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五・一五事件 の商品レビュー

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2022/01/31

橘孝三郎は、昭和維新の一連の流れや五•一五事件を調べる中でとても気になっていた。井上日召や大川周明らと同じベクトルで語られることもあるように思うが、軽くその経緯を辿るだけでもとてつもない奇妙な違和感があるのである。なぜ、農本主義者で篤志家でもあったはずの男が、ファシズム的なテロに...

橘孝三郎は、昭和維新の一連の流れや五•一五事件を調べる中でとても気になっていた。井上日召や大川周明らと同じベクトルで語られることもあるように思うが、軽くその経緯を辿るだけでもとてつもない奇妙な違和感があるのである。なぜ、農本主義者で篤志家でもあったはずの男が、ファシズム的なテロに加担したのか?しかもそれもあのような到底何かの意味を生みうるとは思えない杜撰な計画で? この本はその問いに対する一つのアンサーだ。農村の疲弊と社会の病巣に憤慨し、思想は純化し、テロリズムに至る。その過程は三島由紀夫のそれや、連合赤軍のそれと極めて類似しており、それはある一つの真理を立ち上がらせる。 世相への悲憤慷慨はそれが極度に純化すると、当初の目的とは大きく逸れた一見理解不能のテロリズムに容易に流れうるということ。 僕は途中までの橘孝三郎の怒りにとても強く共感する。連合赤軍の焦りに強く強く共感する。三島由紀夫の焦りにも自分を見る。自分が今抱える問題点に対しての怒り。それは容易にこうなりうるということ。それを相対化する上でこの本は極めて重要だ。

Posted byブクログ