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わたしたち、何者にもなれなかった の商品レビュー

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13件のお客様レビュー

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2019/10/14

映画。あの頃、私たちの真ん中には映画があった。 石田サキという才能に魅せられ、映画を中心にして四つ葉のクローバーのように結びついていた同好会の四人は、サキの突然の失踪により夢を失い、それぞれの道を歩きだし、12年が経った。そんなあるとき、サキの居場所を知らせる、暗号めいた電話が...

映画。あの頃、私たちの真ん中には映画があった。 石田サキという才能に魅せられ、映画を中心にして四つ葉のクローバーのように結びついていた同好会の四人は、サキの突然の失踪により夢を失い、それぞれの道を歩きだし、12年が経った。そんなあるとき、サキの居場所を知らせる、暗号めいた電話が掛かってきて――。 タイトルに惹かれて手に取った本書。 高校時代に心のど真ん中に据え置いていた夢と、夢への先導者(サキ)を唐突に見失った三人の少女が、喪失感を抱えたまま30代になり、それぞれの現実と折り合おうと葛藤する様がリアルだった。 理由も分からず、何らかの決着がつかないまま一方的に閉ざされた想いは、時が流れてもくすぶり続ける。 それが恋であれ夢であれ、拗らせてしまう。 タイトルを見た時は、夢を失い、望んでいた何者にもなれなかった自分達を憂う物語かと思ったが、そうでは無かった。 望んでいようがいまいが、年齢を重ねた彼女たちは主婦・シングルマザー・仕事と、何らかの役割に徹しなくてはならない。ずっと横並びではいられない。 彼女たちの願いは 「なにものでもなかったあの頃に戻りたい」 ただそれだけだった。 この世は何ひとつ一定では無い。 そして何ひとつ自分の思いどおりにはいかない。 (思いどおりにいく事があったとしても、永遠には続かない)。 友情も、恋愛も、流行も、推しも、かたちを変えていく。 それもまた良しと、受け入れる覚悟が、この本を読み進める内に少しずつ出来ていく気がした。

Posted byブクログ

2019/08/07

ありがちな展開だなと思うけど、それ以上に、登場した女性3人がリアルで苦しくなった。でも、前向きに生きなければならない理由が出来たんだとしたら、それはいい事だなと感じる。

Posted byブクログ

2019/05/18

高校時代に映画サークルを立ち上げた4人。世間的な評価も高まっていたさなか、突如中心だったサキが突然いなくなり解散になる。そうして十余年が過ぎ、それぞれの人生を歩んでいた3人が直面した過去の真実とは… そんな粗筋の、女性4人の過去に潰えた夢と、それぞれ「うまくいってない」現実の齟...

高校時代に映画サークルを立ち上げた4人。世間的な評価も高まっていたさなか、突如中心だったサキが突然いなくなり解散になる。そうして十余年が過ぎ、それぞれの人生を歩んでいた3人が直面した過去の真実とは… そんな粗筋の、女性4人の過去に潰えた夢と、それぞれ「うまくいってない」現実の齟齬に苦しみ悩む物語。フラッシュバックのように過去に撮った映画がエピソードのモチーフと描かれ、一人ひとりの抱えている事情が明らかになっていき、やがてサキが失踪した理由も詳らかになっていきます。筋立てや真実そのものはストレートなものですが、自分のエゴとかつての夢のはざまで苦しむ女性たちの姿がとても現実的に描かれていて共感も抱けました。 「現在」に不満があれば「過去」に目を向けたり目をそらすということは誰でもすることで、彼女たちのように眩い日々があったのならなおさらでしょう。そして訳も分からず消えた彼女にその責を問いたくなるというのも。 自分の人生はあくまで、自分自身の選択肢の積み重ねの結果に過ぎない、ということから、どうしても目をそらしてしまう、それがひとというものだろうから。 映画というテーマがとても効果的に用いられていて、終盤の一連の場面は美しいな、と思いました。「それ」しか知らない彼女の、たったひとつの「愛しい人たちへのメッセージの伝え方」。その純粋な想いは、「過去」に囚われていた彼女たちに「未来」へ歩む力を与えてくれるものに違いないと、そう感じたのでした。

Posted byブクログ