潜行三千里 完全版 の商品レビュー
元大本営参謀 戦時中は、作戦の神様と呼ばれノモンハンなど多くの作戦でその能力を発揮した。 本書は、その辻が、終戦を迎えた、タイのバンコクからの逃避行を記載した自伝である。 戦後、戦犯指定から逃れ、衆議院議員、参議院議員を歴任し、最後は、ラオスのジャングルにて、消息を絶つという 波...
元大本営参謀 戦時中は、作戦の神様と呼ばれノモンハンなど多くの作戦でその能力を発揮した。 本書は、その辻が、終戦を迎えた、タイのバンコクからの逃避行を記載した自伝である。 戦後、戦犯指定から逃れ、衆議院議員、参議院議員を歴任し、最後は、ラオスのジャングルにて、消息を絶つという 波乱万丈な人生を歩んでいる。 GHQからは、第三次世界大戦を起こしかねない男として、危険視され続けていた。 日本ばかりか、アジアにその名をとどろかせた、希代の天才は波間にその背をみせつつ、歴史の中へと消え去ったのである。 気になったのは以下です。 華僑の底力は偉大なものがある。タイ国の経済の主導権は、この数日の現象をみても、完全に華僑に握られている。 一兵の援護も受けない中国人が世界のすみずみにまで発展し、経済的に根を張る底力には、敬意を表さねばならぬ。 辛亥革命を近代的民主革命と見たことが誤算の第一歩であろう。これは排満興漢を動機とする政治革命であって満州朝廷に変わるべき孫文朝廷を建設するのが主要な狙いである。 三民主義理論は、ただ旗印に過ぎなかった。 中国四千年の歴史は、いずれの時代においても民衆の希望いかんにかかわらず権勢を争う集団の、個人の闘争史である。 野心家が武力を駆使して、天命を勝手に作って王位をうかがう歴史の連続である「有徳作王」(徳あるものが帝王になる)の国だ。 彼ら(中国人の)知識青年の中では、日本の過去の政治家の中で一番偉い人物は、西園寺公だと信じている。 民族平等の原則をベルサイユ会議で主張した当時の日本外交に被圧迫民族がどんなに強い共感を覚えたことだろう 過去の日本の対華政策は、ただ目前の権益主義を方針とし、主観的立場で相手を見たためについに失敗している。 辛亥革命を済南で妨害し、滅びゆく清朝の復辟を期待したり、英国による弊政改革を嫉視したり、二十一ヶ条の要求を強行して火事泥をやったりした過去がいかに愚劣であっただろう 目次 本書に寄せて 1 人と人 2 死関を突破す 3 わき返る安南 4 おごる重慶 5 還都後の南京 6 旅窓に映る中国の世相 7 一握りの土 我等は何故敗けたか 発売日 2019年08月15日 第1刷 発売日 2019年09月20日 第6刷 著者/編集 辻政信 シリーズ 潜行三千里 出版社 毎日ワンズ 発行形態 新書 定価 本体1100円+税 ページ数 299p ISBN 9784909447081
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著者の主観による内容なのでこれだけではなんとも。動機や目的が正しければ何をしても、どんな結果も許される、との思いがあったか。
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誰かが小説にすると良いのに~ビルマで負傷し、タイで敗戦を迎え、坊主に化けて名前を変え、偽医者になってベトナムを経由し、国民党に連絡を取って昆明・武漢・南京で日華合作を画策するが、諦めて大学教授に化けて上海から帰国する元大本営参謀の大佐~いや、既に小説化されているか? 映像化しよう...
誰かが小説にすると良いのに~ビルマで負傷し、タイで敗戦を迎え、坊主に化けて名前を変え、偽医者になってベトナムを経由し、国民党に連絡を取って昆明・武漢・南京で日華合作を画策するが、諦めて大学教授に化けて上海から帰国する元大本営参謀の大佐~いや、既に小説化されているか? 映像化しようとすると、南京虫や中国のお手洗い事情、居室に青痰を吐く老若男女も描かないとね。それは無理だすな
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大東亜戦争の「作戦の神様」であり「絶対悪」の辻政信の自叙伝。手記であるからして客観性はだいぶ割り引いたとしても、これまでの冷血漢な印象とは異なり、正義感と他者への慈愛に満ちたあふれた印象が強く残った。 高い使命感を持ち、頭脳明晰でカリスマも行動力があれば、結果の如何では乱世の奸雄...
大東亜戦争の「作戦の神様」であり「絶対悪」の辻政信の自叙伝。手記であるからして客観性はだいぶ割り引いたとしても、これまでの冷血漢な印象とは異なり、正義感と他者への慈愛に満ちたあふれた印象が強く残った。 高い使命感を持ち、頭脳明晰でカリスマも行動力があれば、結果の如何では乱世の奸雄という誹りをうける事になってしまったのか。。
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内容の凄さから過去につけたことのない五つ星をつけました。今回の版は「我等はなぜ負けたか」の章を遺族が公表してくれたお陰のようですがむしろこの本の価値はこの章に凝縮ていると感じました。マスコミや世間の偏った見方ではなく本当の軍人の率直な敗戦についての感想を多くの人に読んで貰いたいも...
内容の凄さから過去につけたことのない五つ星をつけました。今回の版は「我等はなぜ負けたか」の章を遺族が公表してくれたお陰のようですがむしろこの本の価値はこの章に凝縮ていると感じました。マスコミや世間の偏った見方ではなく本当の軍人の率直な敗戦についての感想を多くの人に読んで貰いたいものです。
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「作戦の神様」とも「絶対悪」とも言われる辻政信だが、敗戦後にタイ、ベトナム、中国に潜伏し、帰国後に出版して当時ベストセラーになったという本書。戦争も遠くなったいま読めば、一種のノンフィクションとして面白くも読めるのだが、敗戦の記憶も新しい当時の人はどう読んだのだろうか。 内容は、...
「作戦の神様」とも「絶対悪」とも言われる辻政信だが、敗戦後にタイ、ベトナム、中国に潜伏し、帰国後に出版して当時ベストセラーになったという本書。戦争も遠くなったいま読めば、一種のノンフィクションとして面白くも読めるのだが、敗戦の記憶も新しい当時の人はどう読んだのだろうか。 内容は、筆者の信条や思考については粉飾もあるかもしれないが、現地での見聞は事実と見てよいだろう。つまり、蒋介石を主席とする国民党政権は軍も含めて著しく腐敗していて、抗日戦争に勝利した瞬間から私利私欲が剥き出しとなり、旧主である日本以上に恣意的な搾取を行ったため、民衆の支持を得られず共産党政権・軍に敗れたという流れが具体的事実をもって適示されている。また、敗戦直後の東南アジアで、それまでの統治者であった日本や日本人に向ける現地人の冷たく敵対的な視線もリアルに描かれている。 著者が戦犯容疑から逃れるためでなく、新しい日中関係を築くための礎として潜伏したという主張は、虚偽とまでは言えないものの、帰国後も戦犯指定解除まで潜伏し続け、その後文筆や公職で活動したことを考え合わせると、保身の匂いが拭えないと感じるのは、著者に厳しすぎるだろうか。
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数多の犠牲者を出したノモンハン事件の参謀であり、本人にインタビューを行った歴史家の半藤一利をして「絶対悪の存在を感じた」と言わしめた辻政信。ビルマでの惨敗からタイに抜け、タイにて敗戦を迎えた辻政信は、国民党政権が率いる中国との合従連衡をリードすべく、英米からの戦争犯罪人としての追...
数多の犠牲者を出したノモンハン事件の参謀であり、本人にインタビューを行った歴史家の半藤一利をして「絶対悪の存在を感じた」と言わしめた辻政信。ビルマでの惨敗からタイに抜け、タイにて敗戦を迎えた辻政信は、国民党政権が率いる中国との合従連衡をリードすべく、英米からの戦争犯罪人としての追求を避けながら、東南アジアを潜伏し、中国は南京を経て日本に戻ることとなる・・・、そうした潜行を描いた本人による自伝が本書である。 確かにここでの潜行は読み物としての魅力に溢れているのは間違いない。タイでは仏教の僧侶として、ベトナムでは町医者や華僑として、そして日本に戻る際には一介の大学教授として、というように、次々に身分を隠しながら、日本に戻ることに成功する。それにしても、読んでいて空恐ろしくなるのは、関東軍の参謀として日中戦争を引き起こし、結果としての太平洋戦争、そして敗戦を招いたということに対する自責の念が全く伺われない点である。ひたすら潜行を続けながら、国民党政権の要職者たちにコンタクトし、日中の合従連衡を夢見るその姿からは、過去に自身が行ったことへの反省は微塵も感じられない。 極めつけは本新書版にて掲載された「我等は何故敗けたか」という小論である。官僚、外交の失敗、科学技術の水準の低さ、陸海軍の対立(特にその原因は海軍にあるということ)、などが敗戦の原因であると主張し、自身が属した陸軍、特に関東軍についての自責がこれまた完全なまでに忘れ去られている。 巨悪をなす人間というものは、こうまで自身の悪に無頓着でなければ、巨悪をなすことはできないのかもしれない。そうした点を知れるという点でも、超一級の歴史的ドキュメントである。
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