青べか物語 の商品レビュー
朝日新聞の千葉の読書案内の紹介本である。浦粕と書いてあるが実際は浦安のことである。浦安に住み込みで原稿を書いていて、その周りの人間関係を描いた小説である。青べこは、いい値で買わされたぼろ船のことであることを初めて知ったことから、この本を読んだことがないことに気が付いた。炭鉱の小説...
朝日新聞の千葉の読書案内の紹介本である。浦粕と書いてあるが実際は浦安のことである。浦安に住み込みで原稿を書いていて、その周りの人間関係を描いた小説である。青べこは、いい値で買わされたぼろ船のことであることを初めて知ったことから、この本を読んだことがないことに気が付いた。炭鉱の小説の様に、東京近郊の漁村の小説である。ディズニーランドの場所であり、高級住宅地に変貌しながらも、東日本大震災で液状化で家が傾いた浦安という土地を知るには最適な本である。時代小説かと思ったら全く違っていた。
Posted by
少し前の浦安の話 貧しい漁村の人々の生々しい話 本当にここまで?と思うほどの猥雑さと残酷さ これがリアルだったのかも 今のSNSの世界と近いのかもしれない
Posted by
青べかという船を買わされた様に、理不尽なことへどう対処するかというところは周五郎作品に共通している。短編なのだがどの話も人情味あふれている。運命に従うことで罪から逃れることが出来る、大事なことは何を為そうとしていたか、周五郎自身のことを語っているので気持ちの素直さが感じられた。
Posted by
読む順番が逆なのかもしれませんけどあしからず。 自伝めいた形式を取っているけど、確信犯的なフィクションのようにも思える。それくらい用意周到な感じがする。 最後の後日譚的の2章は必要なのかな?と思ったけれども、読み終わるとじわじわと来る。 「正しい」人間の営みが懐古的でなく綿密な構...
読む順番が逆なのかもしれませんけどあしからず。 自伝めいた形式を取っているけど、確信犯的なフィクションのようにも思える。それくらい用意周到な感じがする。 最後の後日譚的の2章は必要なのかな?と思ったけれども、読み終わるとじわじわと来る。 「正しい」人間の営みが懐古的でなく綿密な構成で描かれている。語りを発しない登場人物としての作家、この設定は非常に効いているかと思われます。
Posted by
父親に勧められて普段手に取らないジャンルを。思った以上に面白い。出だしは古い言葉の読みにくさもあるが、中盤から浦粕の人々の情緒や町並みや景色がなんだかちょっと胸に沁み入って来て、一遍一遍とても大切にしたくなる気持ちの変化には我ながら驚いた。これが山本周五郎の力か。
Posted by
浦安にある船宿吉野家付近を散策中に、この本の存在を知りました。ショートストーリー仕立てになっており読み易く、昭和初期の日本の庶民生活を垣間見れたような気がします。
Posted by
40代に入って山本周五郎を縁があって再読、改めて「青べか物語」は最高傑作なのではと思いました。素晴らしい。痛くて、泣けて、笑えて、しみじみ。 # 若い頃には、「くさい」「お涙ちょうだい貧乏物語だろ」「ワンパターンの人情モノ」などなどと思っていたジャンルのものが、歳歳年々全く...
40代に入って山本周五郎を縁があって再読、改めて「青べか物語」は最高傑作なのではと思いました。素晴らしい。痛くて、泣けて、笑えて、しみじみ。 # 若い頃には、「くさい」「お涙ちょうだい貧乏物語だろ」「ワンパターンの人情モノ」などなどと思っていたジャンルのものが、歳歳年々全く見え方が変わり泣けちゃうようになりました(全部ぢゃありません。そういう類いのものにも、当然出来の良い悪い、好みの合う合わないがありますから)。 これはどうしてだろう、と。経年変化とも言えますが、その変化の中身はなんなんだろうかな、と。 よく「自分の人生の限界?が見えてきて、ヒトの弱さを知ったから」みたいなことが言われます。それもそうかも知れません。ただ、どうも言葉が浮ついているというか、キレイゴトな気もします。 恥ずかしいかな、自分の若い頃を振り返ると、例えば「貧しさ」とか、知りませんでした。それなりに恵まれてたんで。今でも「知ってる」なんて言えません。ただ偶然の産物なんですが、若い学生時分には出会うはずもなかったような地域や職業の人と多少ふれ合うことができて、色んな意味で「ああ、そうか」と思わされました。 「ああ、そうか。色んなことを、多くのことを、自分は全然知らなかったし、知らないんだ(そして他の人も。ひとりが本当に知ることができる世界はとても小さいんだ)」 と、いうことを思い知りました。若い頃も理屈では解っていたんですが、それをナマな手触りで知った。山が高いのは皆知っていますが、下から見て「高い」というのと、山に登って見下ろして「高い」と感じるのとは、同じ「高い」でも、違うものでした。 事ほど左様に(?)改めて山本周五郎に舌を巻いています。 # 山本周五郎さんは1903年生まれ(1967没)。ほぼ東京の育ちで完全な庶民階級、13歳で「山本周五郎商店」という質屋に住み込みで奉公に入ります。 (珍しいことです。後世名が残る文学者は殆どが金持ち階級、せめて中産階級の出ですから) 小説家になりたくて23歳くらいで文芸誌に載るようになったようですが、どうやら35歳くらいまでは売れていなかったよう。作風が安定して押しも押されぬ作家になったのは40代に入ってから。 宮仕えも転々としたようですし、相当にご苦労されたようですが、ほぼ一貫して「東京の人」でした。ただ26歳前後くらいの頃に、浦安に1~2年間くらいか住んだようです。1928~9年頃。昭和一桁の時代。 その頃の体験を元に書かれたと言われるのが「青べか物語」。初出1960年。つまり、30年以上前の思い出を書いた。30年の間に、日本は戦争をして負けて、焼け跡から経済成長しようとしていました。 # 浦粕(つまり浦安)という土地を舞台に、ふらふらと暮らしている「私」と、土地の人たちの交流が淡い筆致で描かれる連作短編みたいなもので、ものによっては凄く短い、スケッチみたいな話もあります。貧しさや時代の辛さ、狭い地域社会で暮らす悲哀、果たされなかった想い、残酷な成り行き、そして滑稽さ、たくましさ、諸行無常感。などなど。老人の船乗りが語る、結ばれなかった若かりし日の恋の話など、忘れられません。 ため息が出るような一冊。ラスト章、歳月を経て「東京の作家」になっている「私」が浦粕を訪れるときの違和感。肌触り。不安。罪悪感と愛着。こういうことを、これほど平易に描ける、作家としての凄みです。 # ちなみに1962年に東宝で映画になっています。監督が川島雄三なので大傑作です。主演が森繁久弥でこれまた絶品です。画面に映るものは現代劇にしているので原作と肌触りは違いますし、川島調の喜劇面が強調されていますが、小説の味わいも十分含んでいて、流石、川島雄三。なので、この映画を見てから読む方がお勧めかもです。
Posted by
- 1