ヴェルサイユ宮殿 影の主役たち の商品レビュー

ジャック・ルヴロン(著者),ダコスタ吉村花子(訳者)

2023/10/28

広大で華やかなヴェルサイユ宮殿。
そこに暮らす王族たちの生活を支えた多くの使用人や、
出入りした人物たちの生活や生涯を資料から紹介する。
それらは、ヴェルサイユ宮殿に実在した脇役の記録でもある。
・ヴェルサイユ市街図
全19章。原註、出典および参考文献有り。

主にルイ14世～ルイ16世の時代。
4000人を超える人々が勤務していたヴェルサイユ宮殿。
奉公人団(メゾン)の一員として、華やかな宮殿で
影の如くに支えてきた彼らの生活と生涯とは？
そこでは、各々自分の職務のみに閉じこもっていたこと。
誰でも宮殿に入り易かったこと。
紹介されるのは、ワイン調達職、筆頭主治医、王の首席近侍、
水および噴水担当長官の一族、ヴォルテールの女友達の宮廷通い、
警視、女性の王室主馬頭、ポンパドゥール夫人の家令、
防火・消防に関わった人たち、聴罪司祭、王室催事担当部長官、
宮殿のバラック出店の商人たち、泥棒やスリ、
詐欺師の偽男爵夫人、伯爵夫人付き侍女、
伯爵夫人付き女官と夫、王家子女の語学教師、
国王の個人的作業場の錠前師、元寵姫とスイス人衛兵。
記録に残るのは、彼らの衣食住、乳母と学校、金銭問題、
勤務について、そしてヴェルサイユの町での愉しみ。
謹厳実直に任務に努める者のあれど、賄賂にコネ、縁故、
不正取引や利殖が見え隠れし、更に寵姫同士の確執、
医学部の派閥争等の抗争、フランス革命の悲劇もあり、
栄華と凋落は隣り合わせ。正に事実は小説よりも奇なり。
そこに存在した多くの人々の中の、ほんの一握りの人物の
話ではあれど、その当時のヴェルサイユ宮殿の有り様を
教えてくれる、貴重な記録として楽しめました。

2019/11/18

初めてヴェルサイユ宮殿を見た時はとても感動したのを
思い出す。壮麗で優美な鏡の間や美しい噴水の広大な庭園はここに集う華麗な人々を思い出させるが、本書は
この壮大な宮殿を維持する為に仕えた名前の残らない
人々の真実を描いたノンフィクションだ。
美しい宮殿には、欲望、お金、階級等、袖の下もまかり通
下世話な世界も影の歴史として、今となっては当時の
ヴェルサイユを知れる貴重な歴史の1ページになっている。