珠玉 の商品レビュー
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自分の身内に優れている人、美しい人がいると、その人が美醜の基準になってしまい、どうしても自分と比べてしまうのだろう。そして「この人はこういう人だ」というレッテルが貼られると、そのレッテルはちょっとやそっとのことでは剥がせなくなる。主人公の真砂歩は稀代の歌姫を祖母に持ち、その祖母との差にコンプレックスを抱えている。優しい祖母としてのリズ。孤独な歌姫としてのリズ。当時週刊誌に好き勝手書かれているリズ。彼女の様々な側面は物語を通して孫の歩や、彼女の胸元を彩っていた黒蝶真珠のキシ(ツンツンしてて好き)によって語られ、作り上げられていく。 物語の中では「本物」と「偽物」という言葉がたびたび登場する。キシは自分が本物であり、カリンが偽物だと言う。元モデルのジョージも自分を歩と比べ、彼女を本物と呼ぶ。けれど結局は、自分が本物だと思えば本物であるし、偽物だと思えば偽物なのだ。なんでもない、プラスチックのおもちゃですらそれが自分の強い味方だと思えば、それは自分にとっての本物なのだ。 2018年の読み納めがこの一冊でよかった。
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何かが欠けているけれど、人より何かが長けている、そんな人たちの、少しだけ不器用な生き方。 自分に自信がないけれど、自分の才能に対する矜持は捨てられない。そんなセンシティブな二人を見守る二つの「真珠」。ファンタジーなんだけどファンタジーじゃない気持ちで読める、そんなところも彩瀬小説の魅力なのかも。 あまりにも存在の大きな人が身内にいたら、そりゃ気おくれもするし変に意識もする。だからそういう大きな壁を乗り越えるために、自分を俯瞰する「何かの目」が必要になるんだろう。 天然の黒真珠の秘密と、まがい物パールの真実。二つの「真珠」キシとカリンの運命と歩とジョージの運命のリンクに一つの奇跡を感じる。
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