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戦中と戦後の間 新装版 の商品レビュー

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2022/11/22

丸山真男が1936年から57年の間(戦中から戦後)如何なることを学び考え発表したか、投稿論文を主として講演や書評等々61遍の論稿を集め纏めたものである。 政治学・政治思想史・歴史学について、欧米や日本の学者の思想や論文の紹介・解説、いろいろな学術書の書評、さらには後輩や学生への学...

丸山真男が1936年から57年の間(戦中から戦後)如何なることを学び考え発表したか、投稿論文を主として講演や書評等々61遍の論稿を集め纏めたものである。 政治学・政治思想史・歴史学について、欧米や日本の学者の思想や論文の紹介・解説、いろいろな学術書の書評、さらには後輩や学生への学問に対するアドバイス等々、彼の思想や主張はもとより、学び・研究すること対する姿勢やその意味を如何なく教えてくれる。政治学・政治思想史さらに社会科学・歴史学等のエッセンスから、それらについて読むべき古典まで手解きしている。M・ウエーバーの「価値判断の諸問題」や「資本主義の精神」について、この本は「主食の中の主食で、よく咀嚼すれば全文悉く栄養分になります」と言う。 太平洋戦争から敗戦そして戦後の占領期、政治思想史の学者として、自身の出征や復職・戦後の肺結核による入院生活などの環境下、ブレずに淡々と思考し研究を継続する姿には驚嘆である。内容やテーマは当時の事象や軋轢も扱ってはいるが、その問題意識や論理は一貫して本質的で、極めて冷静である。学問に向かう姿勢と情熱がひしひしと伝わってくる。思想は時代環境を超える、基本がしっかりした芯のある深い研究や思考は今でもまったく古びない。丸山真男とはそんな思想家であったのだと今更ながらに痛感する。 従来、彼の代表的な著名論文はどれも難しくなかなか親しめず、突き放されるような冷たさすら感じていた。それは自分がそれを解るレベルに届いていなかっただけだ。それぞれの大作に昇華する前の思考のパーツを見せて貰った気がする。この論稿集を読み通して、初めて彼の豊かさ・深さそして真摯で圧倒的な学者の迫力を感じさせられた。

Posted byブクログ