短編アンソロジー 患者の事情 の商品レビュー
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①彼女の冷蔵庫 血の繋がっていない娘が骨折して入院したと留守番電話に伝言が入る。 正直なところ面倒くさいが、翌朝1番の飛行機で病院に向かい、久しぶりに自分の義理の娘、未矢と対面する。 ずいぶんと痩せてあか抜けていたが、彼女は骨粗鬆症による骨折だった。 私は荷物を取りに彼女が1人で暮らすアパートへ向かった。 アパートの外見は立派なマンションだったが、中は生活感のない殺伐とした狭いワンルームであった。冷蔵庫にはジュースや冷凍食品などが少し入っていただけて、ろくな食事をとっていないことが明らかだった。 「ぱっとみると、彼女は都会に暮らす25歳の美しい女だ。しかし、それは彼女の暮らす部屋のようだ。 外見はきれいで人目を引くが、一番奥の冷蔵庫に大きな空気を抱えている。」 仕事は解雇され、付き合っていた男にも振られた彼女があまりにも憐れだった。 本当の母親を呼んだ方がいいと提案するも、本当の母親から会うことも拒否されているという事実を知る。心から愛情を注いでくれる人が必要なのに、夫ですら仕事を理由に会わないのだった。 ここで、私と夫(略奪婚)の回想に入る。 当時の私は、今の未矢と同じだった。体をスリムに保ち、月に1度は美容院で髪を整え、若さが引き立つような服を買ってきた。そして、私は妻の座を手に入れたのだった。 翌日、屋上で未矢と話す。今日の未矢は私の質問にすらすらと答える。まるですっかり老成してしまった人間のようではないか。 ふいに「(本当の)お母さんは醜いから捨てられたのかな」と彼女は言った。 醜かったり、弱かったり、役に立たないものは葬り去られる運命にある。それが淘汰と言うものだ。彼女は決して淘汰されまいと決心したに違いない。ストッキングの中の脚を手入れすること、役立たずの烙印を押されないために新聞や雑誌に目を通すこと、脂肪を蓄えないこと、同性にも異性にも魅力的に映るように振る舞うこと。私もやってきたことだ。生半可なことではなかった。生き残るための戦いだ。 しかし私は本当に勝者だろうか。私の中の冷蔵庫にもろくなものが入っていなかったのだった。 空の冷蔵庫に、新鮮な食べ物を詰め込もう。
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2000年以前に書かれた「患者」にまつわる短編を14篇集めたアンソロジー。ということで、医療ものとしては情報がちょっと古臭いのは否めない。 元々アンソロジーが好きではなく、お勧めされて読んでもよかった試しがないので、まああまり期待はしなかった。 文学あり、ホラーあり、SFあり...
2000年以前に書かれた「患者」にまつわる短編を14篇集めたアンソロジー。ということで、医療ものとしては情報がちょっと古臭いのは否めない。 元々アンソロジーが好きではなく、お勧めされて読んでもよかった試しがないので、まああまり期待はしなかった。 文学あり、ホラーあり、SFありと様々なテイストが楽しめるが、全てを読み終わってタイトルを見返した時、内容を思い出せる作品が少ない。 まあ、アンソロジーってこんなものよね。 数少ないお気に入りの作品は、三島由紀夫の「怪物」と、筒井康隆の「顔面崩壊」かな。
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14名の作家による病にまつわるアンソロジー コメディありホラーあり奇妙あり残酷あり、年代も系統も違う14名なのでとても楽しめた。 世にも奇妙な物語を見ている気分。
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日本の作家14名の病気、怪我、病院等にまつわる短編を集めた作品集。 簡単に病気や怪我と関係があるかと思いきや、SFのような、またホラーチックな作品もあり、一概に「病気」「病院」「薬」という範疇ではない作品も多かった。 多くの作家の作品が集められているということで、作品としての統一感はないと言っていいが、それぞれの作家の作風、文体を感じることができる一冊だ。
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印象的だったのは 『顔面崩壊』『パンツをはいたウルトラマン』『くだんのはは』『庖丁ざむらい』『シリコン』『特殊治療』『薔薇連想』 SFやホラー的なものもあり面白い。
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知らない作家さんに出会えるので、アンソロジーは割と好きなのですが、これはあまり面白くなかった。お題が「患者」なので仕方ないのかも。 (「彼女の冷蔵庫」は好き。でも、以前読んだことがある作品でした…)
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