遊郭へ の商品レビュー
木村聡『消えた赤線放浪記 その色町の今は…』 を読んで他の本も読んでみたくて 本書を手に取った。 著者が女性というのが一番の特徴だろう。 視点が柔らかい。 例えば東京墨田区の「鳩の街」。 「淡いピンクとグリーンのタイルが市松状に 貼られたお宅は特に目を引いた。 このタイルの色合い...
木村聡『消えた赤線放浪記 その色町の今は…』 を読んで他の本も読んでみたくて 本書を手に取った。 著者が女性というのが一番の特徴だろう。 視点が柔らかい。 例えば東京墨田区の「鳩の街」。 「淡いピンクとグリーンのタイルが市松状に 貼られたお宅は特に目を引いた。 このタイルの色合い、赤線跡ではたびたび 目にする王道の組み合わせ」とあり その後「やぱりダントツにかわいい」 と続く(P10)。 さらには「五条楽園」の 「タイル遣いと窓のデザインが 特に印象的だったお茶屋さん」(P21)では 「ふたつの円が重なり合ったようなデザインの 窓、それ囲む鮮やかなブルーのタイル」 そして「お洒落だ」となる。 たしかにタイルの造作は印象深い。 奈良県生駒市の「宝山寺新地」では 「もし男性に生まれていたら、一度は 『精進落し』に来てみたかった」(P36) とまで言及し、ちょっと複雑な気分になる。 溝口健二の映画『赤線地帯』の登場人物の ファッションの記述は女性的なものを感じる。 淫靡な遊郭と澄んだ女性の視線に不思議な ハーモニーを感じた。
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