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時間の経済学 の商品レビュー

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2019/07/26

小林先生の著書を読むのは3度目ですが、本書は他書と比較してかなり政治哲学に踏み込んだ内容となっています。他の著書で幾度も記されている、「財政赤字や環境問題などの現代の社会問題は世代間の資産分配の不可能性に由来するものであり、仮想将来世代を導入や、独立財政予測機関の編成が効果的であ...

小林先生の著書を読むのは3度目ですが、本書は他書と比較してかなり政治哲学に踏み込んだ内容となっています。他の著書で幾度も記されている、「財政赤字や環境問題などの現代の社会問題は世代間の資産分配の不可能性に由来するものであり、仮想将来世代を導入や、独立財政予測機関の編成が効果的である」といったテーマは変わらずに、ロールズ、アーレント、サンデルなどの政治哲学を縦横無尽に駆け巡って、上記のテーマが現実になるために求められる哲学的基盤を追っていきます。 他の著作でも「新たな政治哲学が求められる」といった趣旨の記述があり、「実際に現代社会に対して提供できる新しい哲学なんてあるのか?」とずっと疑問に思ってきましたが、本書ではイノベーションや人工知能などを議論に組み込んで、かなり挑戦的な試論を展開しているように思われます。 正直シンギュラリティ的な思想を背景にした最終章の議論はツッコミたくなるような部分が多く感じられましたが、発展の度合いはどうにしろ、人間の知能を相対化する概念が公然と現れた現代において、このような発想を展開して世に問うてみる事の価値は間違いなく有ると思われます。 おまけですが、サンデルの共和主義がイマイチよく分かっていなかったのですが、本書を読んでピンと来るところがありました。上に挙げた三者の哲学に触れたいという方にもオススメです。

Posted byブクログ