再考 三木清 の商品レビュー
哲学者の三木清の思想について論じた17編の論文が収録されています。 本書に収録されている論文は、三木の出身地である兵庫県たつの市の「三木清研究会」で一般市民を対象におこなわれた講演がもとになっています。編者の田中久文は「はじめに」で、「どの論文も一般読者にも興味を抱かせる魅力的...
哲学者の三木清の思想について論じた17編の論文が収録されています。 本書に収録されている論文は、三木の出身地である兵庫県たつの市の「三木清研究会」で一般市民を対象におこなわれた講演がもとになっています。編者の田中久文は「はじめに」で、「どの論文も一般読者にも興味を抱かせる魅力的なものであるとともに、研究論文としてみても先端の研究結果を踏まえた充実したものになっている」と述べています。 三木の思想は、西田幾多郎にはじまる京都学派の思想を受け継ぐ一方、マルクス主義への積極的なかかわりを通してはぐくまれたものであるということができます。本書に収められている論文も、そうした三木の思想の性格を反映して、三木の思想の哲学的意義について考察をおこなっているものが含まれる一方で、三木がファシズムの時代に対してどのようにかかわろうとしたのかということを明らかにしているものもあり、哲学的な関心をもつ読者にも思想史的な関心をもつ読者にも、学べるところがあるのではないかと思います。 ただ、それぞれの論文はかなり短いものになっており、もうすこし踏み込んで論じてほしいと感じられる部分もありました。「あとがき」では、「講師の先生方に講演原稿より字数を少なくした書き下ろしをお願いした」と書かれており、出版事情のためにやむをえないことだったのかもしれませんが、この点については読者としては残念に思われます。
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