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ヒューマンエラーの心理学 の商品レビュー

3.7

13件のお客様レビュー

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2020/03/06
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 私たち人間は意図的に錯視が生じる状況を作り出し、それを利用して画像を用いた視覚情報を伝達したり、楽しみを得たりしています。錯視や錯覚を利用している生物種は人間の他には見つかっていないと思います。(p.37)  ジュースのいっぱい入った缶と空の缶を縦方向に2つ重ねると、見た目の体重が大きくなります。その状態で持ち上げた場合と、ジュースのいっぱい入った缶を1つだけ持ち上げた場合とを比べると、後者の方が重く感じられるのです。(中略)ものを持ち上げた際に生じる重さの近くは、実際の重さとは直接的には関係のない、明るさや大きさのような視覚情報も取り入れて決定される、多感覚的処理の結果として成立するのです。(p.70) 「代表的ヒューリスティックス」:ステレオタイプ、固定概念との近さ、想起しやすさに影響を受けやすい判断の特性 「利用可能性ヒューリスティックス」:想起しやすい対象に対して、想起しにくい対象よりも高い評価を与えやすい(知っている町の人口をより多く見積もる) 「係留ヒューリスティックス」:はじめの情報で初期判断することで次に考える内容を規定してしまう。(p.131) 「現状維持バイアス」:現状によほどの問題がない限り、現在の状況の変化を望まず、現在の状況を改変するよりも、その状態を維持することを好む傾向。(p.146) 「保有効果」:ある物品を所有している場合には、そうでない場合と比べてその物品を高く評価する傾向。(p.148) 過去には地震によって巨大な津波が生じていたことはさまざまな場面で、何度も指摘していたにもかかわらず、十分な対策が取られることがなかったことには、「安全神話」を維持できる情報だけに注目し、それに反する情報やその情報源を否定する確証バイアスの陥穽に電力化会社や官僚、為政者や地域住民が落ちていたように思われます。(p.163) 想像力の膨張は具体的な個人を対象にした想像に限定されません。たとえば、アメリカ人はこう、あるいは、中国人はこういうことをしがちだと、ステレオタイプをもとに想像していると、彼らが実際にそうしたことを行っているところを見たわけでなくとも、その現場を目撃したような虚記憶が形成されやすくなるのです。(p.195) 認知的な処理に負荷が少ない事柄は記憶に残りにくいことが知られています。ネットなどですぐに情報検索できるとしたら、その情報にたどり着くまでの認知的負荷は、そうした外部記憶を頼らない場合に比べるとかなり少なくなるものと考えられます。外部記憶に頼ることができる事柄が私たち自身の内部記憶に保持されにくいという現象の基礎には、こうした記憶家庭の特性があるのかもしれません。(p.248) 実際には多様な事柄にかかわっていたとしても、その事柄があまり記憶に残らなかった場合、その期間は、特別なことがなく、あっという間に過ぎた期間として記憶されやすいのです。つまり、実際には多様なことを行っていても、その間に記憶された事柄が少ないと、充実した時間を送ったという実感が得られにくくなるのです。(p.249)

Posted byブクログ

2019/09/11
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p92 感情が生起してから、それに対応した身体的反応が生じると考える人が多いことでしょう。たとえば、悲しいから泣く、怖いから震える、楽しいから笑う、などなど。ところが、感情と身体的状況との関係については、逆のパターンもあります。泣くから悲しい、震えるから怖い、笑っているから楽しいといったことです。 実際、感情の生起によって生じると考えられるさまざまな生理的反応、たとえば、心拍が早くなったり、発汗したりすることは、自分の情動の生起を経験するよりも早く生じることが知られています。ただし、身体の生理的反応だけで感情が生起するわけではなく、そうした生理的反応の原因をどのように帰属させるかによって、情動の種類や生起が決定されます(情動二要因理論)。つまり、自分自身の感情の内容は、外界や身体情報にもとづいてラベルづけされることで決定されるのです。 ・マガーク効果 視覚が聴覚に影響 ・ラバーハンド錯視 ・ダブルフラッシュ錯視 視覚が聴覚に影響される p148 自分の持つ信念に合わないことは認識されにくいという特性があります。仮にその事柄が認識されたとしても、記憶には残りにくいのです。 逆に、自分の持っている信念に合致することが生じた場合は認識されやすく、記憶にも残りやすいのです。そのため、いったん獲得された信念は強化されやすく、破棄されにくいことになります。このような信念の維持されやすさは、「確証バイアス」と呼ばれる認知的錯覚の一つです。 実際の事柄と対応しない信念は「迷信」と呼ばれます。 p152 自尊感情とは、自分自身が意義のある存在であるとする感情的判断のことです。… 私たちは、自尊感情を傷つけないように、自分の失敗はあまり認知しませんし、記憶もしません。うまくいったことだけ覚える傾向があります。 自分の引き起こした出来事に対するこのように都合のよい認知を行う傾向の基礎には、自我防衛機制という自尊感情の保全の仕組みがあると考えられます。おそらくは、自分の本当の能力を正当に評価することは、自我の安定にとっては厳しすぎることなのでしょう。 この自我防衛機制には、さらにやっかいな特性があります。自分の信念と一致しない情報の提供者や、自分が高く評価しているものの価値を低下させる人やものについては、心的価値を落としたり、嫌いになったりしやすいのです。 これは、自分が信じていることがら、自分が信じている高く評価している対象と、その対象を低く評価する情報やその情報の発信源の両方を認めることで生じる認知的な不協和を避けるための自動的調整によるものと考えられています。 ・虚記憶 ・現状維持バイアス ・正常化バイアス ・楽観主義バイアス ・確証バイアス ・同調バイアス ・コントロール幻想バイアス ・損失回避バイアス ・計画の誤謬 ・集団浅慮バイアス

Posted byブクログ

2019/08/13

「人間とはかくも間違う生き物である」ということがよくわかる一冊です。錯視や錯誤、身体と感情の関係、モンティーホール問題を筆頭とした直感の危うさ、各種バイアスなど、事象自体は私が日ごろ読んでいるビジネス本などでもたびたび取り上げられているものが多いのですが、心理学や脳科学の観点から...

「人間とはかくも間違う生き物である」ということがよくわかる一冊です。錯視や錯誤、身体と感情の関係、モンティーホール問題を筆頭とした直感の危うさ、各種バイアスなど、事象自体は私が日ごろ読んでいるビジネス本などでもたびたび取り上げられているものが多いのですが、心理学や脳科学の観点から著者がわかりやすく解説してくれている点、専門家の本領発揮といったところ、さらにはあまり小難しくならず素人でも読みやすい内容にまとまっている点も◎。

Posted byブクログ