林忠彦 昭和を駆け抜ける の商品レビュー
去年の年末にEテレの日曜美術館で「“決闘写真”を撮った男」という題で生誕100周年の林忠彦を取り上げていました。ルパンのカウンターで椅子に足を置く太宰治の、あの有名な写真を撮った人として知ってはいましたが、どんな写真家かはあまり知りませんでした。なるほど“決闘”を標榜するだけあっ...
去年の年末にEテレの日曜美術館で「“決闘写真”を撮った男」という題で生誕100周年の林忠彦を取り上げていました。ルパンのカウンターで椅子に足を置く太宰治の、あの有名な写真を撮った人として知ってはいましたが、どんな写真家かはあまり知りませんでした。なるほど“決闘”を標榜するだけあって、撮られる側と撮る側の“抜き身”の勝負のような気配の漂う写真の数々をもっと見たくなって、本書を開きました。剣豪との立会いのように、カメラの向こうの人物の大物感は半端ないです。それは、昭和という時代が大物を要請したからなのだろう、と思います。が、この写真集を開いて、林忠彦という写真家が一枚の写真に濃厚な物語を込める作家だったから、とも感じました。終戦後の生命力を切り取る一連のシリーズや、晩年の長崎や東海道をテーマにした歴史のイメージ化に挑戦した作品は、この写真家が何を大切にしているのかが、強く発信されているような気がします。
Posted by
- 1