東住吉冤罪事件 の商品レビュー
東住吉冤罪事件を心理学的に分析するノンフィクション。放火殺人犯とされた二人が虚偽自白に追い込まれる過程を明らかにする。心理学から冤罪を防ぐために問いかける。 東住吉冤罪事件は放火殺人事件の冤罪事件である。警察は保険金目当ての放火殺人を行ったとして青木惠子さんと内縁の夫を逮捕した...
東住吉冤罪事件を心理学的に分析するノンフィクション。放火殺人犯とされた二人が虚偽自白に追い込まれる過程を明らかにする。心理学から冤罪を防ぐために問いかける。 東住吉冤罪事件は放火殺人事件の冤罪事件である。警察は保険金目当ての放火殺人を行ったとして青木惠子さんと内縁の夫を逮捕した。警察は非情な取り調べによって自白を迫り、検察は自白を唯一の直接証拠として起訴した。二人は公判開始以来、一貫して無実を訴え続けた。2006年に最高裁で無期懲役が確定した。 2015年に再審開始が決まり、2016年に再審無罪が実現。火災は自然発火の可能性が認められ、府警などの捜査段階での自白は誘導された疑いがあるなどとされた。自白によれば5リットル以上のガソリンを撒いて、直接ライターで火をつけたが、つけた本人はほぼ無傷だったことになる。このようなことは非現実的である。このような自白を根拠に有罪判決が出てしまうことが杜撰である。 乗井弥生弁護士は警察への怒りを語る。「警察は2人の共謀による犯行というストーリーを無理矢理作ったとしか思えません。調書では、火を付けた後どうするか、弁解をどうするか、ろくに考えずに犯行を決めたとなっている。共謀と言うけど、中身がないんです。彼らを犯人と決めつけるための無理なストーリーですね。それが安っぽい小説みたいと感じたんです」(「「東住吉冤罪事件」内縁夫の無罪を勝ち取った女性弁護士の怒り――青木惠子さん55歳の世にも数奇な物語【再公開】」文春オンライン2021年5月24日) 元裁判官の木谷明さんは以下のように指摘する。「逮捕された人は、厳しい取り調べに耐え切れずに自白するのが大部分です」(「新春対談 「イチケイのカラス」著者 浅見理都さん × 元裁判官 木谷明さん」救援新聞2022年1月5日) 日本では冤罪被害者は名誉回復されるどころか、「ざまぁみろ」と言われるような扱いを受ける。冤罪被害者の言葉を聞いて、私は何も言えなかった。私には、冤罪被害者にかけるべき言葉を持ち合わせていなかったからだ。 青木さんは違法な取り調べで自白を強要されたなどとして大阪府(警察)と国(検察)に対して国家賠償請求訴訟を大阪地裁に提起した。「2016年8月10日、再審裁判で自白が排除されて。真っ白な無罪判決を勝ち取りました。なぜ、いい加減な捜査、違法な取り調べをしたのか?なぜ、再現実験までしながら、起訴ができたのか?もう、二度と私のような冤罪に巻き込まれる被害者を生み出してほしくないとの思いから、同年12月に国賠訴訟を起こして闘ってきました」(青木惠子「冤罪犠牲者の声」救援新聞2021年11月5日) 一審大阪地裁は2021年9月16日の口頭弁論で結審した。青木さんが意見陳述した。青木さんは、2021年2月に被告側証人として出廷した取調官の元刑事が「今でも犯人だと思う」とする趣旨の証言をしたことに触れ、「違法捜査をしたという自覚がないのが恐ろしい」と謝罪や検証などを行わない捜査機関の姿勢を批判。「証拠や事実に基づき違法性を明らかにして、誰もが納得いく判決を望みます」と述べた(「東住吉事件訴訟が結審 「再審無罪以上の純白な判決を」」産経新聞2021年9月16日)。 大阪地裁(本田能久裁判長)は和解協議を提案したが、国側の代理人は協議の場に欠席した(「裁判所が和解を勧告 大坂・東住吉事件青木国賠訴訟 青木さんの主張を認め」救援新聞2021年12月15日)。裁判所は2021年11月29日に和解を勧告した。今後、それぞれが和解内容を検討し、合意に至らなければ、地裁は来年3月15日に判決を出す(米田優人「再審無罪の母親の国賠訴訟、大阪地裁が和解勧告 東住吉女児焼死」朝日新聞2021年11月29日)。 「原告側弁護団によると、青木さんが冤罪(えんざい)被害者だと確認した上で、府と国が具体的な再発防止策を定め、和解金を支払うという内容が提示された」(「再審無罪めぐり和解勧告 焼死女児の母、国賠訴訟―大阪地裁」時事通信2021年11月29日) 会見で青木さんは、「判決が出てもどちらかが控訴すればさらに長引く。裁判所は、今回を最後の裁判にしたいという私の考えをくんでくれたのだと思う」と話し、府や国に対しては「和解勧告の内容を認めて応じてもらいたい」と述べた(「再審無罪の国賠訴訟で和解勧告 東住吉・小6女児死亡火災」産経新聞2021年11月29日)。 青木さんは以下のようにも語る。「裁判所がこれだけ審理をして和解を勧告したのに応じないのは裁判所を馬鹿にしている。冤罪をなくす気持ちがなく、冤罪をまだまだつくるという宣言だ」(「大阪・東住吉青木国賠訴訟 国が和解を拒否」救援新聞2022年2月5日)
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