港町妻のとろみ の商品レビュー
程良いエンタメと濃厚な官能
舞台となった北陸の風情が強烈に薫っている訳ではないが、都会で挫折した主人公が地方から改めて都会を俯瞰し、地方の良さに気づいていく流れはできている。それでいてヒロインの後押しを受けたエピローグではトレンディドラマを彷彿とさせるような結末を迎えている。この作者が得意とする活劇的なエン...
舞台となった北陸の風情が強烈に薫っている訳ではないが、都会で挫折した主人公が地方から改めて都会を俯瞰し、地方の良さに気づいていく流れはできている。それでいてヒロインの後押しを受けたエピローグではトレンディドラマを彷彿とさせるような結末を迎えている。この作者が得意とする活劇的なエンタメ成分を程良く盛り込みつつ、竹書房ラブロマン文庫の典型的なストーリー展開を作者らしく纏めた作品と言えるのではなかろうか。 漁師の妻やヤンチャな若妻海女におっとりした熟女妻をサブヒロインに従えつつチャキチャキとした未亡人をメインに据えた構成。他に28歳の主人公とは遺恨のあるかつての女上司がオマケ的に登場する。そして、アラサー、アラフォーといった妙齢なヒロイン達との官能描写は相変わらず淫猥にして秀逸。女上司を除くサブヒロインとは複数回の情交場面を設けてじっくり描きながらメインとは割とあっさりした印象になるのは構成として致し方ないところか。それでも諸々のしがらみさえ無ければ亡夫との記憶を上書きされる(実際はたぶん上書きされている)くらいに乱れるメインヒロインの艶姿は描かれているので物足りないということはないだろう。ヒロイン毎にも程良いドラマを盛り込みつつ、官能描写は総じて濃厚である。 相応な年齢の主人公らしい下心も垣間見せて、ヒロインから誘惑される一辺倒でもなく、求めるオトコと求めるオンナがぶつかり合う淫靡な官能が堪能できる点においても作者らしい、興奮度の高い作品に仕上がっていると思う。
DSK
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