奥さま限定クリーニング の商品レビュー
連作短編形式ならではの良し悪し
雑誌『特選小説』に不定期連載されたシリーズ短編を纏めた作品。洗濯屋の主人公が「ケンちゃん」と呼ばれるのは古式ゆかしい法則を踏襲しているが、クリーニングを依頼しに訪れる「奥さま」に留まらず、短期パートとして勤めた人妻や、あるいは学生時代の恩師たる女教師といったバラエティの広がりがあ...
雑誌『特選小説』に不定期連載されたシリーズ短編を纏めた作品。洗濯屋の主人公が「ケンちゃん」と呼ばれるのは古式ゆかしい法則を踏襲しているが、クリーニングを依頼しに訪れる「奥さま」に留まらず、短期パートとして勤めた人妻や、あるいは学生時代の恩師たる女教師といったバラエティの広がりがあったのは悪くない。最終章でCAが出てくるのは作者らしいところか。 基本的には人妻ヒロインが主人公を摘み喰いするがごとく積極的に誘惑する展開。高級住宅街を舞台にしているのでセレブ妻の登場が多く、ゴージャスな雰囲気が漂う。夫ある身ながら背徳感は乏しく、主人公も下心が満載なので割と安易に関係を結ぶ印象ともなるのはスピーディな展開になりがちな短編だけに致し方ないところか。単行本として続けて読むと、新たなヒロインが現れる度に懸想している主人公が移り気な印象になるのもまた然り。何より全7編の収録により1編が40頁前後と少ないことも起因するのか、全体として盛り上がりに欠ける。 そんな中にあって教職者らしくない言動と大胆さのギャップがあり、かつて憧れた年上の女教師と関係する喜びが伴う第6章には背徳的な良さが感じられた。裏を返せば「奥さま」ならではの背徳感が乏しいと人妻に限定する意味が問われるとも言えよう。その辺りの設定的な捻りが他のエピソードにもほしかったところである。
DSK
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