あなたの右手は蜂蜜の香り の商品レビュー
雨子は幼いころ不用意に子熊に近づいたことで母熊に襲われそうになり、間一髪で猟友会が母熊を射殺して助けられたという経験を持つ。 雨子は罪悪感を抱き、動物園で保護されている子熊をもう一度山へ帰すことだけを目的に生きていくようになる。 過激な動物愛護派の話を聞いているようであまり共感...
雨子は幼いころ不用意に子熊に近づいたことで母熊に襲われそうになり、間一髪で猟友会が母熊を射殺して助けられたという経験を持つ。 雨子は罪悪感を抱き、動物園で保護されている子熊をもう一度山へ帰すことだけを目的に生きていくようになる。 過激な動物愛護派の話を聞いているようであまり共感できなかった。 人も動物も命は平等なのは間違いなくそうだ。 むやみに動物を傷つけたり、装飾品のために動物を狩ったりするようなことは許されない。 動物を守っていく活動が必要な場合もあることも理解できる。 しかし、生き物にはそれぞれの生き方があるし、人にはそれぞれの生活がある。 生きるために動物を狩ることもあるし、生活のために動物を駆除しなければいけないこともある。 過激に動物愛護を叫ぶ人たちは自分の正義だけを絶対視して、ほかの人の立場に目を向けていない。 雨子はまさにそういう人間だ。 過激な団体のように動物愛護を他人を攻撃するための手段にするようなことはしないが、「命は大事」という善に憧れた子どもの純粋さを持ったまま大人になってしまう。 彼女の視線は、母親を失わせてしまった子熊にしか注がれていない。 子熊のために人生を捧げ、子熊とは関係のない人間たちとの関係は軽視する。 子熊以外の動物との触れ合いは一歩でも子熊に近づくための手段でしかない。 ある特定の命を大事にするあまり、自分も含めた他の命を蔑ろにしていることに気づかないだろうか。 猟友会を訪れたとき、雨子は自分を助けてくれた猟師に感謝しつつも、そのシーンは彼らが命を奪う悪役のように描かれ、雨子も彼らを蔑むかのような態度をとる。 私が言いたいのは恩知らずということではない。 自分が安易に熊に近づいたせいで、猟師に不要な殺生をさせてしまったという発想には至らないだろうか。 動物愛護の点からみれば、子熊を山に返すという悲願が達成されれば幸せな結末になるのかもしれない。 でも、そこに至るまでに多くのものを捨ててきた雨子の幸せは? 人の立場から読んでしまった私にはとてもハッピーエンドとは思えなかった。 ただ、読んでいて雨子の子熊に対する気持ちが嘘ではないということだけはわかった。 納得できないし共感はできないが、彼女のことは少しだけ理解できる。
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あらゆるものの一生について考えさせられる話。熊を見たくて飛び出した女の子目線。母熊を亡くした子熊が、動物園に引き取られて生きていくが、女の子は熊を動物園から逃がそうとする。そこからいろんな物語が始まっていく。
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頑なだった雨子が、年が経つにつれて少しずつ人との関わりを持てるようになる。幼くて気付けなかった周りの優しさに少しずつ気が付いていく。でもやっぱり「あなた」から逃れられない。 雨子は突き進むしかなかったのか?と思うけど、「どうして」に対して見て見ぬ振りをしない、不器用とさえ思える雨子の生き方が胸に刺さった。温かいというよりは、もっとひりひりとした読後感。
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那須ブックセンターで表紙買いした本。出会ったタイミングも何もかも運命って思った本。 こんなに読み終わりたくないと思った本ははじめてだった。結末は何ともいえない感情になったけど本当に出会えてよかった大好きなお話。
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自分のせいで母熊が殺されて、動物園に暮らす小熊=「あなた」のことを考え続け、北海道から仙台の動物園へ定期的に会いに行き、「森に帰れる日を待っていて」と伝え続ける雨子。進路も生活も10年以上、全てはあなたの近くに居られるため。そしてあなたの近くへ。大切な幼なじみにもあなたを巡って再...
自分のせいで母熊が殺されて、動物園に暮らす小熊=「あなた」のことを考え続け、北海道から仙台の動物園へ定期的に会いに行き、「森に帰れる日を待っていて」と伝え続ける雨子。進路も生活も10年以上、全てはあなたの近くに居られるため。そしてあなたの近くへ。大切な幼なじみにもあなたを巡って再開。独特の登場人物が切なく魅力的で、結末に呆然となりました。
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本当に不思議な本だったけど大好きになった一冊。とても掴みどころなどなくて、でも心地よい、なんとも言えない。 著者は脚本家で「町田くんの世界」を手がけたと書いてあって妙に納得。タイトルに惹かれてふと読み始めた本だったが予想以上に良かった。 品なく言ってしまえば異種間交流とか、人×人外だけどそれ以上にここまで淡々とした語り口なのにこの読み応え。 主人公の雨子が幼い頃からずっとブレずに、「あなた」を愛し続けたままストーリーは進んでいく。まさか本当にあなたを連れ出してしまうなんて、そして故郷の森に帰してしまうなんて。 雨子の人生は、あなたを中心に据える日々はここでぷっつりと終わる。そのあっけなさに、やる瀬なさにどうしようもなくてまた泣いた。 那智くんとの、アパートでの指輪のシーンもとても悲しくて、ここもポロポロ泣いてしまった。 那智くんだって、雨子のことを大切にしたいと、他のなによりも愛していたんだ。 でも、筆者が那智くんのことも最後まで大切に描いてくれて良かった。そこにも救われました。 また別の作品も読んでみたい。
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かわいい子ぐまに駆け寄った雨子。その近くいた母ぐまが猟友会のハンターに打ち殺された。 子ぐま「あなた」から母親を奪ったことに責任を感じた雨子は、保護された動物園から「あなた」を逃がすために飼育員になるのだが…。 「この世のあらゆることは、全部思い込みだよ」 「あなた」と心を通...
かわいい子ぐまに駆け寄った雨子。その近くいた母ぐまが猟友会のハンターに打ち殺された。 子ぐま「あなた」から母親を奪ったことに責任を感じた雨子は、保護された動物園から「あなた」を逃がすために飼育員になるのだが…。 「この世のあらゆることは、全部思い込みだよ」 「あなた」と心を通わせていると感じている雨子も「思い込み」のような気がするし、故郷に帰すことは熊のためというのも「思い込み」のような気もする。 「誰かを本気で救いたいなら、大切なものを捨てなきゃいけないよ」 「あなた」を逃がすという目的のためだけに生きることは難しいし、それを実現させることはもっと難しい。実現した雨子は恐ろしい子。 帯に「心がぼうっとあたたまる、究極の愛の物語」とあるけれど、私には「雨子を大切に思っている全ての人たちの思いを捨てて、思い込みに突っ走る困った子の物語」だ。
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最後まで、迷いながらもブレることのない雨子の意志は、後ろに苦しみや贖罪のようなものを抱えているからこそ、読み手もなんだかずーっとモヤモヤと苦しい。終始そんな想いを抱えながら読みました。 表紙から想像するような、かわいくてハッピーなお話ではなかったけど、読み応えはある。最後までな...
最後まで、迷いながらもブレることのない雨子の意志は、後ろに苦しみや贖罪のようなものを抱えているからこそ、読み手もなんだかずーっとモヤモヤと苦しい。終始そんな想いを抱えながら読みました。 表紙から想像するような、かわいくてハッピーなお話ではなかったけど、読み応えはある。最後までなにが正解だったのかもわからないし、その後のあなたと雨子が気になるけど、ここで終わったからこそよかったんだろうなと。そんな想像をしてしまう最後でした。 二人とも、幸せになってほしい。そう願わずにはいられません。
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鳩にエサをあげてはいけないのか?死んだネコは汚いのか?虫は殺しても良いのか?命に軽重があるのか?動物を食べることは?動物園の存在意義は? そして、動物園の動物は幸せか否か。 生き物が好きな人が、必ず直面したことがある疑問を直球で投げかけてくる。正解はないし、本書の中でも多様な回答...
鳩にエサをあげてはいけないのか?死んだネコは汚いのか?虫は殺しても良いのか?命に軽重があるのか?動物を食べることは?動物園の存在意義は? そして、動物園の動物は幸せか否か。 生き物が好きな人が、必ず直面したことがある疑問を直球で投げかけてくる。正解はないし、本書の中でも多様な回答はあるが、誰も正解を言わない、言えない。しかし問い続けることを投げ出してはいけないと思った。 動物園の裏側が見れたのは嬉しい気持ちになれたし、後半怒涛の伏線回収やハラハラの展開もすごく面白かった。親子の確執を含め色んなテーマが伏流しているのに、どれも半端な感じになってなくてすごい。 帯にあるような、心がぽうっと温まるなんて生優しいもんじゃなかったけど、この本を読めてよかった。
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1頭の子熊の熊生を歪めてしまった女の子は、その日から独りで、ある願いを叶えるためにだけ生きていく。 寓話だけど、雨ちゃんに同調出来なかった。 「あなた」の声しか、もう届かなかったのかな。 「あなた」が、大切な家族と「再会」出来たらいいなと思う。 ガラスを引っ掻く音みたいな気持...
1頭の子熊の熊生を歪めてしまった女の子は、その日から独りで、ある願いを叶えるためにだけ生きていく。 寓話だけど、雨ちゃんに同調出来なかった。 「あなた」の声しか、もう届かなかったのかな。 「あなた」が、大切な家族と「再会」出来たらいいなと思う。 ガラスを引っ掻く音みたいな気持ちが、あとに残った。
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