1,800円以上の注文で送料無料

富士日記 新版(中) の商品レビュー

4.3

11件のお客様レビュー

  1. 5つ

    2

  2. 4つ

    6

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/01/26

夫の泰淳がはずれた車のタイヤのホイールカバーを探しにトンネルに入っていく場面(上巻)と、犬のポコが亡くなる場面(中巻)の百合子さんの感情表現の豊かさに胸を打たれ、毎回読みながら泣きそうになる。 富士山荘の静かな生活の中でも、百合子さんのパッションが感じられ、そこにとても文学性を感...

夫の泰淳がはずれた車のタイヤのホイールカバーを探しにトンネルに入っていく場面(上巻)と、犬のポコが亡くなる場面(中巻)の百合子さんの感情表現の豊かさに胸を打たれ、毎回読みながら泣きそうになる。 富士山荘の静かな生活の中でも、百合子さんのパッションが感じられ、そこにとても文学性を感じます。

Posted byブクログ

2023/04/08

やっぱり百合子さんと泰淳の距離感が好き 半年くらい前から(途中間も空けつつ)就寝前にちみちみ読んでいた 「老害にブチギレる百合子」「プリンスメロンの件」「泣き虫でずるいんだ」「女の赤い帽子が飛ばされる、いい気味」「追突事故の後遺症がとても心配」「中華料理が多い」「北海道のリスのお...

やっぱり百合子さんと泰淳の距離感が好き 半年くらい前から(途中間も空けつつ)就寝前にちみちみ読んでいた 「老害にブチギレる百合子」「プリンスメロンの件」「泣き虫でずるいんだ」「女の赤い帽子が飛ばされる、いい気味」「追突事故の後遺症がとても心配」「中華料理が多い」「北海道のリスのお土産」と覚え書きにある 思い出して笑っている 何回でも読み返したくなるエッセイ

Posted byブクログ

2022/08/21

ゆっくりゆっくり読んでいる。 巻末のエッセイにあるように、昔の人ではあるけれども、もういない人たちだけれども、生き生きとした声が感じられる。 ずっと昔の人のように書いてしまったけれど、この時代を私も子供の頃に生きていて、その空気感は、何となくわかる気がする。

Posted byブクログ

2022/05/20

ポコが亡くなる。 デデがかわいい。 リスがエサを求めてやってくるのが好き。 しまおまほさんの巻末エッセイのBに癒される。

Posted byブクログ

2022/02/13

上巻を読んだのが2020年1月なので約2年ぶり。年末年始に山梨に持っていったものの読み終わるのに1ヵ月以上かかってしまった。 日記なのでたらたら読んでもいいのですが、図書館の返却期限も過ぎてしまったので後半はほぼ一気読みでもったいない感じ。 ⁡ 『富士日記』のおもしろさはなんだろ...

上巻を読んだのが2020年1月なので約2年ぶり。年末年始に山梨に持っていったものの読み終わるのに1ヵ月以上かかってしまった。 日記なのでたらたら読んでもいいのですが、図書館の返却期限も過ぎてしまったので後半はほぼ一気読みでもったいない感じ。 ⁡ 『富士日記』のおもしろさはなんだろう。あとから推敲してあるだろうとは思うのだが、基本的には人様の日記。日々の買い出しの記録と、食事の記録(これが地味ながらおいしそう)、別荘の暮らしなので「ていねいな暮らし」というよりは散歩、家事のあいまに原稿を出しに行ったり、河口湖に遊びに行ったりするくらいで、静かな淡々した日常であるが、百合子さんの性格なのか、あまり淡々という感じでもない。 ⁡ 夕陽に向って踊ってみたり、感動すると体操してみたりする百合子さんのユニークさ。観察眼や言葉の選び方の新鮮さ。 ⁡ 上巻は別荘を建てたばかりで、新しい生活や近所の人との交流が中心だったけれど、中巻では週末ごとの行き来にも慣れ、季節の移ろいがそのまま記録されている感じ。でもこれが退屈しないんだよなあ。 ⁡ 50年前の日記なので別荘のあたりもだいぶ変わっていると思うが(別荘自体はすでに取り壊されている)、一度ゆっくり巡ってみたい。 ⁡ 以下、引用。 ⁡ 大石から見る富士山は、裾を長々と曳いて、絵葉書と同じであった。 ⁡ 今日のように陽がよくあたっていると、陽のあたっているところを往ったり来たりしているだけで、とてもうまいことをやっているような気分になる。 ⁡ 河口湖畔の町の灯りは信号のように、めくばせのように、息をしているように、見える。月夜だから、雪が残っているのだけはよくわかる。去年の正月にもこれと、そっくり同じ景色を見た。そのときも、ここで私は見ていた。 ⁡ スバルライン入口の農園は、看板をペンキ屋に頼んで書き換えたらしい。いままでは、素人の字で、すさまじいような赤い字であったが、今度はペプシコーラの広告まで入れて、バランスのとれた、丁度いいような、驚かさないような字体で書いてある。 ⁡ 無声映画を観ているように、窓の草原の雨をみながら、三人ともぼんやりとうずらそばを食べる。 ⁡ 庭には夏草が茂り、野バラは散りかけている。あざみは咲きはじめらしく蕾が沢山ある。雨なのでバラの匂いはしない。月見草が丈高くなった。ギボシが蕾をのばしている。 ⁡ ここに暮らしていると、空や空間が広いからか、雨が一日中降ると、雨の中に浸されてしまっているような気分になる。水の中に沈んでゆくようだ。 ⁡ 蜂蜜の蓋をとったら大喜びだ。最も即席で楽なんだな。嬉々としてとまっている蜂が気の毒で「それはもとはといえばお前が作ったものだよ」と教えたい。 ⁡ この蜂は昨日のと同じかしら。赤マジックで体に印をつけてみたら、ぶどうにとりついていたのも、ジャムのも、蜂蜜にくるのも、全部、この赤い印のついた一匹の蜂だった。怖るべき大食の蜂である。この私の研究発見の結果を、主人に発表したら「百合子にそっくりだな」と言った。 ⁡ K園 Lホテル ⁡ 大岡夫人はサングラスをかけて藍色の和服で運転。大岡夫人の顔色が硝子の加減か蒼白く着物が青くて、その美しいこと優雅なこと。大輪の青い朝顔のようだ!!  感動したときには体操をして現わすことにしているから、車のうしろに向かって「万歳」を三唱した。 ⁡ 静かで静かで仕方がない。本当に静かな日だ。柱やハリが乾いてきしむ音さえ、響いてドキッとする。 ⁡ 高原を吹きわたっていく風は、波の音のように聞こえるが、硝子戸を閉めておけば陽は食堂にふりそそいで、温室の中にいるようだ。 ⁡ 昨日、リスの椅子にのせておいた、いなりずし、のりまきの残りは、きれいになくなっている。和食も好きらしい。 ⁡ 椅子にのせたハンバーグステーキのはしをくわえ、重いのでテラスで休んで、それから立去った。洋食も好きらしい。 ⁡ 鳴沢のスタンドでも、おじいさんが店番していた。ガソリンスタンドは、ナラヤマのようなところなのだろう。 ⁡ 一日静かであった。今日もゆっくりとした夕焼となる。庭の雪はその間、バラ色に染まる。お礼をこめて夕陽に向って、一と踊り踊ってみせてやる。 ⁡ 庭中に月の光は一杯。おっとりと明るい。あの世があるとしたら、こんなところなのかもしれない。よく見ないで、一寸だけ見て、ナンマンダブツといって家の中へ入る。

Posted byブクログ

2021/12/04

作家夫婦の過ごす富士山麓の別荘。何気ない平凡な日常が独特の感性で瑞々しいものになる。日記文学の不思議な魅力。 作家武田泰淳の妻の百合子。富士山麓で夫と過ごした昭和39年7月から51年9月までの日記。中公文庫で全三巻。そのうち中巻は昭和41年10月から44年6月まで。 赤坂の自...

作家夫婦の過ごす富士山麓の別荘。何気ない平凡な日常が独特の感性で瑞々しいものになる。日記文学の不思議な魅力。 作家武田泰淳の妻の百合子。富士山麓で夫と過ごした昭和39年7月から51年9月までの日記。中公文庫で全三巻。そのうち中巻は昭和41年10月から44年6月まで。 赤坂の自宅と富士山麓の別荘との往復の暮らし。毎日の買い物と少しずつ変化する季節。ちょっとした自然の描写が面白い。ごくごくありふれた日常であるのにこれだけヴィヴィッドに描かれるのが不思議な魅力を創り出している。筆者独自の感性と世界観が産んだ奇跡なのだろう。 中巻の大きな出来事は愛犬ポコ。あまりに唐突な出来事に驚き。筆者の喪失感までも本作では淡々と描かれている。感情を廃した記述により大きな感情の動きがこんなにも表現できるとは。 別荘仲間で同じ作家の大岡昇平がしょっちゅう登場するのも平凡な日常に変化を添えている。気さくな友人の存在ってやはり人生に必要。

Posted byブクログ

2021/10/23

上巻で健康に不安を感じた飼犬の記述がつらかった。でも娘さんがクールで、寂しいものの、その凛々しさに救われた気がした。聡明な娘さんである。 この犬が、百合子さんがギターを弾く時に近くに来て大人しくなる様子がかわいらしい。 「この小母さん、へんな音さてだしたら、しばらく動かないか...

上巻で健康に不安を感じた飼犬の記述がつらかった。でも娘さんがクールで、寂しいものの、その凛々しさに救われた気がした。聡明な娘さんである。 この犬が、百合子さんがギターを弾く時に近くに来て大人しくなる様子がかわいらしい。 「この小母さん、へんな音さてだしたら、しばらく動かないからな。その間は叱られないし、命令もされないから、ほんとに安心」 文芸誌『海』の編集者村松さん来訪という記述があるが、これは若き日の村松友視に間違いない。 下巻は古本で見つけるまでお預けだ(意外と、なかなか見つからない)。『犬が星見た』を読んでしのごう。

Posted byブクログ

2021/09/05

やはり、いい。この何でもなさと、ドキッとするような言葉。何でもなさに向けられた飾り気のない眼差し、すくい上げられた富士山麓の動物や植物や人々。読んでいる私が山の生活を分けて頂いているような気持ちにさえなる。

Posted byブクログ

2019/12/29

相変わらず、頻繁に富士通いが続く。厳冬と云っていい年末年始に何で「山」で過ごすんだろうと思わないでなかったけど、やっぱり「山」が良いんだなと段々納得してくる。 愛犬の死、富士の姿、夕焼け、星空の短い記述を淡々と読み進む。文章のリズムが急いで読むことを拒んでくる。 基本はホントに日...

相変わらず、頻繁に富士通いが続く。厳冬と云っていい年末年始に何で「山」で過ごすんだろうと思わないでなかったけど、やっぱり「山」が良いんだなと段々納得してくる。 愛犬の死、富士の姿、夕焼け、星空の短い記述を淡々と読み進む。文章のリズムが急いで読むことを拒んでくる。 基本はホントに日誌だから、食材の買い物や三度のご飯がいつも書かれてるし、事件や謎や問題が起こるわけでないので、ゆっくりゆっくり読み進む。 旦那の泰淳さんについての失礼な電話に対し、怒鳴り返す。お嬢さんとそのお友達の為に伝言せず出かけて心配した泰淳さんに怒られる。百合子さんんも人柄が段々立ち上がってくる。小川洋子さんのようなファンが多いのも納得するなあ。 大岡昇平夫妻や地元の石家やガソリンスタンドの人達との交流。リス、イタチ、四十雀もよく山荘に訪ねてくる。 (下)も読まなければね。

Posted byブクログ

2019/08/21

タイトルだけ知っていて、なかなか機会がなかった。 これがちっともさくさく読み進まない。日常が細やかで、焦って読む本ではないという感じ。それでも日記のなかでは山に来れない数日とか数ヶ月が飛ぶように過ぎていくから、いくつもの季節を先を越される。 いちばん最後の行はこんなふう。 「楽し...

タイトルだけ知っていて、なかなか機会がなかった。 これがちっともさくさく読み進まない。日常が細やかで、焦って読む本ではないという感じ。それでも日記のなかでは山に来れない数日とか数ヶ月が飛ぶように過ぎていくから、いくつもの季節を先を越される。 いちばん最後の行はこんなふう。 「楽しい旅行だった。糸が切れて漂うように遊び戯れながら旅行した。」 これは別のエッセイ"犬が星見た-ロシア旅行"のこと。 .

Posted byブクログ