あわいゆくころ の商品レビュー
「見るのが辛いと言って、流されたまちに降りてこなかったおじちゃんと、一度だけここを歩いた。草だらけになった自分の店の跡地を見て、ごめんなあと泣いていた。いま彼は空の上で、何を思っているのだろう。」(p256) 「流された土地に広がっていた、あの花畑は一体何だったのだろう?もしかし...
「見るのが辛いと言って、流されたまちに降りてこなかったおじちゃんと、一度だけここを歩いた。草だらけになった自分の店の跡地を見て、ごめんなあと泣いていた。いま彼は空の上で、何を思っているのだろう。」(p256) 「流された土地に広がっていた、あの花畑は一体何だったのだろう?もしかしたらそれは、(結果的に)その土地への死化粧だったのかもしれない。 そこへ出入りする人びとがともに手をかけて風景に色をさす、一つのお別れの作法。」(p271) 「何かをつくるやつは距離を保て」(p275) 「大きな破壊のあと、まちの人たちが壊れたものを丁寧に取り除いてやっと手に入れた、過去の痕跡と現在が視覚的に混じりあう“あわいの時間”がそこにあったのだろう。(p277) 2011.3.11東日本大震災からの東北への関わりを通して、作者の繊細な感受性は表現力を磨き爆発させている。 災害に遭った土地で状況を受容せざるおえない人々に正対し、悲しみ・喜び・暖かさそして慈しみを共に育む抒情詩。読者にも心を暖め希望に繋ぐ秀作である。
Posted by
あわいゆくころ 著作者:瀬尾夏美 発行者:昌文社 タイムライン http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698 東日本大震災で陸前高田で震災後を生きる
Posted by
- 1