ブルーバード、ブルーバード の商品レビュー
テキサス州のハイウェイ沿いの田舎町で、ふたつの死体があいついで発見された。都会から訪れていた黒人男性弁護士と、地元の白人女性の遺体だ。停職処分中の黒人テキサス・レンジャー、ダレンは、FBIに所属する友人から、事件の周辺を探ってほしいと頼まれて現地に赴くが―。愛と憎悪、正義の在り方...
テキサス州のハイウェイ沿いの田舎町で、ふたつの死体があいついで発見された。都会から訪れていた黒人男性弁護士と、地元の白人女性の遺体だ。停職処分中の黒人テキサス・レンジャー、ダレンは、FBIに所属する友人から、事件の周辺を探ってほしいと頼まれて現地に赴くが―。愛と憎悪、正義の在り方を卓越した力量で描き切り、現代アメリカの暗部をえぐる傑作ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞、英国推理作家協会賞スティール・ダガー賞、アンソニー賞最優秀長篇賞の三冠受賞作! 静かな筆致だが、物語の力強さを感じさせる。収穫でした。
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主人公の黒人レンジャーを揶揄するように「夜の大走査線(In the heat of the night)」の名が本文中に使われる。同作が映画化されてから半世紀以上経つとゆうのに人種間の分断は相変らず社会に暗い影を落としている。なぜ同じ悲劇が繰り返されるのか、本作はアメリカの病巣を...
主人公の黒人レンジャーを揶揄するように「夜の大走査線(In the heat of the night)」の名が本文中に使われる。同作が映画化されてから半世紀以上経つとゆうのに人種間の分断は相変らず社会に暗い影を落としている。なぜ同じ悲劇が繰り返されるのか、本作はアメリカの病巣を描く凡百のノンフィクションより強くその問題の深さを訴える。
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「ジョーがまずギターを取り出した。沢山の人々の--ジョーの、次いでマイケルの、そして今やランディとダレンの--運命を変えたギブソン・レスポール」 伝説のギターマン、ジョー・スウィート。彼のギターをシカゴから追いけかけてきたマイケル・ライトの遺体がバイユーで発見された。ついで白...
「ジョーがまずギターを取り出した。沢山の人々の--ジョーの、次いでマイケルの、そして今やランディとダレンの--運命を変えたギブソン・レスポール」 伝説のギターマン、ジョー・スウィート。彼のギターをシカゴから追いけかけてきたマイケル・ライトの遺体がバイユーで発見された。ついで白人女性の死体が同じバイユーの少し下流で。 東テキサス、シェルビー郡。人口178人の小さな田舎町。法律家になる道を妻や叔父に強く促されながらも、テキサス・レンジャーとして生きているダレン・マシューズを主人公に、人種間偏見と暴力が容認されるアメリカ南部の田舎町に起こる葛藤をいくつも重ねたように描いて、世の複雑さと人間と人間が向き合い、対立し、また憎み、愛する姿を、これでもかとばかりに描いてみせるその筆力に脱帽したくなるような一冊である。 自らの人種差別と性差別に無頓着なトランプだったら顔をしかめそうな黒人女性作家アッティカ・ロックの、デビュー後4作目にしてアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞・英国推理作家協会賞スティールダガー賞・アソニー賞長編賞と英米の文学賞三冠を達成した優秀作。 しかし日本人読者が好んで手に取るようなミステリー色は強くない。偏見によるヘイトクライムに包まれた町では、はっきりと右と左に陣営が分かれるからだ。この小説の舞台は小さな田舎町。道路が一本。道路沿いには二軒の店がある。片側は白人男性が集まる酒場で、もう一方は黒人女性ジェニーヴァの経営する食堂だ。白人の中には、ABTのメンバーもいる。KKKをさらにラディカルにしたような暴力的なほどの秘密結社アーリアン・ブラザーフッド・オブ・テキサス。この存在は本作で初めて知った。 黒人のテキサス・レンジャーであるダレンのトラックの運転台には血まみれのキツネの死体が投げ込まれるし、ジェニーヴァの店は銃撃の威嚇を受ける。小さな町で死体が二つ、さらに暴力、ここに迷い込んでプロ・デビューを予定していたのにヒューストンにまで到達できなかったギターマン・ジョーの伝説。 そして物語のかしこに鳴り渡るブルースの数々。本書のタイトルは、ジョン・リー・フッカーの曲『ブルーバード』から取ったもの。どろっと濃い南部の熱気の流れる町、別居中の妻と転職とに悩むダレンが目にするアメリカの真実がここに込められている。どの人物像も半端じゃなく描かれており、深い。シリーズ化されるとしたらその前段は十分に語られたと思う。期待したい。 ちなみにアッティカ・ロックには、2009年にデビュー作として邦訳もされている『黒き水のうねり』という作品もあり。ヒューストンのわけありの黒人弁護士が主人公だそうだ。ううむ、これも読まねばなるまいな。
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アメリカ南部が舞台で、根深い黒人差別問題が全面に押し出しされるという、題材としては個人的にとても苦手な分野なのですが、三冠受賞作品なので読まないという選択肢はない。 結果、読んでよかった。正義とは?と考えさせられる作品が最近は多い気がするが、捻りが効いてなかなかなもの。 しかし、南部は濃い!
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アメリカの人種差別が描かれているけれどそれだけではなく愛とか憎しみ、家族、住む場所とさまざまなことが重なり起きた事件。絶えることなく繰り返されてきた黒人に対する差別。そこから生まれる憎しみ、怒りの連鎖。そして殺人。人種問題だけではなくて政治、力、財産、土地とたくさんのものが絡んでくる。こういうものだからと諦めたり正そうとしたり。正しいこととは何かと考え向き合い続ける男の物語でもある。
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これは良かった!作家さんはテキサス州ヒューストン出身の黒人女性なのね。さもありなん。ヘイトクライム横行する中での黒人レンジャーの捜査ってのが独特の緊張感を生み出してグイグイ読ませる。ラストが文学っぽい含みがあって、引きずる読後感。気に入りました。「黒き水のうねり」も積んでたハズ。...
これは良かった!作家さんはテキサス州ヒューストン出身の黒人女性なのね。さもありなん。ヘイトクライム横行する中での黒人レンジャーの捜査ってのが独特の緊張感を生み出してグイグイ読ませる。ラストが文学っぽい含みがあって、引きずる読後感。気に入りました。「黒き水のうねり」も積んでたハズ。読んでみようかな。
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店頭で見掛けた時に、何処かで聞いたことがある名前だと思ったら、『黒き水のうねり』の著者だった……ということで購入。 デビュー作でちょっと気になった欠点はほぼ無くなっていたが、全体の緩急のつけ方はけっこう独特の癖がある。映画やテレビ出身の作家は、全体の尺を本能的に考えている傾向があ...
店頭で見掛けた時に、何処かで聞いたことがある名前だと思ったら、『黒き水のうねり』の著者だった……ということで購入。 デビュー作でちょっと気になった欠点はほぼ無くなっていたが、全体の緩急のつけ方はけっこう独特の癖がある。映画やテレビ出身の作家は、全体の尺を本能的に考えている傾向がある……と、個人的には思っているのだが、この人に関してはそういう感じが皆無に近い。ユニークな個性だと思うので、消えてしまわないことを祈る。 巻末の解説によると、本書は4作目に当たっていて、2作目と3作目が未邦訳。こちらも邦訳されないかな〜。
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