レッドアローとスターハウス 増補新版 の商品レビュー

原武史(著者)

2022/09/24

西武鉄道は戸建ての宅地開発に積極的でなく、結果として公団による大規模な団地開発が相次ぐ。

団地には生活に余裕があるホワイトカラー層が住み、そこでは共産党の影響を強く受けた自治会活動が盛んになる。

独自の空間が政治を形成していく、原武史ならではの空間政治学の試み。

西武沿線の民ですが、まだ10年くらいしか住んでないので、知らない事ばかりで衝撃を受けました。以前は25年ほど京王沿線に住んでました。かなり雰囲気違います。

確かに池袋線と新宿線に挟まれた空間って、西武に生活を支配されてる感があって、独特の空間だなと思います。

駅前の道が狭いのにも理由があったんですね。

2020/11/30

西武線沿線に咲いたあだ花。団地の時代と革新勢力。テツにして政治思想史を専門とする筆者が描く昭和の一面。

筆者の経歴と現在の専門そして趣味が見事に融合した三位一体の作品。

団地という均質な世界。奇妙な平等主義と住民自治それによる革新勢力の台頭。親米反ソが信条だった西武グループの創始者堤康次郎、皮肉にも西武線沿線に多くの団地が作られる。アメリカの文化よりも共産圏と類似の世界が広がるという皮肉。

学者の著作、研究といっても大上段に構えたものではなく自分の幼児体験と趣味、そんなものを融合させて1つの作品に仕上げるところが筆者らしい、地に足のついた思考過程に関心する。

団地生活の経験もあり、今は西武線沿線に住むということもあり、実に興味深く読むことができた。