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声の物語 の商品レビュー

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18件のお客様レビュー

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2019/07/20

【選挙とSFサスペンス】 この本に描かれたディストピア。技術的には可能だし、かの国の潮流的にはありえそうだと感じてしまったのは自分だけでしょうか。 《声の物語 クリスティーナ・ダルチャー著》 舞台は近未来のアメリカ。泡沫候補と思われた人物が大統領に就任。ある政策がとられた。その...

【選挙とSFサスペンス】 この本に描かれたディストピア。技術的には可能だし、かの国の潮流的にはありえそうだと感じてしまったのは自分だけでしょうか。 《声の物語 クリスティーナ・ダルチャー著》 舞台は近未来のアメリカ。泡沫候補と思われた人物が大統領に就任。ある政策がとられた。その政策とは、女性の言語を強制的に制限するといったもの。アメリカで生活するすべての女性に、100語以上喋ると強力な電流が流れるブレスレットが装着される。『あらゆる男の頭はキリスト。あらゆる女の頭は男である』、『男が働き、女は慎ましく家を守るもの』。聖書にともにあった古き良き生活に戻ろうではないかという思想のもと、政策は実行される。主人公は失語症の研究をしていた学者の女性ジーン。あるとき、事故で脳に損傷を負い、失語症になってしまった大統領の兄の治療をジーンは依頼される。そして、治療の見返りにある条件を提示されるのだが…。 女性の一日発語量は約1万6千語とされるなかで100語の制限。 LGBT、不倫(女性のみ)、未成年の不純異性交遊(女性のみ)は異端とされ、強制収容所へとおくられる。 息苦しくて陰鬱な怖さを感じました。 ところどころで頭に浮かぶ既視感が、その怖さを倍増させます。 作中、主人公ジーンの『わたしは彼に投票しなかった。そもそも投票に行かなかった。わたしにとっては今度の試験の方が大切だったのだ。そして、わたしたちにとって、その日が終わりの始まりになった』といった回想が深い。 ひとりの声の影響なんてたかが知れているのかもしれないけれど、やはり『投票』という声は放棄してはならないと思いました。

Posted byブクログ

2020/11/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「イタリアの女たちは両手と全身と魂を使って話し、しかも歌を歌うのだ。」 --- ※この感想には一部性的表現が含まれます。ご注意ください。 SFが好きだ。 小学生の頃は星新一を、 中〜高校ではラノベやミステリーに浮気しつつも 大学では米文学のSFを専攻した。 SFの、きたるべき未来を先読みしているような 絶望感と、リアルさが好きだ。 SFでは、目的を見失い、軽率に人を愛し、運命に抗おうとする。そんな人間の弱さが好きだ。 その中にかすかに光る、生き残るための希望や、合理的な機械が必要としないこと(愛や、歌や、冗談や、表現)が好きだ。 どんな病原菌や武器よりも、 言葉を封じることは人間にとってつらいことかもしれない。 感情は心の泉が枯れない限り、 溢れ続けるものだから。 あらすじはこうだ。 アメリカのすべての女性に1日100語以上を喋ると 強い電流が流れるワードカウンターがつけられる。 少女は学校でお裁縫、料理、ガーデニングを学び 男性を支える"良い女性"であることを強いられる。 ゲイやレズビアンは強制収容所へ。 喋りすぎた女性、レイプされた女性も、髪を刈られひどい環境で強制労働をさせられる。 そこでは、許された言葉は0語。 そんな中でも、ある程度財力のある男性は 秘密のクラブで女性に対して精液とストレスを発散できる。コンドームなんてものは存在しない。 読んでいて、いろんな感情が渦巻いた。 人権=言葉である と、強く感じた作品。 言語の違いがどう、 理解し合えるからどう、 という話ではない。 物理的に発言権があるのかないのか。 そこに、生きる ということが大きく関わっている気がした。 今の日本でも、 女性の価値観については 特に40代後半男性と全く会話ができないことがある。 50代独身でも、結婚相手は子供を産める20〜30歳でしか考えられないと平然と言う人もいる。 そういった狂気を、 手軽に摂取できる形にしたのが、この本である。 心の底ではある意味男性が望んでいる世界、そう錯覚できそうなほど 毒々しくて、 狂った世界で闘う人々が魅力的な物語。 ディストピアは、すぐそこにある。

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2019/06/16

近未来のアメリカ。 サム・マイヤーズ大統領のブレーンであるカール・コービン牧師の進める「ピュア・ムーヴメント」によって、アメリカの昔ながらの良き家庭、良き男女を取り戻すため、女性は発言を1日百語までに制限され、あらゆる社会進出の場を奪われてしまい、更に発言した語数をカウントする腕...

近未来のアメリカ。 サム・マイヤーズ大統領のブレーンであるカール・コービン牧師の進める「ピュア・ムーヴメント」によって、アメリカの昔ながらの良き家庭、良き男女を取り戻すため、女性は発言を1日百語までに制限され、あらゆる社会進出の場を奪われてしまい、更に発言した語数をカウントする腕輪をはめられ、語数がオーバーすると電気ショックを受ける。 そういう変化は徐々に起こり、アメリカを席巻していった。 ジーン・マクラレンも優れた認知言語学者だった。人の脳のウェルニッケ野という言語を理解する部分の研究をしていたが、今は主婦として腕にカウンターを付け暮らさざるを得なくなっている。 そんなとき、突然、ピュア・ムーブメントの指導者カール・コービンがジーンを訪ねて自宅にやって来る。大統領の兄がスキー事故で怪我をし、ウェルニッケ野が損傷を受け、言葉を話せなくなってしまっていた。その治療を彼女に依頼してきたのだ・・・。 いわゆる悪夢の未来、ディストピアを描いた小説。極端な世界を描いているように見えるが、性による差別、性的指向に対する差別が法として、あるときは信仰として認められ、実際に行われていたのは架空ではなく、ほんの少し前の過去の事実だ。 それを近未来のアメリカの姿として、キリスト教の後ろ盾を得た大統領の政策として行われているものとして描くのは決して荒唐無稽な話ではない。 主人公のジーンは、かつての恋人や、研究者仲間、そして地下抵抗勢力の人々とも出会いながら、この軛から抜け出すべく奮闘している。それを読みながら応援したくなるのは尤もだが、一方で焦燥感のような焦り、この姿はいつか遠くない、自分たちの姿なのではないかという気持ちにさせられるのはなぜだろうか。

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2019/06/06

確かに『侍女の物語』の派生作品と言える。前半は、なんなのこの男どもは…とカッカしながら読んだが、自分はフェミニストと思っている男性が自覚も疑問もないままセクハラや女性差別発言をボロリボロリ出すこの国となんら変わらないではないか、と更にカッカする。 軽快なのは救い。 後半からラス...

確かに『侍女の物語』の派生作品と言える。前半は、なんなのこの男どもは…とカッカしながら読んだが、自分はフェミニストと思っている男性が自覚も疑問もないままセクハラや女性差別発言をボロリボロリ出すこの国となんら変わらないではないか、と更にカッカする。 軽快なのは救い。 後半からラストは私は今ひとつ。

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2019/11/20

アメリカの女性だけ、発音する単語数が100語/日に限定されるというディストピアSF。その世界は聖書の文書をそのまま再現しようとしているので、同性愛者は矯正され、中絶は厳禁。男女の教育は別々で教わる内容も異なる。発音する単語数を限定するツールはSF的なものだが、中絶=違法、という州...

アメリカの女性だけ、発音する単語数が100語/日に限定されるというディストピアSF。その世界は聖書の文書をそのまま再現しようとしているので、同性愛者は矯正され、中絶は厳禁。男女の教育は別々で教わる内容も異なる。発音する単語数を限定するツールはSF的なものだが、中絶=違法、という州の法律が通ったりしている現代からこの本の世界観まではあと一歩しかない。また、教育によってそのツールがなくなったとしても、女の子が話そうとしなくなっている、という描写もとてもリアルだなと感じた。 一方で、チームで開発している薬と”毒”の設定にはかなり無理がある。薬の方の構造が分かったからといって、その逆の効果を持つような分子はそんなに急に合成できません…いや、未来ではできるようになっているということなのか…? 主人公の夫が意外といい味出しているのに注目。

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2019/05/26

ディストピアが始まる数十年前からその予兆があり、それを敏感に嗅ぎ取ってデモなどの行動を取り、主人公にもアクションをするよう勧めていた親友。そんな彼女を鼻で笑って相手にせず、選挙にすら行かなかった当時の主人公。何度も当時の親友を思い出し、後悔の念に駆られる現在の主人公の描写を読むと...

ディストピアが始まる数十年前からその予兆があり、それを敏感に嗅ぎ取ってデモなどの行動を取り、主人公にもアクションをするよう勧めていた親友。そんな彼女を鼻で笑って相手にせず、選挙にすら行かなかった当時の主人公。何度も当時の親友を思い出し、後悔の念に駆られる現在の主人公の描写を読むと、月並みな意見だが政治に関心を寄せ、せめて選挙くらいは必ず行かなくてはと身が引き締まる。それにしても、主人公の夫が可愛そうでならないと思ったのは私だけではあるまい…笑

Posted byブクログ

2019/05/06

トンデモなディストピア。そんなアホな、と笑い飛ばせない。。今の日本も遠からずディストピアが待っている。読んで良かった。傍観してちゃダメだ。

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2019/04/20

現代版・『侍女の物語』と言われていたディストピアSF。 確かに比較するなら『侍女の物語』なんだろうけども、そこまで『似ている』という感じはしない。『侍女』は割と突き放しているというか、作中世界にのめり込むことを拒む壁のようなものがあったが、本書は読者を作品世界に引き込もうとするエ...

現代版・『侍女の物語』と言われていたディストピアSF。 確かに比較するなら『侍女の物語』なんだろうけども、そこまで『似ている』という感じはしない。『侍女』は割と突き放しているというか、作中世界にのめり込むことを拒む壁のようなものがあったが、本書は読者を作品世界に引き込もうとするエネルギーがあったように思う(※これはどちらが良い、優れている、という話ではない)。 ところで、巻末の解説に著者本人が『侍女の物語』と『ステップフォードの妻たち』を挙げているとか。なんかちょっと倉橋由美子っぽいな。倉橋由美子も自作の元ネタになった作品を挙げて自作を解説していた。

Posted byブクログ