路地裏の子供たち の商品レビュー
わたしは子どもの頃シカゴに住んでいた(住んではいなかった)。鉄格子で覆われた窓が並ぶ路地裏をボロをまとった老婆が歩いていた(老婆はいなかった)。ジョナサンという白人の友達と老婆に果物を投げてからかっていた(ジョナサンという友達はいなかった)。川沿いに鉄屑を集めているゴミ屋敷があっ...
わたしは子どもの頃シカゴに住んでいた(住んではいなかった)。鉄格子で覆われた窓が並ぶ路地裏をボロをまとった老婆が歩いていた(老婆はいなかった)。ジョナサンという白人の友達と老婆に果物を投げてからかっていた(ジョナサンという友達はいなかった)。川沿いに鉄屑を集めているゴミ屋敷があってそこに忍び込み古い自転車のホイールでキャプテンアメリカの盾を作って遊んだ(ゴミ屋敷などなかった)。叔父さんのトムがハイウエイをよくドライブに連れて行ってくれた(叔父さんもいなかった)。叔父さんはわたしをかばって車に引かれて死んでしまった(死んではいない)。 「シカゴ育ち」そして、わたしの人生ベストに間違いなく入る「僕はマゼランと旅をした」が邦訳されているスチュアート・ダイベックの初期短編集がこの「路地裏の子供たち」だ。ダイベック作品のノスタルジックなリアリティは、わたしはシカゴに行ったことすらないのに、そこに住んでいて、そこで子供じみた悪さをし、大人になりたくてビールを飲み、泣き、笑い、生きていた錯覚を起こさせる。文章にシンクロして本の中に入っている感覚とでもいえば良いのだろうか。先の2作は洗練された感じもあるのだが、この初期作品はもっとこうざらざらした肌ざわりの残る、その場所その時代の息遣いが直接伝わってくる傑作だ。そして、時代や場所を超えてわたしが忘れ去った、無くしてしまった大切なことを届けてくれる稀有な書き手がダイベックだ。この本を読んで皆さんも自分の子供時代へ旅してもらえればと思う。 #2019 #SturatDybek
Posted by
なかなかに重くて、読み進むのが辛かった。ずっと悪い夢を見ているかのような。陰鬱な、退廃的な雰囲気なんだけど、死を感じることで返って生が強烈に感じられるような、でもやはり死の陰につきまとわれてるような。 嫌だったら読むのやめたらいいのに、やめようかな、と思うとなんか気になるフレーズ...
なかなかに重くて、読み進むのが辛かった。ずっと悪い夢を見ているかのような。陰鬱な、退廃的な雰囲気なんだけど、死を感じることで返って生が強烈に感じられるような、でもやはり死の陰につきまとわれてるような。 嫌だったら読むのやめたらいいのに、やめようかな、と思うとなんか気になるフレーズがあったり、ほかの短編のエピソードとのリンクが興味そそられたりして、結局読み切ってしまった。 これは、ストーリーを追うよりは、言葉を味わうものなんだろう。そして、自分の中の暗部と向き合って、何だよ、と思いながら、生きてくための暗い力を得るものなんだろう。
Posted by
汚くて閉塞感漂う路地裏に生きる子供たちの話。 今でも探せばどこかにあるような、懐かしいような、そんな場所。
Posted by
- 1