1,800円以上の注文で送料無料

人外 の商品レビュー

3.7

10件のお客様レビュー

  1. 5つ

    4

  2. 4つ

    2

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    2

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

2023/10/19

「人外(にんがい)」(松浦寿輝)を読んだ。 
面白い! 
アラカシの枝の股から滲みだした(神ともけだものともつかない)「それ」が、(何故か過去の記憶に囚われ)探し求める「かれ」とはたして出会えるのかどうか。 
そして「世界」は滅びようとしている。 
少し難解なところもあるけれどし...

「人外(にんがい)」(松浦寿輝)を読んだ。 
面白い! 
アラカシの枝の股から滲みだした(神ともけだものともつかない)「それ」が、(何故か過去の記憶に囚われ)探し求める「かれ」とはたして出会えるのかどうか。 
そして「世界」は滅びようとしている。 
少し難解なところもあるけれどしだいに物語に惹きつけられていく。 
印象深い文章をひとつだけ抜きだす。 
『世界と世界ならざるものとの境界に身を置きその両方に魅了され引っ張られ、しかしどちら側にも身を落ち着けられずにいるものだけが知るせつなさでありやるせなさであるようにおもわれた。』(本文より) 
〈あゝ、われわれの世界も滅びようとしているのかもしれないな〉と、思う。

Posted byブクログ

2023/06/23

カワウソのような人外が、人間以上に意識を持って終末の世界を横断して行く。 何とも不思議で美しくて難しい本。 小説というより、詩を読んでる感じだった。

Posted byブクログ

2021/01/30

読んでいて、小説ではない一つの世界を紐解いている感覚。 極端に句点の少ない長文がだんだんと心地良く、ずっと読んでいたいけれども、世界はうつろい、物語も終焉を迎える。 らせんと円、私・わたしたちと彼、存在と不在、意識と世界。 これから何度も読み続けたい。

Posted byブクログ

2019/10/24

『暖かな血がまたふたたびからだのなかを循環しはじめようと野ねずみの肉を喰らい血をすすって恍惚としようとわたしたちはあくまでもつめたかった』―『1 発端』 松浦寿司の闇の深さは、普段きれい事で問題を片付けようとする自分の志向を激しく揺さぶる。その救いの無さが返って潔い。それでもこ...

『暖かな血がまたふたたびからだのなかを循環しはじめようと野ねずみの肉を喰らい血をすすって恍惚としようとわたしたちはあくまでもつめたかった』―『1 発端』 松浦寿司の闇の深さは、普段きれい事で問題を片付けようとする自分の志向を激しく揺さぶる。その救いの無さが返って潔い。それでもこのスノビッシユな文章は一々鼻につく。この作家はそれを露悪的に書くことを意図しているので意地が悪いとしか言いようが無い。それでも何故かそんな文章を求めてしまう気持ちがある。 何かを当て擦っているのか、そうではなく単に作家のボキャブラリーなのか、それが判然としない言葉の並びに馴れて文脈を気に掛けなくなってしまうと、この作家の文章は急に底が浅く思えてしまうこともある。しかし何か人間が根源的に抱く違和感をこの作家ほど端的に書き表す作家を他に知らない。それ故、強い拒絶感を押し付けられているのを感じながら、何故か読み続けてしまう。 惹かれながらも、何処かで受け入れたくはないという気持ちにもなる。深読みするべきと思いながら、レトリックに嵌りたくないという思いにも囚われる。人外をわざわざ「にんがい」と読ませる意図は何なのか。そんなことを考えていると、松浦寿司の皮肉な冷笑がイメージされてしまい、前にも後ろにも進むことが出来なくなる。難読の漢字をまぶしながら、平仮名を読みにくい程に連ねる文章で閉口させることにはどんな意図が隠されているのか。そんな事ばかり気にしていると、言葉の意味が立ち上がらせるべき心象を何も再構築出来ぬまま頁だけが進んでしまう。 一つだけはっきりしているのは、老いが作家を回顧的な気分にしているであろうということ。その境地に至った時でも、人は諦観というある意味到達点とも言える感慨に中々に至ることは出来ない、ということがひょっとするとこの作家が言いたいことの全てなのか。そんな思いを抱きながら読了する。

Posted byブクログ

2019/07/24

人外とは?と思いつつ読み進めていくと、どうやらこれはすっきり出来ない物語であるのだな、ということに気づく。 人あらざるものを通して生きるということを表現してるのかな?

Posted byブクログ

2019/11/02

アラカシの巨木の大枝が幹と分かれる股のあたりで、樹皮からずるりと滲み出るようにして地上に落ちた「わたしたち」は、意識が明るみ、言葉が点滅し、過去が響きやにおいや色合いを伝えてくるなか、なにやら四足獣のごとき形の「わたし」、つまり「人外(にんがい)」になっていた――。 無縁、それ...

アラカシの巨木の大枝が幹と分かれる股のあたりで、樹皮からずるりと滲み出るようにして地上に落ちた「わたしたち」は、意識が明るみ、言葉が点滅し、過去が響きやにおいや色合いを伝えてくるなか、なにやら四足獣のごとき形の「わたし」、つまり「人外(にんがい)」になっていた――。 無縁、それが人外だった。だれともなにとも無縁、この世のいかなる縁ももっていないひとでなし。それは、だれもなにも、愛さない。 不気味に不可解に、物語ははじまる。「人外」は、やがて「かれ」を探して川を下る。しかし「かれ」とはいったいだれのことだろう? 川岸には人間の住む集落がある。けれど、そこには死が蔓延し、人口は激減。街は寂れつつあった。 乗客がみな死んでいる列車、虚しく賑わうカジノ、図書館の跡地、廃病院、誰もいない遊園地。世界のうちにとどまりながらなかばそのそとにはみ出して生きざるをえないことのせつなさ、やるせなさを抱きながら、「人外」は黄昏の世界のさびしい風景のなかを彷徨う。そこで出会う人びとはみな死んでいる。死にかけている。酒に酔っている。おびえている。そんなふうに茫洋とたたずむ人間たちに、「人外」は語りかける。あなたはだれ、と。 「人外」は彼らと出会い、別れることであわれみやおもしろさやさびしさの意味を知り、時間は流れ――または流れなかったのか――やがて終わりの時が来る。過去と未来、生と死は螺旋を描きながら永遠にめぐりつづける――。 過去ではたぶん人であったものが人でないもの、猫ともアナグマともつかないけものに化身して、長いながい旅をしてまたその生を終えて溶けてゆく。はじめは気味が悪いこの存在は、寂寥感あふれる彷徨いのなかで、どんどん可愛くみえてくる。だってひとでなしの「人外」というくせに、このこの一生はまるで人間そのものじゃないの。 わたしは自分がこの物語を本当に理解しているとは思わないが、さびしい「人外」の、つめたさとあたたかさのあいだにゆれる心が愛おしくて大好きだ。 人外に出会って、「あなたはだれ?」と問いかけられてみたい。そのときわたしは、自分をなにものだと答えることができるだろう。 「……わたしは――」

Posted byブクログ

2019/07/04

“わたしたち”の起源はどうやら無機物で、無機化合物の水がアカシアの木の根に吸いあげられ、やがて樹液と混ざって有機化合物となり、木の外皮の外へ出て“わたし”に変じたようだ。言葉を解するも、人間ではないので人外(にんがい)などと、なんだか好ましからざる呼び名で表される。ときに人外自身...

“わたしたち”の起源はどうやら無機物で、無機化合物の水がアカシアの木の根に吸いあげられ、やがて樹液と混ざって有機化合物となり、木の外皮の外へ出て“わたし”に変じたようだ。言葉を解するも、人間ではないので人外(にんがい)などと、なんだか好ましからざる呼び名で表される。ときに人外自身が“ひとでなし”とも称するが、ひとでなしは人心を持たない人間のことであり、人間でない人外はひとでなしではない。人外が旅する途上で接した人間の多くは、どうにも虚しく拠り所のない荒廃した世界に生きている。結局、人外の旅の目的をはっきり理解するにはいたらぬながら、人間だろうが人外だろうが万物は流転し、“わたし"は天寿をもって“わたしたち”へと回帰するってこと、だろうか。

Posted byブクログ

2019/06/24

おもしろっ。 カワウソみたいな猫みたいな人外が ディストピア的な世界を歩くキャッチーさと 人外の意識「わたしたち」と過去と未来と偶然と必然をらせんに例えるよくわかんなさが程よいバランス。 表紙もすてき。

Posted byブクログ

2019/06/17

これは詩か?と思って著者のプロフィールを読んだらやっぱり詩人だった。ゲーテも無理な自分にはまったく無理な本だった。盛り上がりもなにもなく、無駄にグロテスクな表現が混じったり、性描写が入ったりするが、そういうワードを書き足したいだけのまったく関連性もまとまりもない。 そしてなにより...

これは詩か?と思って著者のプロフィールを読んだらやっぱり詩人だった。ゲーテも無理な自分にはまったく無理な本だった。盛り上がりもなにもなく、無駄にグロテスクな表現が混じったり、性描写が入ったりするが、そういうワードを書き足したいだけのまったく関連性もまとまりもない。 そしてなによりいとしてかかれているんであるけど、ひらがなを多用しすぎて文のきれがわかりづらく、海外では決してあり得ない日本語表現のテクニックと言われればふーんとなる人もいるだろうけど、それは違うと思う。文に自信がないから結局小手先の表現技法とかいう意味の分からない主張を読者に押し付けただけのもの。 数多の中に必ずある地雷小説、今回もまたひいてしまった。

Posted byブクログ

2019/05/11

アラカシの大木から染み出た人外が、分かたれたかれを探して遍歴する。様々な場所、(死体を投げ捨てる橋、見張り小屋、海岸、カジノなど)、様々な人(偽哲学者、図書館司書、病院長、ゴンドラの漕ぎ手など)との出会いでいろいろなことをかんがえる。あるいは心におもいがよぎる。この旅とともにある...

アラカシの大木から染み出た人外が、分かたれたかれを探して遍歴する。様々な場所、(死体を投げ捨てる橋、見張り小屋、海岸、カジノなど)、様々な人(偽哲学者、図書館司書、病院長、ゴンドラの漕ぎ手など)との出会いでいろいろなことをかんがえる。あるいは心におもいがよぎる。この旅とともにある思考の流れが心地よく、ひらがなの多い文章も語り口もぴったりで読み終わるのが残念なぐらいでした。流れる音楽がシューベルトのピアノソナタだったり、踊るのはフォックストロットだったりこういう選択がまさしく腑に落ちて、特に表紙のゴットフリート・ヘルバインの絵は素晴らしいです。

Posted byブクログ