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エイフェックス・ツイン、自分だけのチルアウト・ルーム──セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2 の商品レビュー

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2021/09/25

エイフェックス・ツインという不世出の天才による神秘的な作品について、とはいえ、1枚の作品を巡ってここまで掘り下げ、多角的かつ複層的な批評を行なっていること自体が素晴らしいと思う。 リチャード・D・ジェームスという作家が、なぜこの作品を作るに至ったのか、この作品はどんなことを示し...

エイフェックス・ツインという不世出の天才による神秘的な作品について、とはいえ、1枚の作品を巡ってここまで掘り下げ、多角的かつ複層的な批評を行なっていること自体が素晴らしいと思う。 リチャード・D・ジェームスという作家が、なぜこの作品を作るに至ったのか、この作品はどんなことを示しているのかということは、結局モヤがかったままというか、膨大な情報もさながら蒸気のように身体をすり抜けていってしまったような感覚を覚えた。 同時代にどんなことが起こっていたのか、どんな文化的背景があるのかーーつまり、ある程度横軸と縦軸の歴史的な認識があることを前提としているのだろう内容であった。文化や歴史を紐解く行為にはミクロとマクロの両方の視点を持ち合わせるべきで、これはこれでとても意義深い一冊なのではないかということを思う。とはいえ、めちゃくちゃ読みにくいですのが。

Posted byブクログ

2020/01/13

かれこれ10年以上Aphex Twinのファンです。といってもリアルタイムで聴けたのはsyroからなので、なるほどSAW2にはこんな文脈があったのかと初めて知りました。 確かに、SAW85-92, On, SAW2, Ventolinと流れで聴くと、SAW2は相当異質ですね。最...

かれこれ10年以上Aphex Twinのファンです。といってもリアルタイムで聴けたのはsyroからなので、なるほどSAW2にはこんな文脈があったのかと初めて知りました。 確かに、SAW85-92, On, SAW2, Ventolinと流れで聴くと、SAW2は相当異質ですね。最後の方にOnとVentolinはSAW2のブックエンドという表現がありましたが、かなりしっくりくる。 SAW1がないことに騒がれたとあって、物心ついた頃からインターネットが側にあった私からすると('87年生まれ)、何が問題だったのかイマイチわかりませんでした。なるほど確かに、雑誌やメモを片手にレコード屋でdigる人々からすると、「85-92がvol.1ってことでいいんだよな…?」てなりますよね。これに関してはリチャードは何の意図もない、ただの気まぐれタイトルだったんじゃないかと思いますが、であれば、はたはた迷惑な話です。笑 当時の音楽雑誌の批評、ファンの反応、別領域の音楽であるクラシックへの取り込みと相互に与えた影響、映画やコンテンポラリーダンスといった別の形のアーティストの昇華のさせ方など、本当に(本当に)様々な角度でSAW2を眺めています。偏執的とまで言える努力量よ。ここまで緻密に取材をした上で、独自の解釈を加えた著者には素直に賞賛を送りたい。 本人がここまで深いことを考えて音楽を作っていたのかはかなり疑問ですが(ていうかどうやったらあんな音楽が生まれるのか)、その独特な作曲方法にも話が及んでいて興味深い。現代のアーティストは、一部の天才と呼ばれる人以外の大多数は、ある程度論理的に、例えば音楽理論や影響を受けた音楽ジャンルを引用して作曲を行なっています。それに対して、リチャードは「意図的に明晰夢を見ることで、眠りにつく直前と目覚めの直後で曲を作る」という、極めて異質な作曲方法を取っています。 これマジなんだと思いましたw 噂には聞いてたけど。 人と同じことをしていても同じ結果しか得られないというのは耳タコな定説ですが、まさにリチャードは「人と違うことを突き詰めていた」ことに疑いの余地はないでしょう。加えて、コーンウォールという牧歌的とも言える地方で幼少期を過ごしたことが作風に大きく影響を与えているのでしょう。 --- と、興味深い部分は多くありましたが、とにかく読みづらかったですこの本り6-7時間かかったんじゃないかな。。冷静に振り返ると、三重の意味でわかりづらいんです。 まず、そもそも引用元を経験していないと(見たり・聞いたり・知ってたり)、何を言っているのかが分からない。本書を読みながら何度もググる羽目になりました。まぁ私の知識レベルが本書を読むに至らないのはわかりますが。優しくない。 次に、美術館の説明文かよというほど、言い回しが婉曲的で、何が言いたいのかが読み取りづらい。アーティスティックな感性不足ということは認めますけど、もっと率直に書いてくれてもいいじゃない。あと、難しい漢字は使わないで!耳を聾するとか読めませんわ。。 最後に、翻訳なのは分かるけど翻訳調すぎ。補足文を一文の中に入れるから、主語と述語のつながりが遠すぎて絶望的に読みづらい。フォントサイズが小さくなる部分は余計しんどい。この辺は翻訳家の努力だと思うので頑張って欲しいです。

Posted byブクログ

2019/03/03

大学生時代の一時期、短期的な鬱状態になった際(こうした状態に陥ったことがない人は幸せである。「あなたには(この辛さは)わからないでしょうね by NNMR」)、Glenn Gouldの演奏するバッハの作品集と並んで唯一聞けていたのがAphex Twinの「Selected Amb...

大学生時代の一時期、短期的な鬱状態になった際(こうした状態に陥ったことがない人は幸せである。「あなたには(この辛さは)わからないでしょうね by NNMR」)、Glenn Gouldの演奏するバッハの作品集と並んで唯一聞けていたのがAphex Twinの「Selected Ambient Works Volume 2」であった。 Richard.D.Jamesという音楽家の代表的名義であるAphex Twinにとって、最大の問題作と言える「Selected Ambient Works Volume 2」。様々な関係者へのインタビューなどを交えながら、このアルバムの本質的な意義を考察したの本作である。 私が高校生のとき、初めて購入したAphex Twinのアルバムは本作の2年後に発表される「Richard D James Album」であった。このアルバムは冒頭に収められた名曲「4」に代表されるように、彼の代名詞ともされるドリルン・ベースとも言うべき攻撃的なビートで彩られた作品である。対照的に「Selected Ambient Works Volume 2」は一見、明確なビートがないように思われる。それが"Beatless"という本作の代表的形容詞を生み出した訳だが、現代の耳で聞くと、本作には明確なBeatがある曲ばかりである。 つまり、”Beatless”という感覚は、相対的なものでしかない。そうした点で、何が本当にBeatであり、Beatlessであるのかを定めるのは、なかなかの困難性を伴う、という点を感じられるのが、本作の意義だろうか。

Posted byブクログ