炯眼に候 の商品レビュー
信長の周辺のエピソードを通じて、ひとつの信長像を描き出した作品。苛烈さ、厳しさ以外の一面も垣間見えた。
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梟雄、謀将などの悪名を欲しいままにした男の内に潜む穏やかな側面を見事に炙り出した「宇喜多の捨て嫁」失礼ながらこのクラスの武将ですらここまでら鮮やかに人間性を描き出すのだからそのペン先がスーパーヒーロー織田信長に向くとなれば小説としての破壊力は凄まじいものになるのだろう。 反面これ...
梟雄、謀将などの悪名を欲しいままにした男の内に潜む穏やかな側面を見事に炙り出した「宇喜多の捨て嫁」失礼ながらこのクラスの武将ですらここまでら鮮やかに人間性を描き出すのだからそのペン先がスーパーヒーロー織田信長に向くとなれば小説としての破壊力は凄まじいものになるのだろう。 反面これまで書き尽くされてきた人物故の難しさもあるのだが連作のなかで信長を見詰める従者たちのマニアックな人選はもとより史実ばかりに拘る先生が目くじらを立てて怒りそうな大胆な発想で見事な歴史ファンタジーに仕立てている。 謎多き戦国浪漫、答えは読む者それぞれの心の中にあって良い。
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信長にまつわるエピソードの謎に関する異説論集といった風情で、時代を追ってエピソードがまとめられていて、それが繋がっているので、読み進めるごとに、なるほどねとなる。構成と謎解きの両方楽しめる。目の付け所がさすがの木下氏の真骨頂で斬新なれど、謎解きが少し強引に感じる部分もあり、そこが...
信長にまつわるエピソードの謎に関する異説論集といった風情で、時代を追ってエピソードがまとめられていて、それが繋がっているので、読み進めるごとに、なるほどねとなる。構成と謎解きの両方楽しめる。目の付け所がさすがの木下氏の真骨頂で斬新なれど、謎解きが少し強引に感じる部分もあり、そこがちょっと物足りなさも感じるけど、十分物語として楽しめると思う。
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全7編、“信長公記”に出て来る逸話、人物に絡むそうだったかもストーリーでそれぞれの章の語り目線は違うのだけれど、全編通して信長公の物語。 以下章と覚書 水鏡/荒川新八郎と従者の甚弥(運ハ天ニ有リ死ハ定メ) 偽首/毛利新介と斯波家の夜叉丸vs服部小平太、小藤太兄弟 弾丸/杉谷善住坊...
全7編、“信長公記”に出て来る逸話、人物に絡むそうだったかもストーリーでそれぞれの章の語り目線は違うのだけれど、全編通して信長公の物語。 以下章と覚書 水鏡/荒川新八郎と従者の甚弥(運ハ天ニ有リ死ハ定メ) 偽首/毛利新介と斯波家の夜叉丸vs服部小平太、小藤太兄弟 弾丸/杉谷善住坊(とその子孫の謎 軍師/山中の猿と又助(太田牛一←信長公記著者 鉄船/九鬼嘉隆と羽柴秀吉、石田佐吉、vs毛利水軍 鉄砲/明智光秀、長篠の戦 首級/黒人奴隷の弥助、本能寺の変 着眼点と想像力がほんとにすごい、史実に残っているものからこういう物語が鮮やかに生み出される。信長がいかに慧眼を持っていたか、時代を突き抜けていた感覚と知能の持ち主であったか、こういう多方面からの切り口でひとりの人物像を浮かび上がらせるってすごいなあ、と。 ラストの黒人弥助の視点で描かれたものがいちばんよかった、信長の首級が実は、、て物語は数あれど、これの独創力すごいし(これが事実という可能性もあるかもしれないけれど、この隠し方はすごい、)、世界史日本史の資料集などで、年表横並べして日本が安土桃山の頃はムガール帝国の侵略があった頃、、みたいな比較表はみたことがあっても、こういうものを縦につなぐ糸で展開したラストが、ちょっと感嘆の声が漏れましたね。面白かった。 読み応え有、でした。
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織田信長にまつわるエピソードを、タイトルの通り「炯眼」に焦点を当てて語られる、7編からなる短編集。 よく冷徹な人物として描かれる信長だが、とことん合理的に物事を考え、理にかなった事ならどんな反対も押し切って行動してしまう人物だからこそ、そのように見られてしまうという事がよく分かる逸話揃い。 神や仏を敬いこそすれ、決して天罰、仏罰など信じず、そこには何か理由があることをつきとめ、更にそれを戦に生かすあたりは、読んでいて見事と思わず声を出しそうになったほど。 また、印象的だったのは自身の最期を迎えるシーン、明智には決してかなわないと冷静に分析しつつ、「どうしても明智に一矢報いたい」と願う家臣に、またここも冷静に一計を案じる様は、最後まで理を重んじていた信長をよく表現していると感じた。 こういった視点から信長を描く作品とても新鮮で面白かった。 この信長の合理主義的な考え方、現代なら当たり前に思える事で、生まれたのがあまりに早過ぎたんだなぁとただただ思ってしまう作品でもあった。
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桶狭間の大雨、設楽原の鉄砲、鉄甲船など、歴史上の不思議を信長の頭脳が解いていく。まさに、「信長公、炯眼に候。」 大変面白かった!
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トリッキーな仕掛けと、周りの人物を描くことで信長を浮き彫りにする書き方が、相変わらず読ませる。ネタの切り口が独特で、その新しさに人情話が相まって、ぐいぐい読ませる。 「偽首」と「首級」が好き。ラストはなんだか泣きそうになった。
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信長ものだが変わった切り口で、こういう読み方があっても面白いと思わせる作品。文章が巧みで完全にフィクションだと思わせないところが流石。
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【木下版「織田信長」が誕生!】実は信長には、誰よりも物事の本質をとらえる眼があったのではないか。信長の理知的、戦略的な面に光を当てた傑作短編集。
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