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2022/12/17

約1500頁にわたる圧巻の作品でした。入獄から16年目、遂に他家雄にその時がやってくる。彼は迫る死の中にあってキリスト者としての『喜び』や『愛』を感じる。実感としてそれをもたらしてくれたのは文通相手の女子大生・恵津子だった。信仰とは頭であれこれと考えることではなく、『愛』に他なら...

約1500頁にわたる圧巻の作品でした。入獄から16年目、遂に他家雄にその時がやってくる。彼は迫る死の中にあってキリスト者としての『喜び』や『愛』を感じる。実感としてそれをもたらしてくれたのは文通相手の女子大生・恵津子だった。信仰とは頭であれこれと考えることではなく、『愛』に他ならないことを本書を読んでしみじみと感じました。また拘置所に務める人達のやり切れなさ、歯車の1つとして動かざるを得ない立場の苦しさ、死刑囚を見送る時の何とも言えない後味の悪さ……。看守や医官らの葛藤も、死刑囚の苦悩や死を見つめる静かな眼差しも、圧倒的な熱量を伴って迫ってきます。殺人犯、極悪人と言えども皆至って普通の人間なのだと改めて思いました。物語の最後の方にある「死刑は国家の現実です。もし国民が殺人を憎むのなら、死刑を見る義務がある。丁度、動物愛護主義者が一度は屠所を見る必要があるようにです。それは別に、死刑反対とか肉食反対なんて主義の問題じゃなくて、そういう現実を平気で受入れるためです」という一節がとても胸に響きました。

Posted byブクログ