日米地位協定 の商品レビュー
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1952年に発行した日米行政協定は、自民党反岸派が協定を全面改定しなければ安保改定を支持しないという状況を察知したマッカーサーの根回しもあって、全面改定、日米地位協定となる。ところが、そこには秘密のうちに日米行政協定における米軍の地位と特権を温存するという議事録が残されていた。地位協定の中でも、米軍はとりわけ裁判管轄権にこだわる。それは外国で捕まった米兵の人権が守られるかどうかに米国世論が敏感だからである。対等な地位協定の実現のためには、日本が国際社会並みの人権意識を持つことや難民保護を実現しなければならないと筆者は言う。これは私の勘違いかもしれないが、状況は幕末の不平等条約に似ているのではないだろうか。
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本書は今年読んだ本の中でも図抜けている。私は本書が、日米同盟並びに日米地位協定に対する国民の考えに根本的な変化を引き起こす力を持っているとすら言いたい。もし今年、自分の周りの人に読んでもらいたい一冊を選ぶならこれを選ぶだろう。 筆者はあとがきで沖縄への感謝を口にする。 私は、...
本書は今年読んだ本の中でも図抜けている。私は本書が、日米同盟並びに日米地位協定に対する国民の考えに根本的な変化を引き起こす力を持っているとすら言いたい。もし今年、自分の周りの人に読んでもらいたい一冊を選ぶならこれを選ぶだろう。 筆者はあとがきで沖縄への感謝を口にする。 私は、筆者がこのあとがき部分を含めた本書全体を通して読者対し非常に大きな配慮をしたことを感じた。筆者の配慮を台無しにしないためにもそれについて多くは語るまいが、その配慮があってこそ本書はその読者がどんな立場にある人だったとしても読みやすく、価値のあるものになっていると思う。 ぜひ皆さん読んでください。
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われわれは在日米軍の基地問題について、あまりにも無関心すぎるのではないか。騒音被害などを日常的に受けている周辺住民は別にして、わたし自身を含む国民の大半は、どこか「対岸の火事」のような存在としてしか認識していないように感じる。このままではよくないと思い、第41回石橋湛山賞を受賞す...
われわれは在日米軍の基地問題について、あまりにも無関心すぎるのではないか。騒音被害などを日常的に受けている周辺住民は別にして、わたし自身を含む国民の大半は、どこか「対岸の火事」のような存在としてしか認識していないように感じる。このままではよくないと思い、第41回石橋湛山賞を受賞するなど評価が高い本作で、在日米軍の地位の根拠でもある日米地位協定について学んでみた。読んでみてわかったのは、「日米地位協定合意議事録」という巨大なブラック・ボックスの存在である。日米地位協定がいわば「不平等条約」であることは広く知られているが、著者いわく、その根源にはこの議事録の存在があるという。わたしは毎日新聞を熱心に読み、週刊誌などにも比較的よく眼を通すが、この議事録のことは本作を読んではじめて知ったし、ほかのメディアで見た記憶もない。なぜほとんど報じないのかメディアの態度を不思議に思うが、つい最近まで非公開であったというから、それ以上にまるでひた隠しにするような政府の姿勢には腹が立つ。またそもそも、地位協定そのものとは違い、合意議事録は国会において何ら正式な承認の手続を経ていない。このような文書が強い影響を持っていることは、ひいては国会の形骸化にも繫がり、民主主義の危機とも言えるのではないか。著者は「終章」で合意議事録の撤廃を主張しているが、そこまで踏み込まないにせよ、やはりもうすこし情報を公開して、国民の間で広く受容されることが必要なのではないか。基地問題などもそこでようやく深い議論ができるようになるだろう。そのためにも、本作はもっと多くの人に読まれてほしい。
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日米地位協定に関する本を読んでみたいと思っていたところ、書店で見かけて購入。 本書のとおりであるならば、日本政府の対応は当初、少しでも日本に不利な部分を取り戻そうとしていたのに対し、近年は、改定の努力はしていない上に国民感情を宥めることに腐心しているだけと思える。また、アメリカの思うがままにされている印象を受ける。 自分自身無知であったが、日本国民はもう少し、日米地位協定についての理解を深める必要があるだろう。
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【合意議事録という不誠実】 沖縄で事件・事故が起こるたびに在日米軍の権利を保証する日米地位協定の改定が叫ばれてきたが、本書はそれでは問題は解消され得ないと主張する。なぜか。 日米地位協定は1960年の日米安保改定時に、占領期の米軍特権が色濃く残る日米行政協定を改正したもの。自国の...
【合意議事録という不誠実】 沖縄で事件・事故が起こるたびに在日米軍の権利を保証する日米地位協定の改定が叫ばれてきたが、本書はそれでは問題は解消され得ないと主張する。なぜか。 日米地位協定は1960年の日米安保改定時に、占領期の米軍特権が色濃く残る日米行政協定を改正したもの。自国の利益を最大限追求するアメリカをなんとか説得するために、日本政府が「合意議事録」という「密約」を取り交わしてようやく改正にこぎつけたという経緯がある。 文言上は「改正」されたのだが、実際は「合意議事録」によって占領期そのままの米軍の排他的な自由運用は担保されてきた。しかもそれは国民の与り知らぬところで2000年代初頭まで非公開とされてきたのだ。だからこそ著者は、この不誠実な「合意議事録」こそまず撤廃すべきだと主張する。 では、どうすればそれができるかというと世論が動かすしかないという。世論とはつまり私たちのこと。折しも衆院選が近い。各政党・候補者の公約を吟味しつつ投票行動で示していきたい。(さとちん/本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会)
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日米同盟を扱う本は多々あるが、本書は、同盟の骨格を為す日米安保条約の更に奥の院である日米地位協定の成立経緯を紐解き、最近まで明らかになっていなかった合意議事録こそが第一次安保の日米行政協定下における特権構造を維持するシステムの核心であり、外務省・防衛省など政府がひた隠しにしてきた...
日米同盟を扱う本は多々あるが、本書は、同盟の骨格を為す日米安保条約の更に奥の院である日米地位協定の成立経緯を紐解き、最近まで明らかになっていなかった合意議事録こそが第一次安保の日米行政協定下における特権構造を維持するシステムの核心であり、外務省・防衛省など政府がひた隠しにしてきたことを明るみに出す名著。 終戦時から米軍駐留の歴史や特権成立の歴史を簡潔にまとめ、これが第二次安保・沖縄返還時に合意議事録制度として成立し、見かけ上は改善したように見えて実態は変わってなかった事実を指摘。 また、その頃までは協定改正や基地返還に取り組んできた外務省が、冷戦の終結や米国における対日感情の悪化により、フィリピンのように米軍撤収となることを恐れ、当時の防衛庁に引きずられる形で渋々運用改善に応じてきたという歴史も面白い。 さらに、ドイツやイタリアとの比較や、それぞれの置かれた環境から単純な比較は困難であることも誠実に指摘。 合意議事録を撤廃という結論・提言はやや乱暴に過ぎて実現可能性は低いようにも思えるが、アカデミズムの成果として闇を明るみに出したことは見事。 今後、米中対立、沖縄世論の硬化、長期低落の日本の国力といったことを見据えて国民全体で考えていくべき課題であるという認識を広め、政府・自治体に誠実な対応を求めていくことが重要と思う。 なお、筆者は、これまでこの問題がジャーナリズム主導で扱われ、アカデミズムの怠慢であったと指摘するが、とんでもない。東大含めて軍事研究はしてはならないという思考硬直の中で当然のことだったと思う。こうした中でこれを書き上げた筆者の努力と勇気に敬服。今後は、左右の思想対立はあっても、こうやって重要問題を議論できる学界になって行ってほしい。
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日米安保条約の運用を規定した下位の規約として日米地位協定があることは周知の事実だが、その核心は国会審議さえ経ていない合意議事録なる密約であることが、巷間囁かれる陰謀論ではなく研究成果として明らかにされたことは非常に意義がある。惜しいのは、もともと専門用語が頻出する類の本なのに、と...
日米安保条約の運用を規定した下位の規約として日米地位協定があることは周知の事実だが、その核心は国会審議さえ経ていない合意議事録なる密約であることが、巷間囁かれる陰謀論ではなく研究成果として明らかにされたことは非常に意義がある。惜しいのは、もともと専門用語が頻出する類の本なのに、ところどころ文意が辿りづらい長文が見られた点。改訂の際には修正をお願いしたい。
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難しい言葉ばかりで頭が混乱するかと思いがち、 んなこたあ全くない。私達の生活と地続きな話だ。 究極、日本よ、この状態や立ち位置でいいの? という疑問も投げかけてくる本。宿題も多い。 国を愛する者こそ読むべき一冊。 沖縄返還〜戦後の政治的動きはもちろん、 特にここ30年の米軍...
難しい言葉ばかりで頭が混乱するかと思いがち、 んなこたあ全くない。私達の生活と地続きな話だ。 究極、日本よ、この状態や立ち位置でいいの? という疑問も投げかけてくる本。宿題も多い。 国を愛する者こそ読むべき一冊。 沖縄返還〜戦後の政治的動きはもちろん、 特にここ30年の米軍基地をめぐる日米の政治的な動きや モチベーションに目から鱗。 在日米軍基地問題は、「沖縄の」問題ではないのに、 そう切り取られてきた経緯がよく分かる。 結局国レベルの政治の話で、 地元がずっと置いてきぼりなことに改めてため息。
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1960年に締結された合意議事録の方が、米軍の優越の根源的な原因であることを殆ど認識していなかった。この破棄無くして平等化は実現できそうに無い。マスコミ等はもっとこの問題を取り上げるべきではないか。 それにしても自民党はこの問題に何故こんなにも弱腰なのか、本書でも指摘されているよ...
1960年に締結された合意議事録の方が、米軍の優越の根源的な原因であることを殆ど認識していなかった。この破棄無くして平等化は実現できそうに無い。マスコミ等はもっとこの問題を取り上げるべきではないか。 それにしても自民党はこの問題に何故こんなにも弱腰なのか、本書でも指摘されているように、世界情勢が改訂に適した時期もあったと思われるが、そのような動きはなかった。 政治家の怠慢が最大の問題であろう。
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在日米軍との関係を定めた日米地位協定。多くの摩擦、紛争の原因はこの協定にあるのだろうが、日米安保条約に比べるとあまり知られていない。歴史、ドイツやイタリアとの比較など。日本の防衛体制の根本に関わる非常に重要なテーマ。 他国と米軍の関係の比較、歴史を交えた日米地位協定の解説。テー...
在日米軍との関係を定めた日米地位協定。多くの摩擦、紛争の原因はこの協定にあるのだろうが、日米安保条約に比べるとあまり知られていない。歴史、ドイツやイタリアとの比較など。日本の防衛体制の根本に関わる非常に重要なテーマ。 他国と米軍の関係の比較、歴史を交えた日米地位協定の解説。テーマが奥深いだけに自分の少ない知識ではちょっと難しかった。 アメリカは国務省と国防省、日本は外務省と防衛省で意見が相反することが問題を大きくしているように思える。 国民に反発されないように密約を結んだり、議論を避けてきたツケが現在につながっているように思う。 沖縄の基地問題を知る上でも良い1冊。
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