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移民棄民遺民 の商品レビュー

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4件のお客様レビュー

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2024/10/07

アジア、特に中華圏の社会・政治・文化事情に通暁するノンフィクション作家、安田峰俊氏のルポルタージュです。「無国籍者」となった女子大生。「夜の住人」となった軍閥高官の孫など、個性ある人物が登場します。 本書は中国を中心に活躍されているノンフィクション作家、安田峰俊氏のルポル...

アジア、特に中華圏の社会・政治・文化事情に通暁するノンフィクション作家、安田峰俊氏のルポルタージュです。「無国籍者」となった女子大生。「夜の住人」となった軍閥高官の孫など、個性ある人物が登場します。 本書は中国を中心に活躍されているノンフィクション作家、安田峰俊氏のルポルタージュです。「無国籍者」となった女子大生。漢族によって抑圧されているウイグル族の青年。「夜の住人」となった軍閥高官の孫…。とエッジの効いた人物たちが目白押しです。 僕は安田氏の著作は『和僑 農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人』(角川文庫)を読んで以来、僕の中に幼少時からある「中国趣味」と安田氏がメインフィールドとされている中国を中心としたアジア圏であることと重なり、彼の地が持っている獰猛なエネルギーを伴った「うねり」を独特の視点と筆致で今回も切り取ってくれております。 本書に登場する「境界の民」は「国家」という枠組みを一切取り払った場所で生きている人々を指す安田氏の造語であり、自分が20歳を過ぎて初めて「無国籍者」だと気づいた日本在住のベトナム難民2世の女子大生。日本と新疆ウイグル自治区のウイグル人。ここのくだりではマジョリティーである漢族に対して憤りを口にするウイグル族の青年の存在感が強烈でした。 日中ハーフのレゲエをこよなく愛する女子学生。中盤以降で圧巻のクオリティーを誇る「ヤマモト」と名乗る軍閥高官の血を引く日系華人の男が壮絶なまでの紆余曲折を経て上海の地で風俗店を経営するまでの軌跡などが紹介されております。 また、台湾の議事堂を占拠したことでも話題となったヒマワリ学連を潜入取材し、国民全体が「境界の民」となっている彼の地の人々へと思いをはせる…。彼らの言葉を丁寧にくみ取り、深い取材に裏打ちされた丁寧な文章と、テーマが今回も僕の「ツボ」でありまして、安田氏にはこれからもクオリティーの高い作品を生み出していっていただければと、そのようなことを願ってやみません。 ※追記 本書は2019年4月24日、KADOKAWAより『移民 棄民 遺民 国と国の境界線に立つ人々 (角川文庫)』として加筆修正の上、文庫化されました。

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2021/02/22

とても面白かった。 ベトナム難民2世、ウイグル、台湾ひまわり学運などどれも今読んでも時勢に合う新鮮な話題で、筆者の先見の明に敬意! ひまわり学運のときに筆者が感じた「情緒的な感情の揺れ」も興味深かった。 もちろん、記者はある対象に強い思い入れを持ちすぎると公正な取材・執筆ができ...

とても面白かった。 ベトナム難民2世、ウイグル、台湾ひまわり学運などどれも今読んでも時勢に合う新鮮な話題で、筆者の先見の明に敬意! ひまわり学運のときに筆者が感じた「情緒的な感情の揺れ」も興味深かった。 もちろん、記者はある対象に強い思い入れを持ちすぎると公正な取材・執筆ができなくなるし、常に冷静に観察することを忘れてはいけないと思う。駆け出しながら同じ職業についた私自身、それを日々痛感するし忘れてはいけないと思っている。 でも、そんな職業的倫理と、個人的な好意を抱くことって両立し得ないのだろうか? 自分の心から応援したいものに蓋をし、永遠に当事者ではなく傍観者であり続けないといけない。 一生何かにフルコミットできない。 もし記者の正しい生き方がそれであるのなら、一抹の寂しさが拭えないな。 駆け出しの若者として。

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2019/11/09

安田峰俊(1982年~)は、立命館大学人文科学研究所客員協力研究員も務める、ノンフィクション作家。立命館大在学中に中国・深圳大学に交換留学した経験から身に付けた流暢な中国語を駆使した、中国関連の書籍や雑誌媒体、テレビ等での活動で特に注目されている。2018年出版の『八九六四 「天...

安田峰俊(1982年~)は、立命館大学人文科学研究所客員協力研究員も務める、ノンフィクション作家。立命館大在学中に中国・深圳大学に交換留学した経験から身に付けた流暢な中国語を駆使した、中国関連の書籍や雑誌媒体、テレビ等での活動で特に注目されている。2018年出版の『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』で城山三郎賞及び大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。 本書は、2015年に単行本で出版された『境界の民』を加筆修正の上、2019年に文庫化されたものである。 本書のテーマは題名通り「境界の民=マージナル・マン」であり、取り上げられているのは、在日ベトナム人、日本ウイグル協会、日本人と中国人の間に生まれた女性と幼少期から日本で育った中国人、中国の国共内戦に敗れた国民党高官の息子、台湾のヒマワリ学連等、日本及び著者が得意とする中国に関わる「境界の民」たちである。 著者は文庫版あとがきで、「当時の自分はよくも、こんなに扱いが難しい題材を選んだものである-。」と語っているのだが、確かにこのテーマは、難しくも、現代の世界において、最も重要なテーマのひとつである。日々の国際報道を見ていても、米国や欧州各国での移民・難民の排斥を唱えるナショナリズム/ポピュリズムの高まり、香港や台湾での中国の支配力(影響力)強化に対する反対運動、中東シリアの難民問題、ミャンマーの少数民族ロヒンギャ問題などが取り上げられない日はなく、多くの国際的な問題の根源(というか、その結果)はここに見られるとも言えるのだ。 日本の人びとは、世界の他の国々に比べれば概ね単一の民族(琉球の人びとやアイヌ民族はもちろんいるが)による、海に隔てられた島国であることから、こうしたテーマに対する感度が相対的に低いと思うのだが、最早、我々日本人だけがこうした問題から目を背けていることはできない。 最近は、身近にも移民や日本人と外国人の間に生まれた人びとが間違いなく増えているが、我々日本人にとって大事なことは、彼らを単なるステレオタイプで捉えるのではなく、彼らを理解するように努めること、更には、それを基に世界の人びとを想像することなのではないだろうか。 世界を偏狭なナショナリズム/ポピュリズムが席巻する今こそ、手に取る価値の大きい一冊と思う。 (2019年11月了)

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2019/08/06

国境の隙間にいる人たちを取材した旅の記録。埼玉のベトナム人タウン、新疆ウイグル自治区での中国共産党の弾圧、上海の日本人社会、上海の日本人向け風俗店を営む中国人マスターの一族の話、国自体が「隙間」の存在である台湾、という形で章が立てられている。 取材されたのが2013・2014年...

国境の隙間にいる人たちを取材した旅の記録。埼玉のベトナム人タウン、新疆ウイグル自治区での中国共産党の弾圧、上海の日本人社会、上海の日本人向け風俗店を営む中国人マスターの一族の話、国自体が「隙間」の存在である台湾、という形で章が立てられている。 取材されたのが2013・2014年で初出が2015年。4年を経て新疆ウイグルでのウイグル人達への監視体制の強化が進み、台湾の政治情勢よりも香港への中国の関与が大きくなっている。 現在コンビニで働く外国人のアルバイトの人たちの在留資格で出来るかはわからないが、仮に一部の人たちが永住するといわば移民一世となる。彼らの子ども達が社会人になる頃はどうなるのだろうか。

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