七つの殺人に関する簡潔な記録 の商品レビュー
ジャマイカやばいとこじゃん.. 名前だけ中に浮いていたボブマーリーという存在の輪郭が、(かなりいい意味で)この読書を通じて明確になった気がします。 現在のジャマイカはどうなってるんだろう。 レゲエを聴いみようかな。
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いやぁ~、読みごたえがありました。 百科事典じゃないんだから、もう。重すぎです! ・・・と文句言いつつ、この装丁、大好きなんですよね。 背表紙が特に好き。背表紙を横書きにして、絵まで入れちゃうなんて、この分厚さだから出来ること。 しかし、読んでいてけっこう頭が疲れた。 たくさん...
いやぁ~、読みごたえがありました。 百科事典じゃないんだから、もう。重すぎです! ・・・と文句言いつつ、この装丁、大好きなんですよね。 背表紙が特に好き。背表紙を横書きにして、絵まで入れちゃうなんて、この分厚さだから出来ること。 しかし、読んでいてけっこう頭が疲れた。 たくさんの登場人物にそれぞれの視点から見えたことをしゃべらせて、ゆっくりと全体像を浮かびあがらせていく形式の物語なんだけれども、そういうタイプの物語の常として、話の焦点が絞られてくるまでにすごく時間がかかる。通常の本ならともかく、このボリューム。半分くらい読んでも(すでに400ページ以上)、ただのギャングの抗争劇にしか見えなくて、かと言って「歌手」の狙われた理由もそれほどミステリーでもないし、いったいこの話、何が言いたいの? もしかして、私、話についていけてない?・・・などと3部あたりで非常に不安になった。 がしかーし、4部に入って、これまでの労力がどんどん回収されるかのように、「物語」が見え始め、トリスタン・フィリップスの独白部分でやっとカチリとパズルがはまった。 ああ、これはジャマイカという、とんでもなくどうしようもない国への愛の告白本なのか! あの「歌手」は、あの国を、そしてあの国にいる人たちの気持ちを、今までで一番高く、それまでで一番遠くへ連れて行こうとした時代の象徴だったんだなあ。 「わかるか、希望ってのは、ピカピカしてて新鮮なときには、色までついてるんだぜ?」 「以前にカラーだったときがあるんだ、だがなくなっちまった。それがなんというか、ジャマイカらしい」 「なぜオレの国がこれからもいつも、失敗しないようにびくびくし続けることになるのか、その400年分の理由をまるごと全部書いてくれだなんて。笑えるだろ」 400年分どころか、たった15年分(1976年~1991年)でこのボリューム。(笑) そりゃ400年分となると、トリスタン・フィリップスの言うとおり、「一冊の本にはデカすぎるかも」ですな・・・。 後半は、舞台がアメリカに移動するせいもあってか、ところどころで作者のジャマイカ愛が行間にあふれ出していて、今まで特に興味を惹かれたことはなかった国だったけど、ジャマイカに行ってみたくなった。っていうか、今日にでもジャマイカ料理が食べてみたくなった。最終章のジャマイカ料理の店での会話が素敵すぎる。 こういう、異郷の地で自国の料理について思いをはせる瞬間の気持ちって、全人類、全民族共通で、どこの国の話だろうと、心の奥にごんごんと響いてくる。 物語の大半はギャングの抗争に関することで、残虐な殺戮シーンもモノローグ形式だからか、実況中継風で、リアルじゃないリアル感(TVを見ているような感じ)で、凄惨なのにどこかユーモラスだったり哲学的だったりもして驚くのだけど、いわゆる普通の物語のシーン、つまり誰かと誰かの心がつながっていく過程などを描いても、この著者は芸術的にうまくて、ビックリした。(当たり前?) 特に、ドーカス・パーマーの章。この章だけで一つの小説として完成している。私的に、今まで読んだ記憶喪失ものの中でベスト。 ジョン=ジョン・Kの屈折した愛の告白も、殺伐とした現実との対比がたまらなかった。誰かを思うだけで、ひどい世の中が美しく見えてくる、って感じ。 この作家の、こういう感じのもっと短いシンプルな小説も読んでみたいと思った。 でも、「最新作はアフリカ版 "ゲーム・オブ・スローンズ" 」と書いてあったから、たぶん、この本以上に複雑長大かも・・・? ボブ・マーリーの曲が出てくるとYouTubeで検索しまくりで、曲に詳しい人はもっとこの本を楽しめただろうになぁ、と彼の曲をほとんど知らないことを残念に思った。 しかし「No Woman, No Cry」はいつ聴いても名曲だなぁ。聴いてると優しい気持ちになる。 唯一プリンスだけYouTubeなしで脳内再生できた。姉がレコードを持っていたから。(盤面がどぎつい紫色だった) 当時は子供だったので、あのセクシーは全く理解できず、お笑いにしか見えなかったが、今は天才と分かります。この本のドーカスのアパートでプリンスを聴く場面、読んでいてすごく楽しかった。
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700ページの大作、書籍というよりは壁もしくは鈍器といったほうが良い「七つの殺人に関する簡潔な記録/マーロン・ジェイムス」です。よくこんな本出す気になったな早川書房。しかも、中は二段組みで書かれており、正味2倍の容量。そして、忍び寄る老眼によってぼやけて見えるため、攻略難易度が...
700ページの大作、書籍というよりは壁もしくは鈍器といったほうが良い「七つの殺人に関する簡潔な記録/マーロン・ジェイムス」です。よくこんな本出す気になったな早川書房。しかも、中は二段組みで書かれており、正味2倍の容量。そして、忍び寄る老眼によってぼやけて見えるため、攻略難易度が異常に高いのが特徴です。いやー、時間かかりましたよ読むの。3か月はこれにかかりきりでした。 ジャマイカの英雄、ボブ・マーリーにまつわるお話なのですが、(まつわるといっても本人は全部で10行くらいしかでてこない)、なんというか凄すぎて興奮が止まりません。「ナルコス・ジャマイカ編」とでもいえば良いのでしょうか。様々な登場人物が織りなす、スーパーバイオレンス群像劇。ドンパチとドラッグによる酩酊の中に潜む人間模様が深く、出てくるキャラクターの魅力がガルシア・マルケスmeetsNetflixとでも言いましょうか物語をグイグイとドライブしていきます。 このボリュームだからこそ出せる小説の良さがここにはあります。人と人の関係が折り重なり、事件と事件が交錯し、場所と場所を移動し、時間と時間を繋げて、ディテールまでこだわり、多層で豊穣な物語にするにはこれくらいないと中途半端になってしまうでしょう。 他の小説家もこのくらい長いのを読者無視して書きたいのでしょうが、編集やら出版社やらに反対されて折れてしまったりするはずです。そこをかいくぐってこのボリュームで出版されたことに拍手です。映画でいうと濱口竜介「ハッピーアワー」どころかタル・ベーラ「サタンタンゴ」くらいの重厚作品、皆さんたじろがずチャレンジしてください。本気で面白いです。
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ある「歌手」の暗殺未遂事件について、様々な立場の人物の視点から真相を探ってゆく。 膝の上に乗せるのにちょうどよい分厚さ。
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書店員を長く続けていると何度か立ち会う入荷した荷物の箱を開けた瞬間にビビっと感じる「これ面白そう!!!」。この本も目に入った時から危険なぐらい引き付けられた。ボブマーリー暗殺未遂事件!?刺激的なワードが躍る表紙はその文字以上に禍々しいほど極彩色なジャングルの情景。ジャマイカのぼん...
書店員を長く続けていると何度か立ち会う入荷した荷物の箱を開けた瞬間にビビっと感じる「これ面白そう!!!」。この本も目に入った時から危険なぐらい引き付けられた。ボブマーリー暗殺未遂事件!?刺激的なワードが躍る表紙はその文字以上に禍々しいほど極彩色なジャングルの情景。ジャマイカのぼんやりしたイメージが輪郭を伴ってゆく。判型からして凶悪。ずっしりとした重量感。思わず躊躇する価格。それでも手に取らずにはいられない1冊。 物語は1976年12月3日に始まる。日本では昭和51年。ロッキード事件が巷を賑わせていた年末に遠く離れた中米の地でレゲエ・スターにしてジャマイカの英雄ボブ・マーリーが襲撃された。真相が語られてこなかったこの事件を元として、襲撃したギャング、裏で操っていた政治家、暗躍するCIA工作員、傍観するアメリカ人記者、不幸にして事件を目撃してしまった女性、さらには亡霊までも含めおよそ70名以上の人物が闘い、血に塗れながら「己が見た真実」を語った怒涛の一冊。現実におこった事件をもとに、語られなかった歴史を音楽のように、呪詛のように解き明かす。(古川日出男っぽくもBLUEHARBっぽくもある味わい)それぞれが騙るおのおのの真実。決して簡潔では無い凶暴な如き厚さに慄く「七つの殺人に関する簡潔な記録」は全5章からなる壮大なドキュメント。時系列順にそれぞれの章で起こった1日の出来事を奏でる。rhyme とcrime 暴力的な文章が淀みなく畳み掛け ボーダーすれすれの罵詈雑言 言葉のリズムが身体中をぞわぞわ這い廻る 均衡取れず歪む視界 遮るのは誰だ 様々に語られる人物像 其々が騙る彼の真実 其々の歪んだエゴと愛 敬意が敵意になり 剥き出しになった狂気が暴力と共にページから臭い立つ リアルな差別 クリアな侮蔑 ページを捲る度に出てくる様々な人物達がゴリゴリのエゴイスティックな主観を呪詛のように吐き出し事件を彩る。 レストインピース 欠けたピースを探してライムは続く レストインピース 平和を求めて酒を煽る たっぷりのロックにラム 最後にライムを絞り出す 鳴り響くのは レストインピース どん底は底を知らなきゃ始まらない。ラストピース平和を作る最後の欠片 イメージだけの存在だった英雄の真実がクリアに浮かび上がる。 紙の本の重さ以上にヘビーなジャマイカ近現代史
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