天国の一歩前 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
突然に祖母妙子の介護に直面することになった、女優志望の未来が、日本の超高齢化社会と介護制度の壁にぶつかりながら、記憶の底にあった祖母からの愛情の深さを思い出し献身的に介護に向き合っていく。 小説というよりは、漫画として読んだ印象。元々が脚本畑出身の筆者の経歴からすれば、話言葉の多い文章、そしてセリフ間の描写のライトさは致し方なしか。 娘に内緒で、妙子に金の無心を続けながらギャンブルやブランド品にのめりこんでいた両親。女優として売れなければ身体を売る仕事を紹介するマネージャー。悪態をつき取っ組み合いのケンカをしながらも、最後には友情が芽生える同プロダクションの若手ライバル。どの設定も脚本の世界ならドラマとして成立するのかもしれない。しかし、介護というテーマに向き合うなら、スピード感ある展開よりも、当事者の苦しみそのものに寄り添って真摯に丁寧に描いてほしい。ライトなものに仕上げるにしても、姿勢は見せてほしい。天国という言葉に含みを持たせてはいるが(それが唯一介護と結びつく点なのだが)、このプロットなら必ずしも介護を軸にする必要はなかったのではないだろうか。介護制度に内在する一つひとつの壁は絶望的なまでに高いもののはずだ。 特に気になったのが、主人公が女優として覚醒する瞬間。そこに祖母への虐待の演技をもっていくなど、いかがなものか。当事者なら共感できるとでも言いたいのか。読んで誰が救われると言うのだろう。 人の希望や命、そして絶望までも軽々しく消費の対象にすべきではない。
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