戦場のアリス の商品レビュー
第一次世界大戦1914〜1918、 死者1000万人以上 第二次世界大戦1939〜1945、 死者6000万人以上 この二つの戦争が二十世紀前半に、 嵐のように吹き荒れた。 自暴自棄となりながらも、戦時中に行方不明になった従姉妹のローズを探すシャーリー。 戦時中スパイだった、ア...
第一次世界大戦1914〜1918、 死者1000万人以上 第二次世界大戦1939〜1945、 死者6000万人以上 この二つの戦争が二十世紀前半に、 嵐のように吹き荒れた。 自暴自棄となりながらも、戦時中に行方不明になった従姉妹のローズを探すシャーリー。 戦時中スパイだった、アル中の中年女性イヴ。 復員後犯罪者になり、その後定職につかずイヴの世話をするフィン。 三人は、ローズを探すと同時に、それぞれの心の底にある過去に向き合っていく。 ボソボソと車の後部座席から繰り出される、第一次大戦でのイヴのスパイ活動の様子は、息をするのも忘れるほどの緊迫感を持つ。 派手な戦闘シーンは無い。 アジトや検問所でのイヴとリリーのスリリングなやりとり 廃墟の村で生き残った中年女性の絞り出すように語るジェノサイド 収容所の開放直後に足元で力尽きたロマの少女の顔 そして最後に三人が行き着く場所は……。 エンディングが良い物語は、満足感いっぱいでした。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
図書館の本 読了 内容(「BOOK」データベースより) 1947年、戦時中に行方不明になったいとこを探すシャーリーは、ロンドンの薄汚れた住宅を訪ねる。現れたのは酔いどれの中年女。潰れた指で拳銃を振り回すその女、イヴは元スパイだった―。第一次大戦中、若きイヴは無垢な容姿と度胸を買われ、ドイツ占領下のフランス北部へ潜入する。そこでは凄腕のスパイ“アリス”が無数の情報源を統括していた。語られる壮絶な真実とは?実話に基づく傑作歴史ミステリー。 第2次世界大戦後の1947年と第1次世界大戦中の1917年を行ったり来たりしながら進む物語。 1次大戦中に実在したアリス・ネットワークが1917年あたりの物語のベースになっているのだけれども、女性がスパイ活動を働くという初の試みだったのね。そんな時代だから男は女には気を許す。そこをついたのがアリス・ネットワークなんだわね。 シャーロットの思い込みの激しさに前半一抹の不安を感じるものの、物語が進むにつれ彼女がおちついていくように見える。 フィンもシャーロットのお兄さんも、戦争で傷を負わない人はいなかったのだと、生き延びた者の傷も深いのだと見せられる。 イブの狂気は2つの大戦を潜り抜けたせいなのか。 前半はあんまりページが進まなくて後半になると面白さが加速する。 イブがイブたるゆえん。イブが飲んだくれる理由。そんなものが見えてくると途端におもしろくなっていった。 それらを払しょくしたシャーロットはイブの娘になり、ローズバットは孫娘になるエンディングはせめてもの幸せが垣間見えてほっとして終われてよかった。 The Alice Network by KATE QUINN
Posted by
こちら「おすすめ文庫王国2020」の第1位。 それを見た時からずっと読もうと思っていたのだけれど、650余頁の厚さに躊躇したまま1年以上経ってしまった。 買った後も暫く積読していたが、この前に読んだ「革命前夜」に触発されて、引続きヨーロッパの話にしてみる。 1915年に始まるイ...
こちら「おすすめ文庫王国2020」の第1位。 それを見た時からずっと読もうと思っていたのだけれど、650余頁の厚さに躊躇したまま1年以上経ってしまった。 買った後も暫く積読していたが、この前に読んだ「革命前夜」に触発されて、引続きヨーロッパの話にしてみる。 1915年に始まるイブの話と1947年のシャーリーにイブとフィンが絡む話が交互に語られるが、かつてのイブと現在のシャーリーに共通した意志の強い女性像を見る一方、かつてのイブと現在のイブの繋がりと落差が鮮やかで、過去と現在が絡まり合うように進む物語は分厚い頁を飽きさせない。 前半は、スパイになってドイツ占領下のフランスに入るイブと、いとこのローズを追ってこれまたフランスに渡るシャーリーの、それぞれの顛末を描くが、一難去ってまた一難が冒険譚が楽しめる。 中盤は、この筋を追いながら、2つの大戦における苦難の歴史がしっかりと描かれて、リリーの最後の場面には深い悲しみが湧き起る。 終盤は、イブとシャーリーによる因縁の男の追跡劇。男を探す過程、思いがけず男と遭遇する場面、遂に決着をつける場面、いずれの描写も息詰まる。 苦難の末のエピローグの、あるべき普通の生活に、しみじみと浸った。 それにしても、アメリカ映画で観たような2つの大戦でのヨーロッパ戦線における連合国軍の華々しい戦いのことは知ってはいても、そこで起こった悲惨な出来事については全くスルーだったな。 「オラドゥール=シュル=グラヌ」や「ベルゼン強制収容所」についても初めて知り、ヨーロッパの歴史の深さにはまだまだ知らないことばかりと思い知った。
Posted by
主要登場人物の多くが実在していたと訳者あとがきで知った。第一次世界大戦中のアリス・ネットワークと第二次世界大戦直後の世界が描かれる。 シャーリー、イヴ、フィンの3人のキャラが堪らなくいい。安心して読めた。
Posted by
好きなセリフ「飢えは思考を研ぎ澄ます」 スパイの心意気がカッコいい。 心を隠し演じて騙し、相手の表情の揺らぎを読む。スリル感はスパイ小説ならでは醍醐味。 第一次世界大戦下フランスへ、ドイツ軍の情報を得るためにスパイとして派遣されたイヴ。イヴは、ドイツに協力する暴利商人ルネ・ボル...
好きなセリフ「飢えは思考を研ぎ澄ます」 スパイの心意気がカッコいい。 心を隠し演じて騙し、相手の表情の揺らぎを読む。スリル感はスパイ小説ならでは醍醐味。 第一次世界大戦下フランスへ、ドイツ軍の情報を得るためにスパイとして派遣されたイヴ。イヴは、ドイツに協力する暴利商人ルネ・ボルデロンの元でウェイトレス兼愛人として振る舞い、最高級の情報を引き出す優秀なスパイだった。戦後のイヴと出会った現役大学生シャーリーのいとこ探しは、イヴの過去が明らかになるにつれ真実に近づいていく。 イヴに降りかかる危機は、身の毛もよだつほど凄まじい気迫がありハラハラドキドキする。 謎解きミステリーのようなすべての駒がつながっていく要素もあり、一気読みできるおもしろさ。
Posted by
女同士の真の友情は無いとも言われるが、この小説の中では第一次世界大戦でフランス軍のスパイとして活躍したリリー、イブの真の友情と第一次世界大戦で全てを失ったイブと第二次世界大戦で大切な人二人を失ったシャーリーの間の真の友情、硬い絆が確かめられる。 リリーとイブは、女性に能力など...
女同士の真の友情は無いとも言われるが、この小説の中では第一次世界大戦でフランス軍のスパイとして活躍したリリー、イブの真の友情と第一次世界大戦で全てを失ったイブと第二次世界大戦で大切な人二人を失ったシャーリーの間の真の友情、硬い絆が確かめられる。 リリーとイブは、女性に能力などないと信じられている社会という戦場の中で、そして本当の戦場の中で敵の目を何度もすり抜け味方のために命がけで情報を送っていた。失敗すれば射殺されるか牢獄で見殺しにされるか…戦後に勲章など送られても意味がない。 なぜ真の友情が芽生えたのか。それはリリーやイブが、味方のために命をかけて戦い、仕事をやり通し、それ以外の幸せは全て捨ててきたからだろう。 今は、女性が活躍出来るよう社会が協力してくれている。「まだまだだ」と言われるがそれでも仕事で活躍する幸せ、恋愛をする幸せ、家庭を持つ幸せといくつもの夢を追うことは可能だ。 しかし、リリーやイブは本当に全てを捨て、使命と仲間だけを守った。それなのに、終戦後、その親友までもイブは失ってしまった。 失意のまま30年のうちに、第二次世界大戦が起き、再び多くの悲劇が起きる。第二次世界大戦で大切な兄を失い、自暴自棄の中、「亡くなった」と言われている大切な従兄妹だけでも探そう立ち上がる19歳のシャーリーがイブの前に現れる。お金持ちのアメリカのお嬢さんだが、失意の中で誰の子か分からない子を妊娠し、こっそり始末させようとする親を欺いて逃げてきた子だ。 イブの目から見れば、青二才のお嬢ちゃんだったろうが、たった19歳の女の子が自分の将来もお腹の子の将来も見えないまま、異国でイブというガラの悪そうな過去のありそうな女性を頼りに従兄妹を探す旅を始めた。なんてたくましいのだろう。 シャーリーとイブと「イブの何でも屋兼運転手」のフィンの車での旅は戦争でそれぞれ別の場所でズタズタに傷つけられた3人の旅だが、明るく、お互いを思いやり、口は悪いがこれもまた真の友情が芽生える。それまでに三人が送ってきた悲劇は経験したくないが、この三人の旅は羨ましく、その中に入りたくなる。 救いのない展開ではなくて良かった。リリーも喜んでくれているだろう。
Posted by
第一次大戦中のドイツ占領下のフランスにおける女性スパイ網を描いた、史実に基づくフィクション。 主人公は想像上の人物だが、そこここに史実に基づくエピソードが挿入されているという。 第二次大戦後のフランスで、行方不明の従姉の足跡を追う米国女性の主人公が追体験する第一次大戦中の女性...
第一次大戦中のドイツ占領下のフランスにおける女性スパイ網を描いた、史実に基づくフィクション。 主人公は想像上の人物だが、そこここに史実に基づくエピソードが挿入されているという。 第二次大戦後のフランスで、行方不明の従姉の足跡を追う米国女性の主人公が追体験する第一次大戦中の女性スパイの体験と、主人公自身の体験が徐々にシンクロしていきクライマックスに突入する。 サスペンスとしても良く書けている。
Posted by
1947年、戦争中に行方不明になったいとこを探すシャーリー。手がかりは一人の女性・イヴ。尋ねてみると、イブは酔いどれ、しかも指は潰れたいた。イヴは元スパイだった。第一次大戦中、ドイツ占領下のフランス北部へ潜入。凄腕のスパイ“アリス”が無数の情報源を統括していた。イヴの過去、いとこ...
1947年、戦争中に行方不明になったいとこを探すシャーリー。手がかりは一人の女性・イヴ。尋ねてみると、イブは酔いどれ、しかも指は潰れたいた。イヴは元スパイだった。第一次大戦中、ドイツ占領下のフランス北部へ潜入。凄腕のスパイ“アリス”が無数の情報源を統括していた。イヴの過去、いとこの運命は? 傑作長編! アリスは実在したスパイらしいです。そのアリスやオラドゥール=シュル=グラヌの悲劇とか初めて知ることが多く、歴史的なものでも私は圧倒されました、知識を得ながら興味深く読めました。タイトルはアリスなんだけれど、シャーリーとイブ(イブの活躍した過去のこと)の二人のお話で進んでいきます。絡み合って、それでそれでとページが進みました。最後の方の二つの物語があったところは、もう息をつくのが大変。女性たちの力強さ、生き残ったものたちの心情、そして、明るい兆し、読み応え十分。登場人物は皆魅力的で(悪役ルネは悪い度合いがうまく出てて)そういった面でも楽しめました。
Posted by
偶然にも似たような小説に連続して出会うことが時々あるのだが、今回もそう。 こないだ「コードネーム・ヴァリティ」を読み終わった後すぐに本作である。 女性主人公2人目線、主人公は女スパイ、舞台はヨーロッパ戦線。WW1とWW2の違いがあるとはいえ、敵役はドイツ(とそれに加担する組織や...
偶然にも似たような小説に連続して出会うことが時々あるのだが、今回もそう。 こないだ「コードネーム・ヴァリティ」を読み終わった後すぐに本作である。 女性主人公2人目線、主人公は女スパイ、舞台はヨーロッパ戦線。WW1とWW2の違いがあるとはいえ、敵役はドイツ(とそれに加担する組織や個人) 読んでいけば、味わいの違いはすぐに分かるのだが、なんという偶然か?それとも翻訳小説界ではこの辺のテーマがブームなんだろうか?どちらも傑作だというのがまた偶然。 読み始めは、なんだか貴族系上流階級女子のとっつきにくい話だなぁ、今更亜流の「風と共に去りぬ」でもあるまいし…と正直ちょっとペースも遅れ気味だったんだが 二人の主人公の動きが徐々に関連づいてくるにつれて、ぐいぐい話に引き込まれていく。しかも史実に基づいた部分が非常に多く、ノンフィクションを史実に編みつけていくテクニックの上手さは読みどころ核心! 物語の終焉も綺麗に整っていて、余韻が少々苦い「コードネーム・ヴェリティ」よりこっちのほうが俺は好みかな。 それにしても、2つの戦争の結果、ドイツって国はとんでもなく大きな負債を背負ってしまったものだ。現代において、EUであれだけ大きな貢献をしていても、いまだ悪役まっしぐら。きっと日本だって欧米から見ればそういう国なんだろうなぁ。ほんま戦争はあかん。
Posted by
第一次世界大戦のスパイ小説?とナメた姿勢で読むと本作はヤバい! 「第一次大戦時のスパイ活動」と「行方不明の従姉妹を探す旅」の2つの物語が同時進行するスパイ歴史小説。 「妊娠中の女子大生」「アルコール依存症の女の元スパイ」「キレやすい元兵士」3人のロードムービーの中に、大戦中の事実...
第一次世界大戦のスパイ小説?とナメた姿勢で読むと本作はヤバい! 「第一次大戦時のスパイ活動」と「行方不明の従姉妹を探す旅」の2つの物語が同時進行するスパイ歴史小説。 「妊娠中の女子大生」「アルコール依存症の女の元スパイ」「キレやすい元兵士」3人のロードムービーの中に、大戦中の事実・理不尽が明らかになっていく過程が面白い! 緊迫の情報収集、吐き気を催す拷問、そして、戦争犯罪を糾弾されずに巧妙に逃げ回った悪党、読むほどに謎が結びつき、読者を腹落ちさせるのが堪らない。 フェミニズムの目覚めも教える。 登場人物は、解説によると日本では無名だが実在の人物らしい。本作は考えさせる歴史小説なのだ。
Posted by