を保つことができるのだと確信します。 のちの弁護士になるブライアンも素晴らしく、 レイの人格のよさに敬意を払います。 この本に出会えて良かったと思える一冊でした。

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2020/01/21

無罪にも関わらず30年(!)も死刑囚として独房に入れられたアンソニー・レイ・ヒントン。無罪も無罪、その場に居合わせたのでもなければ、動機もない。疑わしい証拠が何もない。彼本人の独白として書かれた本作は、進まない進展に、そして何かアクションを起こしその返事がくるのが2年後だったり、...

無罪にも関わらず30年(!)も死刑囚として独房に入れられたアンソニー・レイ・ヒントン。無罪も無罪、その場に居合わせたのでもなければ、動機もない。疑わしい証拠が何もない。彼本人の独白として書かれた本作は、進まない進展に、そして何かアクションを起こしその返事がくるのが2年後だったり、その緩慢とした時計の進み方がとても恐ろしくなる。救いになるのが、ヒントンがユーモアを忘れなかったこと。序文をよせた弁護士ブライアンとの出会いがなければどうなったのだろう。この話は、大昔の話ではない。解放されたのもごく最近。そして何より恐ろしいのは、こんなむごい話がほとんど知られていなかったことだろう。いったい死刑を宣告されたもののなかで冤罪がどれだけあるのだろう。そして、日本も決して他人事では、ない。

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2019/10/17

過去に正義とは、いかに儚く脆かったのかと思うや、この限られた人たちの中で愉しまれた甘美なよりどころとしての劇薬は今も確実に我々のうちに隠蓑をかむりはびこっている。 みんなはなんとなく真実、公平、平等、自由、博愛などと声をあげ、良くなってきたと思っているかもしれないが、それが偏見...

過去に正義とは、いかに儚く脆かったのかと思うや、この限られた人たちの中で愉しまれた甘美なよりどころとしての劇薬は今も確実に我々のうちに隠蓑をかむりはびこっている。 みんなはなんとなく真実、公平、平等、自由、博愛などと声をあげ、良くなってきたと思っているかもしれないが、それが偏見の始まりだったらどうする? つまり誰もがレイヒントン氏の30年間を奪う危険があることを片時も忘れてはならない。

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