特攻 知られざる内幕 の商品レビュー
『特攻』は、初めから計画された《命令》だった。
昭和50年代中頃に「海軍反省会」なる催しが有り、延べ400時間にも及ぶ会議録が残っている。本書はその解説本に当たる。
さて、山本七平の『空気の研究』では無いが、そもそも日本人はどうして《その場の空気》ばかり気にして流されてしまうのか?
NHK等が、お盆に成ると《目の敵...
昭和50年代中頃に「海軍反省会」なる催しが有り、延べ400時間にも及ぶ会議録が残っている。本書はその解説本に当たる。
さて、山本七平の『空気の研究』では無いが、そもそも日本人はどうして《その場の空気》ばかり気にして流されてしまうのか?
NHK等が、お盆に成ると《目の敵》の様に『旧日本軍』を悪しざまに罵る番組を垂れ流すが、《戦前》を「今とは違う、軍隊に支配された暗黒の時代」のように捉えている限り、この『空気』の問題は「この国から永遠に失くならないだろう」と、読んでいて悲しいが痛感した。
これが他人事の様にしか感じられない人は、是非本書を読んで欲しい。何故なら現代でも、「KY」だの「○○ハラ」だのと日頃言い合っている、正にその《空気》の話だからだ。
「あの場の空気でさぁ、『それは違うと思います』なんて言えないじゃん?」なんて会話をした記憶がある人は、全員《それ》に該当する。
西洋のように《自我》が明確にされ、傍目には我儘にしか見えない言動でも『自己主張』と胸を張って言える、そういう《その場の空気など気にしない》言動をとる事が、この国の今の社会で「何の躊躇いも無く」あなたには出来るだろうか?
例えば米国では、一つの会社に、ある程度の割合でそうした《厄介者とも思える極端に自己主張の強い人間》をわざと職場に配置し、「固定化した慣習や発想に異議を唱えさせ」職場内の意識の活性化を図る、と云う経営者が多いと聞く。
《とにかく和を尊び、諍いを嫌う文化》の国が、一足飛びで海外並みに『全く空気など気にしない国』に本気で変われる、と思う人以外は是非読んでいただきたい。
そして本書は《ただ旧日本軍を責めて、告発する為に書かれた本》等ではなく、そうした『日本人特有の、異端を怖がる深層心理は、どの様に形成され、どうして起きるのか』を赤裸々に考え、話し合った末の記録なのだと感じた。
現代の日本人は『(NHKが好んで描くような)旧軍が跋扈した暗黒時代』と、今の日本とは全く違うと言い切れるのか、戦前の「旧軍の人々」だけが《悪》だったと言い切れるのか?昭和初期の20年間弱だけ《悪い人達が多かった》とでも言うのか?
(右左の)思想信条に関係無く、それぞれが胸に手を当ててしっかりと考えてみる事が、今こそ肝要だと強く思わされた。
『そんな事を言ったら、(本当に)そう成っちゃうよ』等の《全く理論的で無い、言霊に支配された意識》しか持ち合わせない様な老若男女にも、是非お奨めする。
左衛門佐
本書は元帝国海軍の左官級の中堅幹部が戦後に集まり、先の大戦について反省を踏まえて振り返った「海軍反省会」をベースに、本書タイトルにあるように「特攻」について語る部分を抜粋した内容である。筆者は大和ミュージアムでお馴染み、呉市にある海事歴史資料館館長であり、様々な海戦史に関する歴史...
本書は元帝国海軍の左官級の中堅幹部が戦後に集まり、先の大戦について反省を踏まえて振り返った「海軍反省会」をベースに、本書タイトルにあるように「特攻」について語る部分を抜粋した内容である。筆者は大和ミュージアムでお馴染み、呉市にある海事歴史資料館館長であり、様々な海戦史に関する歴史書物を書いた戸高一成氏である。 元海軍関係者という事もあり、自身が関わった作戦に対して、また、当時の上司にあたる将官クラスの人々に対して、どの程度否定的な意見を述べているのか、興味を持って読んでみた。当時の作戦立案や戦争指導にあたる様な高い地位にいた人々の中には、自刃したり裁判で死刑になったり、すでに発言の機会を失ってしまった者も居る中、生き延びた人々はその責任について如何に考えているのか。中にはかなり中枢で指揮を採ったにも関わらず、死人に口なしとばかりに、居なくなった人間に責任を押し付ける様な内容の書籍を出すなど、やりたい放題の者もいる。現場におらず直接それを見たわけではなくとも、様々な書籍を読んで、ある程度客観性を持って見れる状況で、改めてそうした人間の書籍を読むと、腹立たしくなる以上に、滑稽に見えてしまう(誰とは言わないが)。 早速わくわくしながら本書を読んでみると、敢えて録音をそのままの言葉で文字にしたので、些か読みづらい箇所も多いものの、内容には怒りや悩みや悔しさや反省が感じられてリアルさが出ている。また話した方に対する反論などに臨場感が感じられて、あたかも自分がその場で聞いている様な感覚に陥る。中には戦後出版された書物からの引用が多すぎて、本人の考えなのか、戦後後天的に備わった知識を述べているのか判らない意見もある。だが、裏を返せばそれ程に自分たちが先導してきた戦争への強い想いや後悔、真実を探りたいという執念を感じ取る事ができる。 本書テーマとなっている特攻に関しては、よく知る航空機特攻よりも、震洋や回天などの特攻兵器、加えて戦死率の高い潜水艦部隊に関する会話も多く登場する。ありきたりではあるが、命令なのか自主的なものなのかについても触れている。当時を見てきた人々が、特攻兵器の開発時期や実際にその様な戦術が採られ始めた時期などから、様々な考察を重ねていく。大西滝治郎、陣中日記として戦藻録を記し、終戦の日8月15日に部下を引き連れ特攻した宇垣 纒などよく知る人物の名前も多く出てくる。果たして彼らを側で見て支えてきた人々が、どう評価し、何を語るのか。 太平洋戦争の中でアメリカが理解できなかったsuicide attack、Kamikaze attack、特攻。その背景にある時代的な考え方、日本人の置かれた状況、戦時下の教育、軍人採用など、あらゆる面から中堅幹部たちが考察を重ね議論を交わしていく。それらを聞いて、読んだ自分たちがどう考えるか。太平洋戦争に関しては様々な立場の人間が多くの書籍を出している。それらに加えて本書を読み、また新たな考え方に出会えるきっかけになるかもしれない。
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