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経営戦略としての異文化適応力 の商品レビュー

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2019/03/16

経営学とか、心理学とかのツールのほとんどはアメリカ生まれ。 「人間の種としてのDNAは共通なので、どんな国でも機能する」と主張するツールもなかにはあるのだが、本当だろうか? 「なんだか、アメリカンなツールなんだけど、日本にあわせて調整したほうがいいのだろうか?中途半端な調整は...

経営学とか、心理学とかのツールのほとんどはアメリカ生まれ。 「人間の種としてのDNAは共通なので、どんな国でも機能する」と主張するツールもなかにはあるのだが、本当だろうか? 「なんだか、アメリカンなツールなんだけど、日本にあわせて調整したほうがいいのだろうか?中途半端な調整はツールの本来のパワーを削いでしまうのではないだろうか?」というのは、よく悩むところ。 この悩みの解決に体系的にアプローチするヒントを与えてくれるのが、ホフステードの6次元モデルで、国ごとの価値観の相違を定量化したもの。 国によって文化や価値観の違いがあって、それが人の考え方や行動に影響を与えるというのは、当たり前のことなのだが(この当たり前のことが無視されることが結構多い)、定性情報の最たるものといえる文化を定量化するというのは、かなり非常識なことに思える。 そういうわけで、正直、最初は、懐疑的だったのだが、ホフステードの「多文化世界」を読んで、すっかり感服してしまった。そんなに海外経験があるわけではないのだが、以前からなんとなく感じていた文化の差が次から次に定量的に説明できてしまう不思議さ。 そして、「しかし、こういう観点もあるんじゃないか?」とか、「○○の本で書いてあったこととこれは整合するのかな?」などと疑問を浮かぶと、すかさずそういう疑問に対する解明がされたり、先行する研究との整合性の検証がでてくる。 というわけで、ホフステードのモデルには、すっかり、まいったという次第。 そんな素晴らしいホフステードモデルなのだが、「多文化世界」は、分厚いし、膨大な情報量があって、モデルを使いこなすには、相当の難しさがあるを感じていた。 そういうなかで、でてきたのが、ホフステード・モデルの実践における日本における第一人者によるこの本。 ホフステードとその弟子(?)たちの膨大な研究を豊富な事例を交えながら、日本とビジネスという観点から分かりやすくまとめ直している。 また、国民文化の議論を組織に展開するときに便利な6つのメンタルイメージの解説も丁寧に紹介されているし、CQを高めるためのトレーニングの方法も入っている。 ビジネスの現場でのさまざまな「あるある」な事例を踏まえての解説は、まさに現場の実践を通じて生み出されたものだと思う。 「学術」的な「多文化世界」が、この本によって、まさに実践的な知恵に転換されたという感慨がある。 説明はとてもわかりやすいのだが、ホフステードのモデルがステレオタイプ的な理解にならないよう細やかな配慮も行き届いている。 最後にホフステードのインタビューが掲載されていて、「文化も次元も、現実には存在しないものです。・・・研究で提唱したモデルは文化を読み解くためのツールにすぎません。大事なことは『あなたが生まれ育った場所が、あなたの基本的なモノの考え方や視点に影響を与える』という事実から、目をそむけないことです」という言葉には共感した。 私自身の仕事は、ドメスティックで、この本に書いてあるグローバルなビジネスシーンでのコミュニケーション力のアップというのは、切実な課題ではないのだが、それでも、日本の文化、そして自分自身を理解するのに、とても意味深い本であった。 グローバルな仕事と縁が遠いと思う人も、ぜひ、読んでほしい。

Posted byブクログ