死の練習 の商品レビュー
噛み合わない真理が同じ世界に複数存在し、それらは矛盾すらしないほど噛み合わない。よって肉体が生命活動を停止するという現象と、私が消滅しない(著者は可能性を匂わすだけだけれど)という真理は、噛み合わないかたちで同時に存在しうる――というような結論を導くために、プラトンからレヴィナス...
噛み合わない真理が同じ世界に複数存在し、それらは矛盾すらしないほど噛み合わない。よって肉体が生命活動を停止するという現象と、私が消滅しない(著者は可能性を匂わすだけだけれど)という真理は、噛み合わないかたちで同時に存在しうる――というような結論を導くために、プラトンからレヴィナスに至るまでの哲学の変遷が書かれています。哲学に通じない人間を「俗人」と表現しつつも、その「俗人」に向かっていかに哲学させるかということを、置いてけぼりを覚悟の上で書いている、というような著書です。できる限り丁寧には書かれているのですが、Bを理解するためにはCを理解いなければならず、Aを理解するためにはBを理解していなければならない――というような学問の性質上、すべてを網羅するのに189ページで足りるわけはありませんから、少なくとも、たとえばヘーゲルの弁証法を触りだけでも知っていないと、この著書の論旨を理解するのは難しいでしょう。
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