移民とAIは日本を変えるか の商品レビュー
▼移民とAI ■移民は、AIが不得意とする社会的コミュニケーションや現場での対応などの局面で、国内労働者を補完する ■AIはタスクの効率化や精度を高める ◉人口減少の日本にとってkeyとなるのが移民とAI
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本来、金融論が専門の著者であるが、日本の金融政策は限界に直面しているという認識の下、副作用とリスクの大きい更なる実験的金融政策を追究する前に、日本の構造問題である人口問題についてもう一度考えてみる必要があるという問題意識で本書は執筆されている。人口ペシミズムへの2つの異論(①日本...
本来、金融論が専門の著者であるが、日本の金融政策は限界に直面しているという認識の下、副作用とリスクの大きい更なる実験的金融政策を追究する前に、日本の構造問題である人口問題についてもう一度考えてみる必要があるという問題意識で本書は執筆されている。人口ペシミズムへの2つの異論(①日本における人口減少は確定的未来ではなく、(移民受入れによる)日本国民による選択の余地が大きい、②AIが飛躍的に進化を遂げ、労働がAIによって代替されていくことを展望すると、懸念すべきは人手不足ではなく大失業が発生する可能性のほうだ)を取り上げ、それらに大きく関わる「移民」と「AI]について、経済的な影響だけでなく、社会に与える長期的な影響を踏まえた分析を行っている。 本書の結論は、以下のとおりである。日本における人口減少は確定的未来ではなく、日本国民による選択の余地が大きい。移民の増加は、すでに人口ピラミッドに大きな影響を与えつつある。他方、AIの深化は労働者のタスクを一部代替していく省力化で労働需要を一部緩和し、かつ労働需要を二極化させる可能性が高い。しかし、中期的に人口減少を相殺し、大失業を発生させる可能性は小さく、むしろ人口減少圧力がまさることが予想される。結果として、移民への期待は今後も高まるだろう。したがって、移民の受け入れ拡大に見合う包摂体制を構築しなければならない。 本書は、人口減少問題への対処としての「移民(外国人労働者)」と「AI」について考えるための、まさに「共通基盤」となるものである。著者がこれらの問題の専門家というわけではないからこそ、初心者でもとっつきやすい形で、これらの問題に関する様々な研究成果やデータが上手く整理され、組み立てられているように感じた。 特に、移民の社会的影響に関するドイツの経験と日本の比較、最近外国人労働者急増の主役となっているベトナムと日本との関係の分析、AIで代替できるのは「事務」であり、トータルでマルチタスクをこなす「人間」の代替は難しいという視点などは、とても参考になった。
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