三島由紀夫ふたつの謎 の商品レビュー
社会学者の大澤真幸さんによる三島由紀夫論。 ふたつのなぞは、1970年11月25日の割腹自殺と同日に書かれた「豊穣の海」の最後のシーンのこと。 あれほど頭の良い人がどうしてあんな愚かな死に方をしたのだろう?そもそもどうして天皇陛下万歳になってしまったのだろうというのはわたしに...
社会学者の大澤真幸さんによる三島由紀夫論。 ふたつのなぞは、1970年11月25日の割腹自殺と同日に書かれた「豊穣の海」の最後のシーンのこと。 あれほど頭の良い人がどうしてあんな愚かな死に方をしたのだろう?そもそもどうして天皇陛下万歳になってしまったのだろうというのはわたしにとっても大きな謎なので、読んでみた。 大澤さんは、割腹自殺の愚かさという視点から三島作品を読むのではなく、高いレベルの三島作品の内在的な論理から割腹自殺を説明しようとする。 構造主義、記号論的な概念を使いながら、多くの三島作品を丁寧に読み解いていくことを通じて、三島がなぜボディビルディングをして体を鍛え始めて、天皇崇拝的に言動を行い、最後に自衛隊に押し入り、クーデターを呼びかけ、不発に終わると割腹自殺を行うにいたるかを説明してくれる。 この説明は、納得度が高いものだと思った。 一方、「豊穣の海」のエンディングについては、わたしは実は、それほど違和感を感じてなくて、この壮大な物語を終わらせるには、こうとしかならなかったんじゃないかと思ったので、そもそも謎とは思っていなかったので、面白さはまあまあのところかな? 著者は、「豊穣の海」のエンディングは、4作を通じて語られた輪廻転生の物語が最後に唐突に全否定されて、後味のわるいものになっているという。 たしかにそこまでの物語が否定されるのだけど、全ては心次第という唯識論がでてきて、「無」というか、一種の解脱に向かう道が生じているように思えたので、わたしはそんなに後味がわるい感じはしなかったわけです。 まあ、最後のエンディングが虚無なのか、唯識論的な解脱なのかは、わからないけど、小説としては、最後に輪廻転生を証明するイデアがでてきて大団円になるより、いいエンディングじゃないかと思ったわけです。 あと、「天人五衰」の最後のシーンは、「春の雪」の最後で主人公の恋人が出家して、会えなくなるシーンの反復でもあって、そこは、多分、源氏物語が「夢浮橋」のエンディングで薫が出家した浮舟にあえないことを踏まえているはず。 そして、「源氏物語」の最後も突如終わってしまうわけだから、「天人五衰」と「豊饒の海」全体がなんだかよくわからないまま終わってしまうのも、「源氏物語」へのオマージュではないかと思っている。 と著者の問題設定にはあまり乗れないわけだけど、著者の丁寧なテクスト分析は素晴らしい。とくに、「豊穣の海」と最初の作品「花ざかりの森」の類似性は面白かった。
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最後の長編『豊饒の海』のラストは、なぜこうなったのか。 全編読み終わった時に、衝撃を受けました。 このラストの謎を、市ヶ谷駐屯地での自身の最後と結び付けて考えます。 三島由紀夫は市ヶ谷駐屯地に向かう前に、編集者へ『豊饒の海』の最後の原稿を渡すように準備を整えていました。 このふた...
最後の長編『豊饒の海』のラストは、なぜこうなったのか。 全編読み終わった時に、衝撃を受けました。 このラストの謎を、市ヶ谷駐屯地での自身の最後と結び付けて考えます。 三島由紀夫は市ヶ谷駐屯地に向かう前に、編集者へ『豊饒の海』の最後の原稿を渡すように準備を整えていました。 このふたつの謎には何らかの繋がりがあると考えるべきなのだと著者は考え、論を進めていきます。 日本を代表する文学者三島由紀夫の全作品からも、この謎を読み解いていきます。
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市ヶ谷自衛隊駐屯地での割腹自殺、そして『豊饒の海』のラスト、その謎を解明すべく喜び勇んで読んで参りました。 何と申しましょうか、レベルが高いと言うのか、哲学的な説明が多過ぎて私にはさっぱり分かりませんでした。本当にありがとうございます。 本当の事は本人しか分かりません。いくら分析...
市ヶ谷自衛隊駐屯地での割腹自殺、そして『豊饒の海』のラスト、その謎を解明すべく喜び勇んで読んで参りました。 何と申しましょうか、レベルが高いと言うのか、哲学的な説明が多過ぎて私にはさっぱり分かりませんでした。本当にありがとうございます。 本当の事は本人しか分かりません。いくら分析しても無駄でしょう、と言うと身も蓋もありませんが、ただでさえ難書だった豊饒の海、特に『暁の寺』ですかね。もうそれが頭割れるくらい難しいのですよ。 つーか、それ以上にこの本が難しいじゃねーか!もっとレベル下げて解説してくれ、3行でまとめてくれ、ホンマは書いてる本人も途中から何を書いているのか分かってないんじゃないのか?アハハハハー って、最後まで読んでいても結論が哲学、哲学はやっぱり分かりません。哲学者さん考え過ぎやで。もっも楽に行きましょうや。 兎に角『仮面の告白』『金閣寺』『豊饒の海』は面白いから読んでおいた方が人生において少しプラスになるんじゃないかと思います。 三島由紀夫作品、面白いです。
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めちゃくちゃ面白かった。 三島の割腹自殺は、最大の謎として、文学界と日本現代史に大きなインパクトを残している。 それを単に政治的な意図だけではなく、あくまで三島文学から哲学的に、その謎解きを丁寧に論理的に編み上げており、大澤真幸の理論には一部の隙もない。隙が無さすぎて、その真実性...
めちゃくちゃ面白かった。 三島の割腹自殺は、最大の謎として、文学界と日本現代史に大きなインパクトを残している。 それを単に政治的な意図だけではなく、あくまで三島文学から哲学的に、その謎解きを丁寧に論理的に編み上げており、大澤真幸の理論には一部の隙もない。隙が無さすぎて、その真実性をかえって疑いたくなるくらいの完璧さである。それが、ある意味面白い。
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三島由紀夫を読み切ってないと購入しない、三島由紀夫の二つの謎に迫る本。 読んでもやはり「三島由紀夫」という海は大きい。
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その疑問2つ、まさに同じく不思議だった。完全に納得したわけではないが、読み解いていく、という醍醐味を味わえた。
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1970/11/25に結びついた二つの謎 仮面の無意識 時代錯誤の決起 鉄の肉体 「吃り」の告白 猫を斬ってもなお残るもの 美の現れ ニヒリズム研究 白鳥に化す天皇 不毛の海 真の“豊穣の海”へ 著者:大澤真幸(1958-、松本市、社会学)
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三島由紀夫の自殺、「豊饒の海」の結末の謎を解きほぐす。 抜粋: 「一の内的不可能性 」は 、 「一 (存在 )」でもなければ 、 「 0 (虚無 ) 」でもない 。…三島由紀夫の出発点に一の内的不可能性があり、豊饒の海を見たのだろう> 「永遠回帰、すなわち、虚無の世界が...
三島由紀夫の自殺、「豊饒の海」の結末の謎を解きほぐす。 抜粋: 「一の内的不可能性 」は 、 「一 (存在 )」でもなければ 、 「 0 (虚無 ) 」でもない 。…三島由紀夫の出発点に一の内的不可能性があり、豊饒の海を見たのだろう> 「永遠回帰、すなわち、虚無の世界が永遠に繰り返す。だからこそ生きるに値すると肯定できる」のは超人なんでしたっけ(ニーチェ)…三島由紀夫は超人ではなかったのだろう。そこで彼はイデアの肯定行為として自傷した、は了解するとして、政治的行為でそれを果たす必然性は、依然未解決では?
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48年前の今日(11/25)だった。三島は割腹自殺をした。自殺の仕方がどうこうと書かれているが、確か「豊饒の海」第2巻「奔馬」で驚くほどリアルに腹を切る様子が書かれていた。自衛隊市谷駐屯地バルコニーでの演説を聞いた。だれも聞いてやしない。やじ・怒号ばかりが聞こえる。あれを聴く人間...
48年前の今日(11/25)だった。三島は割腹自殺をした。自殺の仕方がどうこうと書かれているが、確か「豊饒の海」第2巻「奔馬」で驚くほどリアルに腹を切る様子が書かれていた。自衛隊市谷駐屯地バルコニーでの演説を聞いた。だれも聞いてやしない。やじ・怒号ばかりが聞こえる。あれを聴く人間が一人でもいれば結果は違っていたのか。いや、結局はなすべき行動は決まっていたのだろう。だからこそ、11/25に「天人五衰」の筆を置いたことになるのだろう。本書のこと、序盤ワクワクしながら読んだ。知らない事実が次々と現れるからだ。中盤少しついていけなくなった。回りくどく感じた。そんなこねくり回す必要があるのだろうかと思えた。そして終盤、一気に読み通した。今日が日曜日でよかった。「覗き」についての記述が最後の最後に残されていた。これは意図的であるのだろう。が、結局のところ謎ははっきりしない。三島はなぜ死ななければならなかったのか。「豊饒の海」の最後はなぜああなったのか。しかし私は思う。もっと単純に。聡子は自分の中で清顕との記憶を抹殺したのだと。きっと無意識のうちに。それではだめなんだろうか。「夏子の冒険」を読まないと。「羊をめぐる冒険」も、また読み返さないと。
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