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協力と裏切りの生命進化史 の商品レビュー

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7件のお客様レビュー

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2023/12/28

生物は、協力することで進化した。 分子同士が協力して細菌に。 細菌同士が協力して、真核生物へ。 血縁関係にある個体同士が協力して社会性動物へ。 人は、さらに血縁関係にない個体同士が協力して より大きな社会を作っている。 下に行くほど複雑な生物であるが、その分個体数は少なくなって...

生物は、協力することで進化した。 分子同士が協力して細菌に。 細菌同士が協力して、真核生物へ。 血縁関係にある個体同士が協力して社会性動物へ。 人は、さらに血縁関係にない個体同士が協力して より大きな社会を作っている。 下に行くほど複雑な生物であるが、その分個体数は少なくなっていく。 従って、決して、生物学的な観点からの勝者ではない。単純な生物とは戦いのルールを変えることで、生きられるようになった弱い存在なのかもしれない。 協力のポイントは、分業。 個々がスペシャリストになることで、全体としてより複雑なことができるようになる。 分業するにあたり、裏切り者の存在が邪魔になる。 裏切り者は、罰を与えることで排除する。 ヒトの場合は、しっぺ返しが罰にあたる。 淘汰も裏切り者排除に一役買う。 裏切り者がいないグループの方が全体として生き残るため、裏切り者が除かれていく。これを群淘汰と呼ぶ。 なお、裏切り者がいることで、それに対処するために進化していく、ため裏切り者は進化の起爆剤であるとも考えられている。 と、進化を協力と裏切りという軸で語りきった非常に示唆に富む本。 市橋先生のすごさは、幅広い知識をもつこと、実験で確かめること、なのではないか。 学者の本は、なかなか専門領域からでないが、市橋先生はゲーム理論や、昆虫の社会や、ヒトの心理まで触れている。 RNA実験室で培養してRNAの進化を観察する仕組みをつくり、何年にも渡り研究している。 物事を多面的に考えるためのインプットを繰り返し面白い仮説を生み出して、独自の実験(差別化に加え、時間も味方に)により確かめるスタイルは、見習いたい。

Posted byブクログ

2023/02/25

定義通りの「生命」を作っている研究者が著者。でも作った生命と元々存在する生命との間には決定的な違いがあった。 タイトル通り協力と裏切りがキーになる。めちゃ面白かった。

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2019/12/26

より複雑な生命には協力が必要。分子レベル、細菌レベル、細胞レベル、血族レベル、社会性と多段階での協力とそれによる進化について説明。その中の裏切りがもたらす進化についても述べていた。多様性と協調性のバランスが大事なのだと思った。

Posted byブクログ

2019/11/09

ヒトは協力関係を発展させて生存競争を勝ち抜いてきたから、脳は協力を好むように成形されている。だが協力しない裏切り者にも進化を促す役割がある。公的年金に加入しない若者の増加は、年金制度の見直しを促すきっかけにもなると著者は評価する。

Posted byブクログ

2019/10/21

生命が進化するのは、互いに協力し、時には裏切った結果である。 細胞でも生物でも、協力することで自分にはない能力を補い、自分にある能力を伸ばそうとする。それが進化のメカニズムだ。逆に協力関係が何世代も続いていると、時にその協力をブチ壊す裏切り世代が現れる。が、その裏切行為に反発・...

生命が進化するのは、互いに協力し、時には裏切った結果である。 細胞でも生物でも、協力することで自分にはない能力を補い、自分にある能力を伸ばそうとする。それが進化のメカニズムだ。逆に協力関係が何世代も続いていると、時にその協力をブチ壊す裏切り世代が現れる。が、その裏切行為に反発・予防しようと、さらに自分の能力を高めようとして、さらなる進化が促されることがある。 こうした協力と裏切りが繰り返された生物進化の中、頂点を極めたのが我々人間。人間ほど協力し合う生物はいない。チンパンジーだって自分以外のチンパンジー、それが家族だとしても、無償の施しや助け合いをすることはない。 「協力」というDNAを持った人間が生物進化のチャンピオンになったのは必然だ。だから、進化したいのであれば、人間はもっと助け合おう。という、生物学者らしからぬスピリチュアルな結論で著者は本書を締める。

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2019/06/09

「進化生物学」という領域があることは知らなかった。こんな幅広い知見を総合的に分析するとは凄い。本書を読み、生命と進化の謎がクリアに理解できたように思えた。 領域を超えたトータルな知見を鳥瞰するかのような本書の内容は、実に知的好奇心を刺激してくれる。 著者は「わかりやすさを第一に考...

「進化生物学」という領域があることは知らなかった。こんな幅広い知見を総合的に分析するとは凄い。本書を読み、生命と進化の謎がクリアに理解できたように思えた。 領域を超えたトータルな知見を鳥瞰するかのような本書の内容は、実に知的好奇心を刺激してくれる。 著者は「わかりやすさを第一に考えた」というように、一般人の小生でも興味深く最後まで読むことができた。 ただ終盤の社会学関係の考察について「進化的宿命」と言ってしまうことにはいろいろ議論があるだろうとも思えた。 内容は専門的でありながら、読み易くわかりやすい本である。

Posted byブクログ

2019/09/22

地球外生命も含めてNASAでは「生命」を「自律的で進化する能力を持つ複製システム」と定義しているという。現時点でわかっている範囲で、地球の「生命」はすべてDNA/RNAを持ち、そのシステムの中で特定のアミノ酸を使って作られている。これはそのシステムが生命の定義を満たすということで...

地球外生命も含めてNASAでは「生命」を「自律的で進化する能力を持つ複製システム」と定義しているという。現時点でわかっている範囲で、地球の「生命」はすべてDNA/RNAを持ち、そのシステムの中で特定のアミノ酸を使って作られている。これはそのシステムが生命の定義を満たすということであり、それ以外のシステムが地球にはないことは、生命の定義を満たすシステムは、そうは簡単にはできあがらないということも示している。 著者は、この生命の誕生から、その後の進化、人の心まで含めて生命の進化は「協力」という共通のパターンにしたがっているという。具体的には、①分子間の協力による最近の進化、②細菌同士の協力による真核細胞の進化、③真核細胞同士の協力による多細胞生物の進化、④多細胞生物間の協力による社会性の進化、というように「協力」によって進化が次の段階にステップアップするというのが本書の組み立てである。 ちなみに「進化」は、非生命であっても、①複製すること、②変異が起こること、③選択が起こること、という条件を満たせば発生する。しかし、非生物の「進化」においては複雑性が増えないといういう。このことは複雑性の科学が重要であることを示すひとつの証左だろう。この辺りはスチュアート・カウフマンの『自己組織化と進化の理論』なども含めて理解しておきたい。 第2章の生命誕生から進化の物語は、ニック・レーンの『ミトコンドリアが世界を決めた 』 、『生命の跳躍』、『生命、エネルギー、進化』に書かれていることとおよそ大きくずれるところはない。熱水噴出孔の近くで最初の生命が発生したという推定も同書に共通している。おそらくは、これが現時点での学会での共通理解であるということだろう。本書の内容はざっくりと生命進化の内容を知るには手ごろだが、もし、もっと詳しく知りたいということであれば、ニック・レーンの各書を薦めたい。 著者は、生命の進化を知ることが何の役に立つのか、ということに対して、「私たち人間が生命進化の歴史の大きな流れの一部だとわかること」だと答える。 逆に言うと、「一部に過ぎない」ということである。著者は留保を付けずにこれを良いことと捉えているようであるが、これを慰めと見るのか、僥倖と考えるのかは人それぞれであろう。 生命の進化だけではなく、宇宙の成り立ちを知ることも同じことが言えるだろうし、量子論を知ることもそうだと言えるし、脳神経科学を知ることもそうだと言える。ベストセラーとなった『ホモ・デウス』の中でユヴァル・ノア・ハラリが「科学革命によって、人間は力と引き換えに意味を放棄することに同意した」と語ったことと同じことを言っているとも言える。『ホモ・デウス』では、それ以前には「宗教」が「意味」を与えていたが、宗教がそれを与えることが難しくなった後、「意味」がないことに耐えられなくなった人間は人間至上主義を発明した、と続き、その人間主義ももうすぐ有効性を喪失するかもしれない、と主張される。そのときには「プログラム」が新しい視座を与えることになると予言するのである。 著者も、次の新しい段階への進化が「プログラム」によって発生する可能性について触れている。そこでも、底に流れる「協力」とは良きことだという楽観的な思想があり、「プログラム」との間も「協力」によって良きものとなる、という結論にあっさりと落ち着く。よくまとまった本で、「協力」と「裏切り」というキーワードで「きれいに」まとめられた本だが、もう少し戸惑いや畏れが見えればより深さが出るのではと感じた。著者もおそらく、生命に畏れは感じているはずだから。 なお著者は、巻末に生命の起源や進化について読むべき本として、 『アストロバイオロジー 地球外生命の可能性』 山岸明 『生命と地球の歴史』 丸山茂徳、磯崎行雄 『生命の起源はどこまでわかったか - 深海と宇宙から迫る』高井研 『宇宙からみた生命史』小林憲正 を挙げる。また影響を受けた本として、 『進化する階層』ジョン・メイナード・スミス 『銃・病原菌・鉄』ジャレッド・ダイヤモンド を挙げている。 ニック・レーンやユヴァル・ノア・ハラリの名前も挙げられてもよいと思うのだが、読んでいないとなると不思議だ。読んだ上でこのリストに挙げていないのであれば、それはそれで不思議なのだが。

Posted byブクログ