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どうすれば戦争はなくなるのか の商品レビュー

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2023/09/02

■六つの予備条項 第一条項 将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、けっして平和条約と見 なされてはならない。 第二条項 独立しているいかなる国家 (小国であろうと、大国であろうと、この場合問題ではない)も、 継承、交換、買収、または贈与によって、他の国家がこれを取...

■六つの予備条項 第一条項 将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、けっして平和条約と見 なされてはならない。 第二条項 独立しているいかなる国家 (小国であろうと、大国であろうと、この場合問題ではない)も、 継承、交換、買収、または贈与によって、他の国家がこれを取得できるということがあって はならない。 第三条項 常備軍 (miles perpetuus) は時とともに撤廃されなければならない。 第四条項 国家の対外紛争に関しては、いかなる国債も発行されてはならない。 第五条項 いかなる国家も、他の国家の体制や統治に、暴力をもって干渉してはならない。 第六条項 いかなる国家も、他国との戦争において、将来の平和時における相互間の信頼を不可能にしてしまうような行為をしてはならない。たとえば、暗殺者 (percussores)、毒殺者 (venefici) を雇ったり、降伏条件を破ったり、敵国内での裏切り (perduellio) をそそのかした りすることが、これにあたる。 ■確定条項 第一確定条項 国家における市民体制は、共和的でなければならない。 第二確定条項 国際法は、自由な諸国家の連合制度に基礎をおくべきである。 第三確定条項 世界市民法は、普遍的な友好を促す諸条件に制限されるべきである。  カントが世界共和国ではなく諸国家連合を採るのは、世界共和国は望ましくないという理論的・原理的な理由によるのではなく、世界共和国を実現するにはさまざまな困難がつきまとうという現実的・実践的な理由によるのだから、世界共和国を実現すべき理念と見なし、諸国家連合をそのための手段・過程として位置づけることができる、という解釈を示した。 「体制の本性の把握」「豊かな経験」「善い意志」という三つの課題を果たす方途は、世界市民的な思考様式とそれに基づく世界市民的意味での哲学である、というのがわたしの主張である。…  …鍵を握るのは人間学と判断力である。 ■恵みとしての日本国憲法  すでに述べたように、日本国憲法は永遠平和の実現という崇高な理念のみによって成立したわけではない。そういった崇高な理念とは別の動機として、占領軍総司令部の強い意向があり、自らの国と民とを破滅の淵に追いやった軍国主義に対する憤りがあり、二度と同じような悲惨な目に遭いたくな いという思いがあった。それは確かだ。  だが、いかなる事情によってであれ、とにかく二〇世紀の半ばに永遠平和の理念に合致した日本国憲法が成立し、二一世紀のいまも存続している。それは奇跡のようなことだ。それはさまざまな偶然的な事情の積み重ねによって成立したものであるが、その内容は理性のある人間であれば誰もが理想として共有することのできるものであり、その意味では、けっして偶然的なものではない。カントの言葉を借りれば、日本国憲法は、あたかも自然の摂理によるかのように人類に与えられたものだが、人類が理性をもつ限り追求すべき理念を体現してもいる、ということになろう。  その文字通り有難い恵みのような日本国憲法を、浅はかな思慮や判断に基づいて改変したり放棄したりすべきではない。それを堅持することが日本国民の道徳的義務であるというだけではない。日本国憲法第九条は、戦争をなくし平和な世界を築くための困難な努力を続ける世界市民を先導する、かけがいのない希望の星でもあるのだ。

Posted byブクログ