揺らぐ街 の商品レビュー
震災を描いた物語を期待していたが、震災をどう文学にするか作家の内面を掘り下げる物語だった。 編集者である主人公が登場する担当作家からやたら信頼されているが、なぜなのか腑に落ちないし、元カレとの偶然の再会はご都合主義を越えて投げやりな感じがしたり、期待して読み始めた分イマイチな印...
震災を描いた物語を期待していたが、震災をどう文学にするか作家の内面を掘り下げる物語だった。 編集者である主人公が登場する担当作家からやたら信頼されているが、なぜなのか腑に落ちないし、元カレとの偶然の再会はご都合主義を越えて投げやりな感じがしたり、期待して読み始めた分イマイチな印象が残った。
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震災被害に遭った気仙沼市をモデルに、架空都市「仙河海市(せんがうみし)」を舞台に人々の再生を謳うシリーズ6作目。とは言え、今作は東京から見た激甚被災地という視点で描かれた群像劇。 3.11の震災をきっかけに書けなくなってしまい震災をテーマに書かなければ自身の今後の作家人生はない...
震災被害に遭った気仙沼市をモデルに、架空都市「仙河海市(せんがうみし)」を舞台に人々の再生を謳うシリーズ6作目。とは言え、今作は東京から見た激甚被災地という視点で描かれた群像劇。 3.11の震災をきっかけに書けなくなってしまい震災をテーマに書かなければ自身の今後の作家人生はないと強い決意のN賞(直木賞)受賞の女流作家 桜城。その担当である大手出版社の女性文芸編集者で阪神淡路大震災を経験した山下。仙河海市出身でかつて文学新人賞を受賞するも文壇から姿を消し、再起を図ろうともがく被災地出身 武山。この3人が主要な登場人物で、三人三様の苦悩・懊悩・葛藤を経て、はたして再生を果たせるのか?が、この小説の読みどころ。 この小説に登場する二人の作家(桜城と武山)は著者の分身であることは容易に想像できる。直木賞受賞し、コンスタントに新作を発表し続けていた仙台在住の熊谷達也が千年に一度の地震に遭い、文学者として自分に何ができるのか?を問うのは然もありなんである。死屍累々の惨状を前に筆が進まなくなるのも当然。震災前の日常を取り戻してこその読書であり、一冊の本である。温かいスープには本は勝てない。 その苦悩を自身が身を置く文芸・出版の世界にプロットするのは、いささか安直ではないかな。作家と編集者の関係や一冊の本が編まれる過程など興味深い点もあったが、内輪ネタ・楽屋ネタを開陳されたに留まり、スラスラと読めはしたものの読後感は「言い訳」を読まされた感じを抱くのは天の邪鬼かな。
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