数学と恋に落ちて 未知数に親しむ篇 の商品レビュー
※ このレビューは『数学と恋に落ちて 方程式を極める篇』と同じ内容になります。 〇 新書で「学校生活」を読む⑲ ダニカ・マッケラ―/訳:菅野仁子『数学と恋に落ちて 未知数に親しむ篇』(岩波ジュニア新書、2018) ・分 野:「学校生活」×「数学科」 ・目 次: 数学と恋...
※ このレビューは『数学と恋に落ちて 方程式を極める篇』と同じ内容になります。 〇 新書で「学校生活」を読む⑲ ダニカ・マッケラ―/訳:菅野仁子『数学と恋に落ちて 未知数に親しむ篇』(岩波ジュニア新書、2018) ・分 野:「学校生活」×「数学科」 ・目 次: 数学と恋に落ちる、ですって! 1.正と負の整数 2.結合法則と交換法則 3.正負の掛け算・割り算 4.絶対値への招待 5.平均値、中央値、最頻値 6.変数の概念に慣れる 7.変数の足し算、引き算 8.変数を含む項の積と商 9.同類項をまとめる 10.分配法則 数学の試験:サバイバル・ガイド 付録1 ・総 評 本書は、主に数学の代数分野における基本知識を解説した本です。著者(ダニカ・マッケラー)は、アメリカの大学で数学を専攻し、現在は女優・声優として活躍している人物です。 中学校の勉強において、多くの生徒を悩ませている科目の1つは「数学」でしょう。特に中学一年次に学習する分野は、その後の単元の基礎となっているため、ここで躓くと、数学の勉強はさらに苦しいものになってしまいます。本書では、そんな“数学に悩める生徒”たちに向けてダニカ先生が、数学の基礎知識を優しく解説しています。この本を読んで面白いなと思った点を、以下の3点にまとめます。 【POINT①】数学は“イメージ”が大事! 各単元の説明では、読者がイメージしやすいような「喩え(たとえ)」が多く出てきます。例えば、正と負の整数では、プラスとマイナスの概念を“ミント”の美味しさ/マズさで喩えたり、関数については、方程式f(x)=3x+2の説明を「工場〔=“f”actory〕の機械にxという値を投入すると何か別の値となって返ってくる」という形で喩えたりしています。数学が苦手な生徒を見ていると、教科書の説明が十分に理解できていないケースが多いです。教科書の記述が難しくて分からないという時は、本書のように、まずは大まかなイメージを持つ(=「自然な意味づけを自分で発見できる」)ことが重要だと思います。 【POINT②】数学では“手を動かすこと”が大事! 苦手な数学を克服するためには、まず“手を動かす(=問題を解く)”ことが必要です。本書には、各単元に練習問題がついていて、その単元の内容が理解できているかを確認することができます。ここで重要なのは、自己流ではなく、必ずダニカ先生の指示に従って問題を解くことです。著者は、数学を苦手とする生徒が陥りやすいミスなどを踏まえた上で、問題を解く際のパターンを示してくれています(例えば「引き算を“負の足し算”の形に直す」など)。最初は面倒に思うかもしれませんが、そのパターンを自分の物にできれば、数学が「分かる」だけでなく「解ける」ようになるはずです。 【POINT③】ダニカ先生の“人生指南術”を学ぼう! 本書には、ダニカ先生や彼女の知り合いから寄せられたコラムが多く掲載されており、とても面白い内容になっています。例えば「数学の試験:サバイバル・ガイド」(未知数に親しむ篇)では、数学の試験対策として「要点を一枚の紙にまとめる」という方法が紹介されています。また「ダニカの日記」(方程式を極める篇)では、仕事が多すぎる時に彼女は「リストを作る」ようにしており、1つ仕事が終わるごとにリストを1つ消すことがモチベーションにつながっていると紹介しています。こうした中高生に向けた“人生指南術”が数多く紹介されているので、勉強の休憩がてら読んでみるといいかも知れません。 本書の特徴として、とにかく“数学が苦手な生徒”を対象に、分かりやすく丁寧な解説をしていく姿勢が挙げられます。例えば練習問題でも、最初の問題は著者が説明をしながら解いてみせるなど、読者が「分かる」だけでなく、数学を「解ける」ようになるための工夫が凝らされています。 説明が丁寧な分、ややページ数が多くなってしまっている(未知数に親しむ篇:250ページ/方程式を極める篇:254ページ)ため、最初から読んでいくのではなく、自分が苦手な単元をピックアップして読んでいく方法も良いかと思います。数学に苦手意識を持っている人に、是非読んでもらいたい一冊です。 (1420字)
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